【寄席は学校4】酒飲み十態
酒好きな人を上戸(じょうご)というが、転じて酒を飲み酔ったときの癖をさす。泣き上戸、笑い上戸などがそうだ。
酔っ払いの生態をあらわす表現には、昔から「製糸」に関する言葉が多い。
製糸工場で管に糸を巻きつけて回転させると「ブー、ブー」という音を出す。
ここから酔ってブーブーいう状態を「管をまく」という。
「からむ」というのも、やはり糸からきている。
酔っ払いと製糸、何も関係がなさそうだが言葉でつながっているところが面白い。
酒を飲んだときの癖を「酒癖」というが、その酒癖についていくつかの俗諺があるが、その一つに次のような言葉がある。
「一真面目、二機嫌、三眠り、四ビリ、五泣き、六管まき、七押し、八無心、九盗み、十喧嘩(いちまじめ、にきげん、さんねむり、しびり、ごなき、ろくくだまき、しちおし、はちむしん、くぬすみ、とおけんか)」。
酒好きの人なら、身に覚えがあるだろうと思う。
並び順というのもあるようで、始末の良いほうから始末に悪いほうへ順番となっているようだ。
・一真面目、飲んでも真面目というのは結構のようだが、普段は下らないことを言っている人間が飲むと妙に真面目になるというのは困りものだ。
こういう人に限って、人に説教したり教訓を垂れたがる傾向にある。
私の見立てでは、酒癖としてかなり悪い方に属する。
・二機嫌、飲むとゴキゲンが良くなる、これは大いに結構。
無口な人が雄弁になり、陰気な人が明るくなるのは大歓迎だ。
これも程度の問題で、宴席で一人で1時間以上も歌いまくり踊りまくるというのも迷惑なことだ。
・三眠り、飲むと直ぐに寝てしまう人、周りに迷惑をかけないので歓迎される。
なかには酔っ払って起きられず、宴会が終わってからタクシーで自宅まで送り届けなくてはならないとなると、これは始末に悪い。
・四ビリ、「ビリ」とは女性のことだ。
男は酒を飲むと、大概は好色になる。
気分が高揚するということもあるだろうが、抑制されていた好色が酒で抑えが利かなくなるという側面があるのだろう。
落語の世界では揃って吉原に出かけることになるし、今でも二次会というとやはりホステスのいるような店に行きたがるのは、そのためだ。
・五泣き、泣き上戸のこと。
宴席が湿っぽくなるので敬遠されるようだが、これも私見だが女性の泣き上戸っていうのは決して悪くない。
差し向かいで、身の上話をしているうちに涙をこぼされると、肩を抱きしめたくなる。
ただ願わくば40代まで。
・六管まき、飲めば愚痴のひとつも言いたくなるのが人情。
これで酒席が盛り上がることもあるのだが、一歩外れて他人にからむようになると、これは誰もが閉口する。
・七押し、いわゆる「押しの一手」の押しで、何か強引に迫ってくるという意味だろう。
普段はどちらかというと遠慮がちな人が、飲むと強引になるというのもしばしば眼にすることだ。
・八無心、酔うと金品をねだる癖、これも歓迎されない。
相手が女性の場合は、「ねだられる」中身によっては、そう悪い気がしないケースもある。でもレアーケース。
・九盗み、これは経験したことがないが、困るだろう。
第一、犯罪だから。
・十喧嘩、酒乱というやつ。
私が入社した当時は、特に工場などでは気が荒い人が多く、宴会で喧嘩になったら自宅から日本刀を持ち出して振り回したという社員もいた。
今の企業では想像もつかない。
喧嘩するエネルギーも無くなったとしたら、それはそれで問題だけど。
これも落語のマクラに使われるが「酒は飲むべし、飲まるべからず」、何事も適当に。
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