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2010/05/16

充実の高座が続いた「#99朝日名人会」

人気と実力を兼ね備えた顔ぶれをそろえた第99回朝日名人会は、5月15日有楽町朝日ホールで。
補助席も出る一杯の入り。
前座・柳家花いち『一目上がり』
・三遊亭きん歌『ぞろぞろ』
今秋の真打昇進が決まっているようで、三遊亭鬼丸を襲名するとのこと。そういわれれば横顔が“鬼の面”に似ていなくもない。
舞台度胸が良いというか、物怖じしない。
オリジナルには無い神様を登場させ、民話風の噺を滑稽噺に近づけるのに成功していた。
トップバッターとしての役割は十分果たした。

・古今亭菊之丞『お見立て』
演者と聴き手が経験を共有できていた時代と違って、いま廓噺を演ることの難しさがある。
菊之丞の演出は、喜瀬川花魁の仮病を最初から「恋煩い」とすることによって、無理なく「焦がれ死に」にもって行き、前半の運びをスッキリとさせた。
杢兵衛ダンナのうろたえ振りに笑いをこらえる喜肋を対比させ、笑いを増幅させていた。
それにしても、喜瀬川花魁ってぇのはヒドイ女だ。

・柳亭市馬『宿屋の仇討』
市馬は、自慢の喉を披露する場面以外はオリジナルに手をつけたり、余計なクスグリを入れず、クスリと笑わせる柳家の本流を貫く。
このネタの眼目は、武士と宿屋の番頭、それに魚河岸の若い衆三人連れという対照的な人物の演じ分けにあるが、さすがに上手い。
安定感が抜群の市馬には、時に不満を感じてしまうこともある。

~仲入り~
・柳家喬太郎『松竹梅』
このネタをここまで面白くできるものかと感心させられる。
いま前座噺を演らせたら、間違いなく喬太郎が第一人者だ。
数年前に聴いた、横浜にぎわい座での喬太郎独演会「前座噺集」2回シリーズは、まさに至福の時間だった。

立川志の輔『帯久』
大受けの続いたこの日のトリで、この演目は演りにくかっただろう。
マクラで朝日名人会で初めて演じられるネタだと紹介されていたが、元々は上方落語で、六代目三遊亭圓生が東京に持ち込んだとされる。

ストーリーは。
本町四丁目に呉服屋を営む和泉屋与兵衛は好人物といわれ、評判も高い。
一方、本町二丁目の帯屋久七は、人柄が悪く店も流行らず資金繰りに苦しんでいる。
困った帯屋は和泉屋へ借金を申し入れ、その度に和泉屋は快く用立てていた。
やがて百両を借りた帯屋が十二月の大晦日に返しに来たが、暮のドサクサに紛れて帯屋はその金を懐に入れて持ち帰ってしまう。
帯屋はその百両を元手にして手広く商売をひろげ繁盛するようになるが、それに対して和泉屋は不幸が続き店も傾き始め、ついには火事にあって一切の財産を失ってしまう。
それから10年、与兵衛の面倒を見続けてきた番頭の苦労に報いようと、与兵衛は開店資金を帯屋に借りに行くが、煙管で眉間を割られて末、店の外に放り出される。
すっかり気落ちした与兵衛が帯屋の裏手に回り、松の枝を目にして首を括ろうとした。
今生の最後の一服と煙草を吸う。その吸い殻が帯屋の普請場の鉋屑に転がっていき、燃え出してしまった。
帯屋の訴えで与兵衛は火付けの罪で捕われ、大岡裁きになる。
当時は火付けは死罪、さて名奉行のお裁きやいかに・・・。

筋がやや陰惨な上、笑いを取る場面も少ないので、演じ手があまりいない。
志の輔の演出は、円生のオリジナルにいくつか手を加え、陰惨な部分を和らげていた。
この噺、大ネタの割にオチが貧弱なのが欠点だったが、志の輔の考案したオチは良くできていた。
好演が続いた会の締めくくりに相応しい熱演で、場内は拍手喝さい。
ただ志の輔の喉の調子がかなり悪いのではなかろうかと、それだけが心配だった。

期待通りの充実した会となり、いっそ次回の100回記念にとっておいた方が良かったのではと思わせた。

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コメント

>三遊亭きん歌『ぞろぞろ』舞台度胸が良いというか、物怖じしない。
昨年度のNHK新人演芸大賞に入選しましたね(大賞は菊六さん)。一度近くで拝見したことがありますが、笑顔を絶やさない好感の持てる方でした。現代的な感覚も持ち合わせているので、将来が楽しみな存在です。

福さま
三遊亭きん歌はライブでは初見でしたが、なかなか面白かったですね。
センスの良さも感じられたし、ここのところ三遊派に有望な若手が少ないので、大いに期待したいと思います。

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