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2010/08/10

今年のベスト「柳家三三・三ヶ月連続独演会」@横浜にぎわい座

「柳家さんと00さん~柳家三三・三ヶ月連続独演会~」と題する会が横浜にぎわい座で行われた。
三三が毎回、名人文楽・志ん生・先代金馬に縁のあった各先輩をゲストに招き、その芸談を聞くという趣向のようだ。
8月9日はその1回目で、八代目桂文楽の内弟子だった柳家小満んをゲストに。
三三が小満んを尊敬しているというのは前から知っていたので、この会には行きたかったが、当初は都合がつかずにいた。
たまたま所用がなくなり、急きょ5日前に電話を入れて席が確保できた。

< 番  組 >
開口一番・柳家わさび「牛ほめ」
柳家三三「夏泥」
柳家小満ん「鰻の幇間」
~仲入り~
小満ん/三三「対談」
柳家三三「年枝の怪談」

柳家三三「夏泥」
一昨日の三三が「ゆるい三三」なら、この日の三三は「緊張の三三」。
マクラを振りながら、自らの緊張を解こうとしている様子が分かる。
師匠・小三治譲りか、一門の噺家は泥棒ネタを得意にしている。
所持金をすっかり巻き上げられるお人好しの泥棒と、したたかな長屋の男との対比を、夏の季節感を出しながら好演。

柳家小満ん「鰻の幇間」
師匠・文楽の持つ「艶」を最も継承しているのは、小満んではなかろうか。
演じた幇間に色気があり、いかにもそれらしい。
幇間が前半に思い描く期待と後半の失意との大きな落差。
考えてみるとこのネタ、けっこう残酷だ。
小満んの演出は一切の飾りもムダもなく、引き締まった高座だった。

小満ん/三三「対談」
テーマは文楽の思い出で、とてもいい雰囲気の中で話が弾む。
・学生時代の小満んが憧れの文楽の自宅を訪れると、ムリヤリ弟子にされてしまった。
・当時入門には2万円(サラリーマンの給料の約2か月分)の保証金を納めねばならず、横浜で学習塾を開いて資金をつくった。
・毎朝6時に掃除を始めて、床磨きが一番の楽しみだった。
・常に正座していなければならず、膝を崩してお上さんにビンタを食らったことがあった。
・文楽はその日の高座に掛ける前に、必ず弟子たちを前に置いてさらう。それが稽古になっていた。
・文楽の口ぐせは、「あたしが許しても、天が許しません」。
・文楽の死後、先代小さん門下に移るが、小さん一門の自由な雰囲気に驚かされた。
などなど。
話を聴きながらふと思ったのだが、小満んが文楽を継ぐのが一番自然だったのではなかろうか。
当代の文楽は余りに芸風が違いすぎる。

柳家三三「年枝の怪談」
私は初見。
このネタ、昭和30年代に彦六の八代目林家正蔵が創った新作落語だそうだ。
古典一筋と思われがちな先代正蔵だが、意外に新作も手がけていて、それも珠玉の作品が多い。
ストーリーは。
江戸で人気があった二代目春風亭柳枝、一門を引き連れて神奈川で2軒掛け持ちの興行を打つが、これが大入り。
トリに起用した弟子の年枝も評判がよく、柳枝はすっかり気を良くしていた。
その宿に深夜、年枝が訪ねてきて、宿屋で呼んだ按摩があんまり年枝の芸を非難するので言い争いとなり、誤って絞め殺してしまったと告白する。
師匠は自首を勧めるが、年枝は芸を磨くといって旅に出てしまう。
地方を巡って名を上げ、やがて招かれて金沢の寄席に出るが、ここでも大入り。
席亭から、夏場でもあるしと求められた怪談噺を高座にかけると、客席にあの時の按摩が。
宿に戻って風呂に入ると、風呂場にまた按摩が。
年枝は按摩の供養にと決心して仏門に入り、やがて新潟の別寺を任されることになった。
ある日街で柳枝一門の公演のビラを見た年枝は、なつかしさの余り師匠の宿舎を訪ねるが・・・。

緊張感が気合に変わり、長講一席、最初から最後まで間然とするところがなく、グイグイと観客を引き付けた。
三三の語りの上手さに圧倒される。
このネタ、年枝の怪談噺の場面で「真景累ヶ淵より豊志賀の死」をダイジェストで語るのだが、これもなかなか良い。
つまり一粒で二度美味しいのだ。

落語会が終わって、今日が今年のベストと思わせる会というはメッタにあるものではない。
そう思わせたこの日の三三独演会だった。

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コメント

小満ん師匠は先日の国立演芸場で「ろくろ首」を口演しました。渋い語り口の中にほんの少し入れるクスグリ(「お庭は外だよ、鬼は外」)が可笑しかった記憶があります。
 「鰻の幇間」が残酷というご意見、仰るとおりです。そういえば「転宅」もその部類に入る気がします。たしかに彼は迂闊ではあるんですが、安定の糸口を見出して期待していたのに、騙られてしまうなんて・・・でも、そのへんも落語の笑いなんでしょうね。

投稿: 福 | 2010/08/11 08:25

福様
先代文楽の十八番には、社会的に弱い立場の人間がさらに虐めにあうというストーリーが多いんです。
名人文楽にはマゾっ気があったのではと、密かに思っています。
小満んのクスリと笑わせる芸、粋ですねぇ。

投稿: home-9(ほめく) | 2010/08/11 13:57

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