春風亭一之輔独演会・築地支店(2011/4/29)
GWの初日4月29日、築地ブディストホール(本願寺)で行われた「春風亭一之輔独演会・築地支店」へ。
この会場、昼間は古今亭右朝を偲ぶ落語会が行われていた。この日が右朝が亡くなって10年目の命日にあたる。ということは志ん朝が亡くなって10年になるということでもある。早いもので、もう10年か、という感慨に改めてひたる。
右朝は日大オチ研の顧問をしていた関係で、この日の一之輔を含め、多くの後輩の指導にあたってきた。健在なれば大看板と、その芸風と共に人柄が偲ばれているのはご存知のとおり。
一之輔に話は戻るが、独演会の回数とその中味でいえば、すでにトップクラスの仲間入りを果たしている。
若手の独演会では往々にしてベテランや人気者をゲストに招き、ゲストの助けを借りながら集客するケースが多いが、一之輔の独演会ではそうした大物ゲストを呼ばず自力で満員にしている。
リピーターが多いのも、会の内容が充実している証拠だろう。
TVの人気者でもなく古典一筋で芸風も地味。こうした噺家が人気が高いということは、落語ブームが本格的になってきた証拠だと思う。
< 番組 >
前座・立川こはる「真田小僧」
春風亭一之輔「五人廻し」
~仲入り~
古今亭志ん八「ニコチン」
春風亭一之輔「抜け雀」
「猛獣使い」こと・立川こはる、上手くなってきた。
立川流風のクスグリも板についてきて、このままでは「女流落語家は大成しない」という持論を改めねばならない日が来るかもしれない。
下手な落語家は、この人を前座に使わないほうが無難だろう。
古今亭志ん八は新作、以前に一之輔と二人会をやっていたという縁があるのだそうだ。
顔がいかにも噺家らしい、「むかご」みたいと紹介されていたが、その通りだった。顔で得してる、とも。
次に機会があったら古典を聴いてみたい。
一之輔の1席目の「五人廻し」、落語を聴くとき、もし自分が演じるならと想像するのだが、このネタは難しいと思う。
特に最初に登場する江戸っ子、ボヤキに後悔そして怒りの爆発、そこの切り替えを無理なく演るというのは、かなりの力量が求められる。
一之輔の高座は先ずこの部分で合格だ。吉原の故事来歴を言い立てる場面も颯爽としていて良かった。
後の侍、若旦那、田舎大尽それぞれに独自のクスグリを入れ込んで笑いを増幅させ、対照的に喜助のオロオロぶりが際立つ。
相撲取りを登場させた最後のオチも独自の工夫だが、成功したと思う。
2席目の「抜け雀」、このネタ現役で本寸法ならさん喬、戯画化したものなら喬太郎を推すのだが、この日の一之輔の出来はそれに拮抗するものだった。
人物像の演じ分けも鮮やかだったし、得に女将さんの「お光っちゃん」が光る。
クスグリも適度で抑制が効いており、終り間際に「千両」を「百両」と言い間違えたのは惜しまれるが、全体としては高水準の出来栄えだった。
もうそろそろ、一之輔をトリに起用する席亭が現れてもいいのではなかろうか。
異論も出まい。
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良い会だったようですね。
立川こはるへの評価、まったくその通りだと思います。時たま行く「かもめ亭」でも、彼女を目当てのお客さんが、私を含めて多いと思います。
一之輔の『五人廻し』は、昨年横浜にぎわい座の地下、のげシャーレでの会で聞いて驚き、二つ目で唯一マイベスト十席に入れました。
この人の力は、数々の受賞歴は関係なく、本物ですね。
右朝そして志ん朝、もう十年なんですね・・・・・・。
今日は、末廣亭で息抜きしてきました。満席でしたよ。私のように、笑いに飢えている人が多い、ということですね^^
投稿: 小言幸兵衛 | 2011/04/30 21:10
小言幸兵衛様
一時期、寄席は閑古鳥と聞いて心配していましたが、ようやく客足が戻って来たんですね。
私も明日は鈴本の予定です。
こはるの進歩、一之輔の技量には目を瞠ります。
有望な若手が次々現れるのは嬉しいことです。
投稿: home-9(ほめ・く) | 2011/04/30 23:35