馬生一門落語会~先代十八番尽くし~
6月28日日本橋社会教育会館で開かれた「馬生一門落語会~先代十八番尽くし~」へ。
「十代目金原亭馬生-噺と酒と江戸の粋」という本の出版記念の会とあって、直弟子や孫弟子が集まって先代の十八番に挑むという趣向。
かつて寄席の殿堂というべき「人形町末広」のあった街でこうした会を開くというのも意義深い。
昭和57年に亡くなった先代のライブを観た人は少なくなったが、CDなどを通して新たなファンを獲得しているのはご存知の通り。
< 番 組 >
金原亭馬吉「鮑熨斗」
隅田川馬石「厩火事」
五街道雲助「千両蜜柑」
~仲入り~
「鼎談」雲助、馬生、朝馬に、先代の娘・池上志乃と中尾彬夫妻が加わり、先代の思い出を語る。
桃月庵白酒「親子酒」
吉原朝馬「佐野山」
金原亭馬生「笠碁」
生前はたいそう流行っていたのが亡くなると同時に忘れ去られる芸人もいれば、十代目馬生のようにむしろ死後になってますます評価が上がる人もいる。
先代については色々書きたいこともあるが、後日【思い出の落語家】シリーズでとりあげることにして、さて。
これは鼎談の中でもエクスキューズのように紹介があったが、先代の直弟子で他にも現役で活躍している人も多い。
せっかくの会だから、そうした所縁のある人に出来るだけ出演してもらった方が良かったと思う。それが出来ない事情もあったのかも知れないが。
顔ぶれからすると、当代の馬生と雲助の一門会の様相になっていた。
それと出し物が「先代十八番尽くし」というタイトルからすると、「笠碁」を別にしてそれ以外は必ずしも十八番とは言いがたいのでは。
当日の番組では、
馬石「厩火事」。馬石は端正な芸風で、このネタも名人・文楽の語りをほぼそのままなぞっていたが、なかなか面白かった。
ケレン味がなくて良い。
雲助「千両蜜柑」。マクラで先代の物真似をしたが、これが上手い。特に目が似ていた。
ネタに入って、真夏に蜜柑を求めて駆け回る番頭の姿がクッキリと描かれていて、好演。
これが出来て初めて、オチが生きる。
白酒「親子酒」がこの日の圧巻。チョコチョコと入るクスグリがいずれも爆笑モノで、このネタでこれだけ笑えるものだと感心した。
絶好調といったところ。
朝馬「佐野山」、初見だったが平凡。噺家というより、役者という雰囲気だ。
馬生「笠碁」、当代の馬生は語り口に独特のリズムとクセがある。
これを良しとする場合は心地よいのだろうが、そうでない人にとってはやや耳障りになるだろう。
根強い固定ファンがいる反面、一般の落語ファンの間で評価が高くないのは、その辺りに理由があるのでは。
池上志乃の語る父親・馬生のエピソードには興味がひかれた。
幼いころ動物園に連れていってくれるのはよいのだが、檻の前に行くと全然動かないのでとてもツマラナカッタそうだ。
動物の細かな動きをジッと観察していたとのこと。
そういう一つ一つのことが芸に生かされていたのだろう。
本牧亭の独演会では、客に配るチラシ1枚1枚に手書きで絵を描いていたという。
いかにも先代馬生らしいエピソードだと思った。
それにしても池上志乃、亡くなった父親の年令に近くなっているにも拘らず、若くて美しい。
今は実質的に女優を引退しているが、まだまだイケテル、モッタイナイ。
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