桂吉弥独演会2011 vol.2(2011/3/27昼)
3月27日国立演芸場で行われた「桂吉弥独演会2011 vol.2」へ。
当日配られた「ごあいさつ」の中に、会を開くかどうか迷ったとあり、「こんな時こそ落語」というファンの声に後押しされてと書かれていた。
昼夜公演で昼の部は前売り完売だった。
< 番組 >
開口一番・桂雀五郎「みかん屋」
桂まん我「桜の宮」
桂吉弥「愛宕山」
~仲入り~
桂吉弥「地獄八景亡者戯」
吉弥の独演会は一門から2名2席、本人が3席という番組が多いが、今回は中入り後は大ネタの「地獄」(ネタ出し)があり2席となっている。
雀五郎「みかん屋」。初見でネタも初めて。語り口が淡々としていて、もう少しアクセントが欲しい。
まん我「桜の宮」。東京の落語ファンにもお馴染みの噺家だ。
ネタは東京落語では「花見の仇討」となる。
まん我の高座は、吉弥と同年ということもあってか本気モードで、熱演だった。
仇討をやる4人の人物がくっきりと描き分けされており、とりわけ薩摩のイモ侍二人の人物像が鮮やか。
本日の主役を食う勢いだった。
前回の桂しん吉もそうだったが、引き立て役に徹するというより、出演した以上は自分の良いところを見せようとする芸人魂を感じる。
吉弥の1席目「愛宕山」。
花粉症だそうで、やや辛そうな印象だったが、後の大ネタを含め全力投球だった。
東京落語の同じネタに比べ、こちらは京都の春の長閑な風景を描きながら、全体としてユッタリとした噺になっている。
弁当を担いで山登りする幇間が次第に息切れするシーンや、小判惜しさに傘を手に崖から降りるシーンが力強く演じられていて、良い出来だったと思う。
吉弥の2席目「地獄八景亡者戯」。
上方落語界ではこのネタを高座に掛けられるようになると一人前という、なんとなくそんな印象を受けている。
一席に75-90分要するという長講であるばかりでなく、登場人物が多彩であり、しかも独自のクスグリや芸を見せる場面が多いという難物であることは間違いない。
吉弥の演出は、米朝のオリジナルをかなり大胆にカットし、同時に閻魔の前で芸を披露するシーンでは、まん我と組んで、往年の夢路いとし喜味こいしコンビを物真似で再現させるなどの工夫で、最後まで客を飽きさせることなく、終演予定時間を大幅に超えての大サービスだった。
吉弥の高座スタイルというのはスマートな反面、コッテリとした上方落語に馴染んだ人には物足りなく感じると思われる。
実力も、例えばこの日の桂まん我の方が上かも知れない。
しかし芸人というのは実力だけでは計れない世界でもある。
本人が生来持っている魅力とか、ソフトな語り口が全国区に向いているとか、そうした要素も大きいのだろう。
人気に溺れることなく、現在のような精進を続けていけば、やがて上方落語を背負う一人になることが期待できると思う。
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