五街道雲助一門会(12/23)@浅草見番
「なんでも観音様の裏っ手に、たいそうご利益のあるお稲荷様があると伺いまして」とは「明烏」の中の時次郎のセリフだが、その観音様の裏っ手にある浅草見番で開かれた「五街道雲助一門会~蜃気楼龍玉 真打昇進襲名披露~」に出向く。
一昔前なら終演後には、せっかくここまで来たんだからチョイと顔を見に行くかなどとアチラ方面に立ち寄ったんだろうが、今時はそうはいかない。
花の吉原も今じゃ「石鹸遊園地」、味気ないやね。
普段は芸者の稽古場だろう大広間の会場は一杯の入り、常連が多いらしく前後左右に挨拶と会話の花が咲く。
「あれ、今日は00さんの姿が見えませんね」なんて、いい雰囲気じゃありませんか。
この一門会のほうは昼の部だが、夜の部の「雲助 蔵出し」も前売り完売とのこと、ファンは有り難い。
< 番 組 >
前座・春風亭ぽっぽ「やかん」
隅田川馬石「堀の内」
桃月庵白酒「徳ちゃん」
五街道雲助「鹿政談」
~仲入り~
二女囃子「俗曲」
蜃気楼龍玉「子は鎹」
雲助の弟子は白酒、馬石そして龍玉の3人で、還暦を迎えた師匠はこれから先は弟子は取らないと宣言しているので、この会は名実ともに「一門会」というわけだ。
しかも全員が真打で、全員が別の亭号を持つという変わった一門でもある。
それにしても蜃気楼龍玉とは、随分とまたオドロオドロシイ名前を掘り起こしたものだ。
前座のぽっぽ「やかん」、後で白酒が三十路手前と年齢を明かして客席から「エ、エー」という反応があったが、確かに若い。甲斐甲斐しく立ち働く姿に惹かれるファンもいるようだ。
前半は息子と嫁とを言い間違え詰まった場面もあったが、後半は持ち直し、講釈部分は滑らかに。
馬石「堀の内」、冒頭で今日は上がっていると言っていたが、大事な場面で言い間違えるなどやや落ち着きを欠いた高座だった。
それと若手なんだから、もっと明るく元気が欲しい。
白酒「徳ちゃん」、マクラで今日は真打披露口上は無しとのことで、誰かのようにいつまでも披露公演を続けて小遣い稼ぎをするようなことはしないで、場内の笑いを誘う。
「徳ちゃん」は、その徳ちゃんが一言もしゃべらない珍しいネタで、元は柳派の新作だそうだ。
ストーリーは、
昔は吉原で、お引けを過ぎると割引サービスがあったので、それを狙う客向けに午後10時から12時にかけての寄席があった。
終演後、出演していた噺家も少ないワリを持って、二人で遊びに行く。
格安の店を見つけるが、看板も出ていない暗い店。
並んでいる女郎たちも色が黒く、ホントに女かいと訊くと、疑うなら区役所で調べてくれという按配。
ようやく店に上がったものの一人は2畳半(6畳を渋板で分けたから)の部屋、もう一人はトタン塀で囲った空中庭園のような離れへ案内される。
布団は犬猫病院の払下げ、毛布は陸軍病院の払下げ。
しかも来た女は岩のような体型で、髪はザンバラ、まっ黒な顔、足は十三文甲高、焼き芋をかじりながら部屋に入ってきて・・・。
白酒はマクラからオチまで一気呵成、客席は終始笑いの渦に包まれていた。
雲助「鹿政談」、龍玉が手抜きする時に高座にかけるネタなので先取りしてと、断って。
雲助自身は2-3年に1度しか高座に掛けないと言っていたが、緊張感の中にも笑いを散りばめていて、やはりさすがである。
二女囃子「俗曲」、結構でした。
普段は下座のお二人だそうだが、どうしてどうして、立派に高座がつとまりそうだ。
トリは新真打の龍玉「子は鎹」、あまり良い出来だとは思わなかった。
先ずは高座姿が陰気くさい印象を受け、損をしている。
それと会話の間(ま)が、芝居の間になってしまっている。
同じセリフの間でも、芝居と落語では違う。
これを芝居の間でやられると間延びした感じになってしまい、聴き手が感情移入できずダレる。
語り口は決して悪くないので、この点の工夫が求められると思う。
全体としては、温かいファンの空気に包まれた気持ちの良い一門会となっていた。
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