「検察審査会」の不透明さ
“JANJAN Blog”で山崎康彦氏が検察審査会のあり方を批判し、「東京第五検察審会」の「小沢幹事長起訴相当」議決は検察審査会法違反で「無効」とし、検察審査会の廃止をも主張している。
私はこれとは正反対で、検察審査会は必要であり、小沢一郎に対する起訴相当の議決は当然だと考える。
しかし山崎氏が提起している検察審査会の問題点はその通りだと思うし、公正中立という観点から大いに問題があるようだ。
山崎氏が指摘している問題点は、二つある。
第一は、今回検察が捜査して小沢一郎前幹事長を不起訴としたことを不服として、「在特会」代表の桜井誠氏が個人として審査申し立てを行い「東京検察審査会」が正式に受理したのだが、これが適法かどうかという点だ。
審査申し立てについては検察審査会法第2条2項及び30条に規定されている。
第二条
2 検察審査会は、告訴若しくは告発をした者、請求を待つて受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被つた者(犯罪により害を被つた者が死亡した場合においては、その配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹)の申立てがあるときは、前項第一号の審査を行わなければならない。
第三十条 第二条第二項に掲げる者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官の属する検察庁の所在地を管轄する検察審査会にその処分の当否の審査の申立てをすることができる。ただし、裁判所法第十六条第四号 に規定する事件並びに私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 の規定に違反する罪に係る事件については、この限りでない。
ここまでで、桜井誠氏は第二条2項のいずれにも該当せず、申し立て人としての資格がない。
では第三十条の但し書きについて、見てみよう。
「裁判所法第十六条第四号」とは以下の通りである。
第十六条 高等裁判所は、左の事項について裁判権を有する。
四 刑法第七十七条乃至第七十九条の罪に係る訴訟の第一審
四号でいう刑法は以下の通りで、内乱に関する罪を規定したものだ。
第七十七条 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
1.首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
2.謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は3年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は1年以上10年以下の禁錮に処する。
3.付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、3年以下の禁錮に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第3号に規定する者については、この限りでない。
第七十八条 内乱の予備又は陰謀をした者は、1年以上10年以下の禁錮に処する。
第七十九条 兵器、資金若しくは食糧を供給し、又はその他の行為により、前2条の罪を幇助した者は、7年以下の禁錮に処する。
条文で見る限りでは、但し書きに示されている例外規定のいずれにも該当しないと考えられ、やはり桜井氏の申し立ての権利は無いと思われる。
これについて桜井誠氏は自らのブログで、「本来であれば告訴・告発人でなければ審査の申し立てはできないのです が、小沢一郎は国会議員という立場であり、なおかつ被疑事実も「政治資金規 正法違反」という公金に関わる問題であるため全国民が被害者という立場で申し立てを行うことができることを確認しました。」と記しているとのこと。
そうであれば、東京検察審査会はどのような法的根拠に基き、そうした判断をしたのかを明らかにする必要がある。
そして今後も全国民が被害者であるような事件については、国民の誰もが「申し立て」の権利を有するのかどうか、明確にすべきだろう。
問題の第二は、検察審査会の構成についてだ。
山崎康彦氏によれば、「検察審査会」は全国に165会あり、地方裁判所に置かれている。
事務局は裁判所出向の検察事務官が担当しており、審査補助弁護士の選定は事務局が非公開で決定している。
審査員の第一次選定は有権者をくじ引きで選ぶが、第二次選定は警察提供の個人情報と面接で事務局が非公開で11人を決定しているとのことだ。
警察から提供される個人情報ということになると、犯歴だけではあるまい。
思想信条から信教、市民運動歴など幅広い情報が提供されていると推定される。
そうしたスクリーニングを経て選定されるとなると、その気になれば相当に恣意的なメンバー構成が可能になる。
もし上記が事実であるとすれば、検察審査会の「公正中立」に疑義が持たれても仕方あるまい。
今後ますます検察審査会の役割は大きくなるし、時には決定が政権を左右することにもなる。
そのためには、法の解釈や審査会の構成について、一寸たりとも疑念を招くようなことがあってはならない。
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