#7三田落語会・夜席(4/24)
三田にある仏教伝道センタービル8Fホールで定期的に行われている「三田落語会」、4月24日は第7回で、その夜席を観賞。
地域寄席としては未だ2年目ということだが、「本格・本寸法の落語を楽しく演じ、美しく聴く」というコンセプトが通じたのか、高い評価を得ているようだ。
会場も和気藹々としていて良い雰囲気だが、会議室のため床がフラットで、後方の席だと前の人の頭に隠れて高座がよく見えないという欠点がある。
それにしても朝の8時から会場つくりを始めているそうで、関係者のご苦労には頭が下がる。
<番 組>
前座・古今亭折輔「小咄」
春風亭一朝「片棒」
古今亭志ん輔「大工調べ」
~仲入り~
古今亭志ん輔「愛宕山」
春風亭一朝「薮入り」
「一朝・志ん輔二人会」という趣向だが、昭和44年に志ん朝と柳朝の二人が中心となって伝説的な「二朝会」という落語会を始めるのだが、今回の二人はその直弟子ということになる。
先ず二人がじっくりと時間をかけて2席ずつ演じるという企画が嬉しい。
近ごろ流行の、大ホールを借りて人気者二人を並べ、一人1席でお茶を濁すというような金儲け本位の落語会とは大違いだ。やっぱり、落語を愛する人が企画する落語会でなくてはダメだ。
一朝「片棒」、先の「二朝会」でのエピソードをマクラに。先代柳朝の霊感の話なんか、もう落語そのものだ。
このネタ、二人目の息子のアイディアをどう表現するかが演者の腕の見せ所だが、一朝は得意の祭り囃子の口真似で盛り上げていた。
志ん輔「大工調べ」、師匠・志ん朝の芸風をいちばん忠実に継承している噺家で、それだけにどうしても志ん朝と比較されてしまう。
この「大工調べ」については、棟梁の胸のすくような啖呵が鮮やかで、大家、与太郎、奉行の演じ分けもしっかり出来ていた。
ノーカット・フルバージョンだったのも嬉しい。
志ん輔「愛宕山」、先ずは大ネタを二つ並べた意気込みを買いたい。
こちらも志ん朝の演出を忠実になぞった(唄は違うが)もので、熱演だった。
このネタのカンドコロは、旦那と幇間との会話にある。
幇間がタメ口をきくので、ついつい対等の関係にように受け取られかねないのだが、二人の位置関係は歴然としている。
この関係をどう表現するかがポイントなのだ。
師匠に比べると、志ん輔の描き方は未だ未だという感じを受けてしまう。
一朝「薮入り」、2席目でようやくトレードマークの「一朝けんめい」が出る。
父と子の深い情愛がシミジミ感じられた、上出来の「薮入り」だった。
芸風が地味なせいか大衆的な人気に欠けるが、落語ファンの間で評価が高いのが良く分かる。
演者と観客が一体となった、とても気分の良い会だった。
次回は6月26日。
« 「アンジェラ・ヒューイット」ピアノ演奏会@東京オペラシティ | トップページ | 追悼「柳家紫朝」 »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- 「落語みすゞ亭」の開催(2024.08.23)
- 柳亭こみち「女性落語家増加作戦」(2024.08.18)
- 『百年目』の補足、番頭の金遣いについて(2024.08.05)
- 落語『百年目』、残された疑問(2024.08.04)
- 柳家さん喬が落語協会会長に(2024.08.02)
>芸風が地味なせいか大衆的な人気に欠けるが、落語ファンの間で評価が高い
ご指摘のタイプの落語家に出会えることも大きな喜びだと思っております。一朝師匠といえば、暮れに「二番煎じ」を聴きましたが、人物描写のほどがよく、冬の寒さが伝わってくるようでした。
投稿: 福 | 2010/04/27 08:11
福さま
仰る通りで、程の良さが一朝の特長だと思います。
その分インパクトが弱く感じられ、地味な印象を与えるのでしょう。
寄席にはなくてはならぬ噺家の位置に来ています。
投稿: home-9(ほめく) | 2010/04/27 11:34