「岸壁の母」は菊池章子でしょう
昨日、歌手の二葉百合子が現役引退を発表したが、その度に「岸壁の母」を歌う映像が繰り返し流されている。
「岸壁の母」は菊池章子でしょう。
ソ連軍の捕虜となってシベリアに抑留されていた人たちが、引き揚げ船にのって日本へ帰ってくるようになった昭和25年から6年間、舞鶴港の岸壁に立ち続けて子息の帰りをずっと待ちわびていた母の姿を歌った「岸壁の母」は、昭和29年に菊池章子がレコーディングしてミリオンセラーとなる空前の大ヒット曲だ。
菊池章子は昭和22年に、戦後生きてゆくためには身を売らざるを得なかった夜の女を歌った「星の流れに」も大ヒットさせている。
共に「戦後」を直接的なテーマにしたリアルタイムのヒット曲ということになる。
「岸壁の母」のレコーディングの際に、菊池章子は途中で何度も泣き出したというエピソードが残されているが、歌唱では極力その感情を抑制しているかに見える。
菊池章子の歌う「岸壁の母」には、息子の帰還を待つ母親の精神的な高さ、強靭さが感じられる。
それが当時の日本人の共感を得たものと思われる。
それに対して、昭和47年に二葉百合子がカバーした「岸壁の母」は、安っぽいお涙頂戴の歌に仕立ててしまった。
オリジナルがもっていた楽曲の品性などどこへやら、ただただ聴き手に「泣き」を押し付ける歌唱法だ。
「岸壁の母」=二葉百合子のような取り上げかたは、苦々しく思えて仕方がない。
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そうです.「岸壁の母」はまさに菊池章子です.永年、カバーした二葉百合子をテレビで見るたび菊池のの透明感に満ちた声と歌唱力の「岸壁」と、所詮浪曲師の二葉のそれは明らかに別物と感じてきました.二葉に対抗してか後年、菊池の台詞入りが発表されていますがこれは蛇足でしたね.
いずれにしても本ページを開いて我が意を得た思いです.
投稿: イマイトシナガ(70) | 2010/09/05 21:42
イマイトシナガ様
コメント有難うございます。
昨今の「岸壁の母」=二葉百合子、のような取り上げ方を苦々しく思い、この記事を書きました。
台詞も含めて、菊池章子の歌とは全く別物というご指摘はその通りです。
彼女の歌には、岸壁に立つ凛とした母の姿が描かれています。
そこが全然違います。
投稿: home-9(ほめ・く) | 2010/09/06 07:58