港ふれあい寄席~実力派競演~(2011/2/19)
2月19日、高輪区民センターで行われた「港ふれあい寄席~実力派競演~」へ。
プログラムには書かれていなかったが、出演者の話によると2回目のようだ。定期開催かどうかは不明。
< 番組 >
開口一番・瀧川鯉ちゃ「やかん」
瀧川鯉昇「二番煎じ」
~仲入り~
三増れ紋「曲独楽」
入船亭扇遊「明烏」
先ず「実力派」以外の二人について。
開口一番の鯉ちゃ「やかん」、随分ヒネタ前座だと思ったら、37歳で入門とか。
こういう歳になってから落語家を志したのには、それなりの思い入れがあったのだろう。
年齢のせいか落ち着いた高座で、実力は二ツ目並みと見た。
れ紋「曲独楽」、これがいけない。
こうした落語会のゲストの色物芸人というのは、自分の芸を見せるのは当然だが、会の雰囲気を壊さぬよう分をわきまえて演じることが肝要だ。
この点を理解できないような芸人はゲストには不向き。
この人の高座の欠点は三つ。
・ムダにウルサイ
・拍手の強要
・舞台に上げた客をイジリ過ぎ
これらを芸だとか、お客へのサービスだとかと思っていたら大間違い。
さて扇遊と鯉昇だが、初めて気がついたのだが出身が同じ静岡県で、生まれも昭和28年で一緒。
所属する協会は異なるが、古典一筋という点も共通だ。
ただ芸風はというと、扇遊がオリジナルの型を忠実に継承するタイプであるのに対し、方や鯉昇は独自のクスグリを多用しながら全体を少し戯画化してゆくタイプである。
この違いが、この日の高座にも如実に表れていた。
鯉昇「二番煎じ」。
このネタは、
・前半の、旦那衆が寒さの中を不慣れな夜回りする場面
・後半の、番小屋に戻っての密かに飲食する場面
に分けられる。
鯉昇の演出は、前半では旦那衆に「火の用心」の喉を競わせ、後半では宴席を盛り上げて爆笑を誘うものだった。
見回りの役人をかなりワルに描いていたのも特長。
面白さはグーンと増していたが、寒中の夜回りや番小屋の雰囲気を損ねていたようにも思われ、評価が分かれるところだ。
扇遊「明烏」。
おそらく古今亭志ん朝の高座をベースにしたものと思われ、オリジナルに忠実な演出に見える。
扇遊は、登場人物の大店の旦那である日向屋半兵衛と、その息子時次郎、源兵衛と太助という町内のワル二人、茶屋の女将、それぞれの人物像をより鮮明に描くことにより、一味違った「明烏」に仕立てていた。
例えば、帰りたいと言い出した時次郎を止める時の太助の凄み、「札付きの悪」としての面目躍如だ。
その太助、翌朝の甘納豆を食う場面でもいい味を出していた。
浦里と一夜を過ごした時次郎のとろけるような表情も印象的。
近ごろでは出色の「明烏」であった。
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