#373花形演芸会(6/19)
6月19日、国立演芸場の第373回花形演芸会に出向く。
翌週に花形演芸会の受賞者の公演があるせいか、この夜にW杯日本-オランダ戦があるせいか、それとも顔づけがイマイチ(そんなことはないのだが)と見られたのか、空席が目立つ。
前座・春風亭一力「寿限無」
前座になってまだ7ヶ月にしては、話がしっかりと。
・林家彦丸「湯屋番」
この人動く時の身体の線がキレイだ。
そのため、番台での若旦那の一人語りに色気があった。
・宮田陽・昇「漫才」
久々に観たが面白かった。
ギャグも練られていたし、間も良くなってきた。
ただ途中で数回だが、一瞬抜けるような間ができるのは改善の要あり。
・桂まん我「野崎詣り」
いかにも上方らしいネタで、時期もピッタリ。
お参りに向かう人々の情景が目に浮かぶようだった。
舟の上と土手の上の人同士が口げんかし合うというバカバカしさ、好きだなぁ。
・三笑亭夢花「お見立て」
杢兵衛と喜瀬川花魁の役作りは良かったが、若い衆の喜肋がどうもいけない。
間に入ってオロオロする喜助の悲哀と滑稽さが足りないので、やや冗漫な印象を受ける。
―仲入り―
・林家正雀「後家殺し」
花形では必ず一人、先輩の芸人が出ることになっているが、この位置が結構むつかしいようだ。
手を抜いては若手の手本にならないし、そうかといって熱演してしまうと若手を食うことになりかねない。
そのサジ加減に神経を使うのだと思う。
さて正雀の「後家殺し」だが、独演会に出すような大ネタをもってきた。
六代目円生が上方から移したネタで、義太夫の素養がないと出来ないため、円生亡き後に受け継ぐ人がいなかった。
そこを正雀が敢えて挑戦したということになる。
ストーリーは。
職人の常吉、好きな義太夫が縁で、町内の伊勢屋の後家といい仲になってしまう。
女房には公認だし、小遣いまで貰えてすっかり有頂天。
ところが、その話を聞いた友達がやっかみ半分に、あの後家はもう既に他の若い男と出来ていると吹き込んだ。
疑心暗鬼にかられた常吉、出刃包丁を持って伊勢屋に押し込み、後家を刺し殺してしまう。
やがてお白州へ引き出され、打ち首と宣告される。
奉行が、いまわの際に一つだけ願いをかなえてやると言うと、常吉義太夫で「後に残りし女房子が、打ち首と聞くならば・・・・」と語りだすと、奉行思わず「よっ、後家殺し」。
筋としては大して面白くないので、義太夫の語りだけで聞かせる噺だ。
悪くはなかったが、この位置でのネタの選定には疑問を感じる。
・翁家和助「曲芸」
曲芸の若手芸人は次々と新しい技を開発して、毎回観客を楽しませてくれる。
その努力に感心する。
和助は見せ方も上手い。
・桃月庵白酒「宿屋の富」
白酒が登場してくるだけで、パッと場内が明るくなる。
枕でサッカーについて「いつ点が入るのか分からないにの90分ジッと観ている人の気が知れない」と言った後で、「ここで3時間ジッと観ているお客さんもどうなのかと・・・」と笑わせていた。
本題に入ってからも、こういう話の引き方が実に上手い。
2番富が当たると信じている若者の妄想の広がり方が聴かせどころで、この部分の描写では現役屈指といっても過言ではないだろう。
最後は時間の関係からやや端折ってしまったが、朝日名人会の時のようなチョンボもなく、全体としては良い出来だったと思う。
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