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2010/03/07

こまつ座「シャンハイムーン」@紀伊国屋サザンシアター

Shanghaimoon3月6日は紀伊国屋サザンシアターにて、こまつ座#89公演「シャンハイムーン」を観劇。
井上作品には珍しい海外を舞台にした芝居で、十数年ぶりの再演とか。


作  井上ひさし
演出 丹野郁弓
<キ ャ ス ト> 
村井国夫/魯迅
有森也実/第二夫人・許広平
小嶋尚樹/内山完造
増子倭文江/妻・内山みき
梨本謙次郎/魯迅の主治医・須藤五百三
土屋良太/歯科医・奥田愛三

この作品を書いた動機を、井上ひさしはおよそ次のように。
主人公の魯迅は、1927年にはノーベル賞選考委員会から文学賞を打診され断るのだが、それほど世界的にも注目されていた作家だった。
同時に魯迅は「抗日運動」を主張し論陣をはったため、国民党政府から弾圧され(当時「抗日」は中国政府の方針に反していた)、地下に潜る生活を送らざるを得なかった。
その魯迅をかくまったのが、上海に書店を開いていた内山完造(内山書店の創業者)ら日本人だった。
主治医は日本人医師だったし、デスマスクをとったのは日本人の歯科医だった。
彼の臨終に立ち会ったのは、妻と弟以外は全て日本人だった。
帝国日本を心底憎みながら、しかし日本人を心から愛した魯迅。
彼を尊敬し、援助を続けた日本人たち。
そうした、ちょっと不思議な関係を描いたのが本作品だ。

今もって、日本人は、中国人は、といった枠にはめた言い方がなされるが、魯迅やその周辺にいた日本人たちは、そうしたステレオタイプに見方をしていなかった。
そう作者は主張する。

私見だが、この「シャンハイムーン」は、井上作品の中ではあまり上位の仕上がりとは言えない。
一つに、登場人物があまりにも理想化され、類型化され過ぎているように思える。真っ直ぐ過ぎる気がするのだ。
分かり易くて、見終わってからの後口も良いのだが、作品としてはリアリティと深みに欠けるように思えた。
これは飽くまで、こまつ座が上演している作品全体の中での相対比較をいっているのであって、作品自体(ちなみに谷崎潤一郎賞を受賞している)が劣っているわけではない。

6名の出演者は揃って芸達者で、ディスカッションドラマを思わせるような長セリフにもめげず、最後まで良質の舞台を保っていた。
主演の村井国夫は、いかにも中国の文人を思わせる風格で、ちょっと抜けていてユーモラスな人物像を巧みに演じていた。この人は、先ず声が良い。
内山完造を演じた小嶋尚樹は正にハマリ役。
ナマの有森也実を24年ぶりに見たが、すっかり大人の演技者に成長していた。

公演は4月19日まで全国各地で。

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