#12三田落語会「志ん輔・圓太郎」(2011/2/26昼)
2月26日、仏教伝道センタービル8Fで行われた#12三田落語会昼席へ、この日は「志ん輔・圓太郎二人会」という趣向。
この会は開場10分前から次回落語会チケット購入の整理券を配るのだが、その時点で既に50名ほどの行列ができていた。
< 番組 >
前座・古今亭半輔「のめる」
古今亭志ん輔「高田馬場」
橘家圓太郎「試し酒」
~仲入り~
橘家圓太郎「締め込み」
古今亭志ん輔「佐々木政談」
実力と人気が一致しないというのはどの世界でもあることで、落語家の中にもどう見ても実力が足りないにも拘わらず常にチケットが完売という人気者がいれば、実力は十分なのに人気の面では今ひとつという人がいる。
前者でいえば・・・って、これは想像にお任せしよう。
橘家圓太郎は後者に属するといって良いだろう。
ネタの数は多いし、噺も上手い。高座にも適度の華がある。いつ聴いても裏切られるようなことが無い。
しかし、いわゆる人気落語家の範疇に入っていない。
三遊亭金時なぞもこのタイプだ。
共通点は、芸風がやや地味だということだろうか。
その圓太郎の1席目「試し酒」、この演目は先代小さんが得意とし志ん朝の名演があるが、圓太郎の高座はそれらを彷彿とするような良い出来だった。
ポイントは二つ。
一つは、1升入りの大杯の空け方で、早すぎず遅すぎず、旨そうに最後の一滴まで飲み干す動作だ。
1升目と最後の5升目は一気に空けるのだが、当然飲み方には差があるのであって、そうした細かな点がきちんと表現されていた。
もう一つは、当初の頃は田舎者丸出しだった久蔵が酔うにつれ、次第に都々逸を唄ったり酒の由来の講釈をしたり、洗練された一面を見せるようになる。酔うことによって性格が変わるという所を表現するわけだ。
熱演に対し、度々客席から大きな拍手がわいていた。
2席目「締め込み」、このネタで省略できない箇所が二つある。
一つは、泥棒が揚げ板をはずして縁の下にもぐる場面で近くに糠みそ桶があり、それが手入れが悪く臭いがひどいというシーン。
この家の女房は器量よしで人当たりも良いのだが、いわゆる「糠みそくさい」タイプの女ではないわけだ。
だから帰宅した亭主が風呂敷包みをみて、直ちに女房の浮気だと決めつけるには理由があった。
もう一つは、夫婦喧嘩の時に女房が二人の馴れ初めを語る場面で、「ウンか出刃か、ウン出刃か」と迫られたと言うシーン。
惚れ合って夫婦になったという二人の痴話喧嘩という設定だ。
だから泥棒が仲裁に入った際に、あれほど感謝され、酒まで振舞われる。
圓太郎の演出は泥棒のトボケタ味がよく出ており、珍しく最後のオチまで演じて、近ごろでは出色の「締め込み」であった。
志ん輔の1席目「高田馬場」、昔の縁日の思い出をマクラに、冒頭のガマの油売りの口上で場内をわかす。
敵討ちから翌日の高田馬場の飲み屋のシーンまでテンポ良く語り、楽しませてくれた。
2席目「佐々木政談」、こちらは感心しなかった。
時間を延ばそうとしたのかマクラがやたら長く、しかも取り留めのない内容で聴いていてダレテきた。
そのモタツキぶりがネタにも移って、始めの子ども達の裁きの場面で、同じセリフを3回繰り返すなど集中力を欠いていた。
後半のお白州の場面になると持ち直したが、奉行に威厳が足りないように思えた。
やはり客席から失笑が漏れるようなマクラの失敗が、最後まで響いたような気がする。
今回の二人会は、圓太郎の判定勝ち。
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