#98朝日名人会
前夜の季節はずれの雪がウソのように晴れ渡った4月17日、第98回朝日名人会に出向く。
座席が最前列、舞台に向かって上手端だったので、下手から高座に上がってくる噺家の姿がよく見えた。
ユックリ登場する人、急ぎ足で出てくる人、顔を上げている人、俯いたままで上がってくる人、それぞれ違っていてなかなか面白かった。
前座・古今亭志ん坊「小咄」
後から登場するひな太郎の前座名が「しん坊」だった。偶然なのか主催者の計らいなのか。
二ツ目が近そうだ。
・三笑亭可龍「締め込み」
以前のウケ狙いが影を潜めて、落ち着いた高座になっていた。
泥棒のマヌケぶりを表現するには、もう少しゆっくりセリフを喋ったほうが良い。
この5月に真打昇進となるが、芸協期待の新人だ。
・桂ひな太郎「湯屋番」
かつて志ん朝門下だったせいか、風貌に似て端正な芸風だ。反面、地味な印象で損をしている。
最後のオチはカットされていたが、珍しくフルバージョンに近い「湯屋番」だった。
・五街道雲助「文違い」
こうした廓噺は軽妙さが必要で、雲助の重厚な語り口で全体がやや重くなってしまった。
あい変らず人物描写は鮮やかだが、もう少し軽さとリズム感が欲しかったように思う。
~仲入り~
・柳家三三「三人無筆」
こういう軽い噺を軽く演じ、観客を沸かせるというのは大変な技術だ。それが出来る三三は大したもの。
それとこの人の高座の色気って、どこで身につけたんだろう。
よほど女性修行を積んできたのかしらん、ウラヤマシイ~!
・柳家さん喬「おせつ徳三郎」
この噺、前半の「花見小僧」(近ごろはあまり演らなくなってきた)と後半の「刀屋」とを、分けて演じられることが多い。
通しでの口演が少ないのは、時間が長くなることもあるだろうが、前半が滑稽噺、後半は人情噺となるので、演者に相当な力量が求められるせいだろう。
そういう意味では、さん喬にピッタリの演目だといえる。
おせつ、徳三郎、大旦那、番頭、貞吉、婆や、刀屋の主、頭(かしら)など多彩な人物を見事に演じ分けていたのは、さすがだ。とりわけ、刀屋の主の造形がクッキリとしている。
それと、この人ウブで一途な娘を演じさせると実に上手い。
このネタ、現役ではさん喬を超える噺家はいないだろう。
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