ほうれん草は食べられるのか?(上)
政府は3月19日、福島県内の原乳と茨城県内のホウレンソウ6検体から、食品衛生法の暫定基準値を超える放射性ヨウ素が検出されたと発表した。
暫定基準値は放射性物質にさらされた食品の出荷制限などを検討するためのもので、東日本大震災に伴う福島第1原発の事故を受けて政府が設定したもので、放射性ヨウ素131が原乳で1キログラムあたり300ベクレル、ホウレンソウなどの葉もの野菜で1キログラムあたり2000ベクレルとなっている。
厚労省によると、福島県川俣町の1農家で16~18日に採取された原乳からヨウ素が基準値の3~5倍にあたる1キログラムあたり932~1510ベクレルを検出した。
ホウレンソウは、茨城県高萩市、日立市、常陸太田市、大子町、東海村、ひたちなか市の各自治体の1検体ずつ計6検体から、基準値の3~7倍にあたる1キログラムあたり6100~1万5020ベクレルが検出された。
いずれも放射性セシウム137に関しては、基準を下回ったとみられる。
記者会見で枝野幸男官房長官は、今回の検出と同量の放射性物質のホウレンソウと牛乳を1年間とった場合の被ばく線量に関し、牛乳がCTスキャン1回分、ホウレンソウが5分の1程度と説明。「ただちに皆さんの健康に影響を及ぼす数値ではない。冷静な対応をお願いしたい」と呼びかけた。
また茨城県の発表によれば、19日に15地点で採取した露地野菜3品目と、20日に県が県北2地点で採取した生乳を分析した結果、ホウレンソウから790~500ベクレルの放射性セシウムが、また5700~3200ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたとしている。
この検査結果では、セシウムについても基準値の500ベクレルをわずかに上回っている。
菜の花の1種のかき菜からは2000ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたが、ネギと生乳は規制値を下回った。
茨城県は同日、農業団体に対し、ホウレンソウとかき菜の出荷自粛と自主回収を要請した。
福島第一原発の重大事故は完全に収束しておらず、今なお放射線を出し続けている。
したがって食品への影響はむしろこれから現れることになるだろうし、安全性は重大な関心事だ。
今回の検査結果についてどう評価するかだが、政府が言うようにCTスキャンと比較するというのは、かなり乱暴なやり方だ。
食べるものとレントゲン検査では、まるで次元が異なるし、こういう説明ではかえって消費者に不信感を抱かせる恐れさえある。
ネットでも安全性について様々な意見が寄せられているが、どうも原発に対する見解、すなわち反対派であるか容認派であるかによって、評価にバイアスがかかっているような印象を受けている。
ここで、いくつかおさらいを。
先ずは摂取の基準値の根拠だが、放射性物質を含む牛乳や乳製品を1日1リットル、水を1日2リットル、葉もの野菜を1日100グラムなどについて、それぞれすべてを1年間毎日飲んだり食べたりし続けた時に、発がんなど健康に害が出る放射線量を計算したものだ。
ほうれん草を1年間毎日食べる人はまずいないだろうが、水は常に口に入るものだ。
数値だけでなく、食品のアイテムによっても安全性に対する評価は異なってくるということになろう。
いずれにせよ、短期間の摂取ならば問題はなさそうだ。
次に放射性物質の中でもヨウ素131は8日たつと放射線の量が半分になるが(半減期という)、セシウム137は、放射線の量が半分になるのに30年かかり、土壌に長くとどまって農産物に影響を与える。
半減期を超えると放射線の量は急激に減るので、ヨウ素の場合は日にちを置けば安全性は高まる。
その点、セシウムは始末に悪いが、はんめん体内に入っても多くは排出されるという利点もある。
今のところ、基準値を大幅にオーバーしているのはヨウ素が多い。
放射性物質はどのようにして食品に入り込むのかだが、ヨウ素とセシウムは風に乗って運ばれ、ホウレンソウなど葉の大きいものほど付きやすい。
キャベツの場合は、外側には付くが中には入りにくい。
放射性物質は土の表層にとどまりやすく、短期的には大根などの根菜類への影響は少ないとみられている。
原乳からの検出は、乳牛が放射性物質を含んだ餌や飲み水から摂取したのではないかと推測されている。
つぎに摂取した人の年齢の影響だが、子どもは大人より放射線の影響を受けやすい。
大人では体内に入ったヨウ素の約7%が甲状腺にたまるが、子どもは約20%が甲状腺にたまってしまう。
いずれも残りは24時間以内に排出されてしまう。
子どもさんにはより注意が肝心だということであり、私ら年寄りは少しぐらい摂取しても大して影響しないということ。
どうせこの先、そう永くはないし(涙)。
(続く)
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