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2011/04/27

国民の映画@KAAT(2011/4/26)

4月26日、横浜のKAAT(神奈川芸術劇場)ホールで行われた「国民の映画」を観劇。
少し早めに会場に着いたので、すぐ裏ってにある山下公園を久々に散策。潮風に吹かれながら「バンド」という言葉が懐かしく浮かんでくる。
これだからハマはイイねぇ。

作者の三谷幸喜はナチスを描いたこの作品について、次のように語っている。
「集団の怖さについて考えることも大事だけど、僕にはむしろ、それでも集団に流されなかった人がいたという事実が、心に迫るんです。」
「今の日本でも十分成立するような物語にしたつもりではいるんです。」
こうした作者の思いが観客に届いただろうか。

作・演出 三谷幸喜
<  キャスト  >
小日向文世/ヨゼフ・ゲッペルス 
段田安則/ハインリッヒ・ヒムラー 
白井晃 /ヘルマン・ゲーリング 
石田ゆり子/ゲッペルス夫人
シルビア・グラブ/ツァラ・レアンダー 
新妻聖子/レニ・リーフェンシュタール 
今井朋彦/エーリッヒ・ケストナー
小林隆 /フリッツ
平岳大 /グスタフ・フレーリッヒ
吉田羊 /エルザ・フェーゼンマイヤー 
小林勝也/グスタフ・グリュンドゲンス
風間杜夫/エミール・ヤニングス

あらすじは。
時は1941年秋、第二次世界大戦の真っ最中。
主人公のゲッペルスは、ナチスドイツのヒトラーの側近にして、ナチスのプロパガンダを担う宣伝大臣の要職にあった。
その彼の別荘に映画関係者を集めて、ホームパーティーが開かれた。
全ての芸術やメディアを掌握し監視するという絶大な権力者の招待とあって、ナチスにすり寄る監督や俳優らが多数集められる。
その中には権力に立ち向かい、執筆を禁じられている国民的作家もいた。
そこに招かざる客として、ヒトラー側近であるゲーリング元帥とヒムラー長官の姿も。彼らはいったい何を企んでいるのか。
ゲッペルスは招待客全員を集めて、最高のスタッフと俳優を使って、全ドイツ国民が誇りを持てるような「国民の映画」を制作したいと提案し、一同の賛成を得るが・・・。

この芝居の特長として第一にあげたいのは、12人の登場人物は一人を除く11人が実在の人物であること。
第二は、その12人が全て一同に会して舞台に登場し、それぞれが物語を持っていること。
第三は、特に欧米映画に見られるような、ナチスの幹部を特殊な人格の持ち主として描かずに、ごくフツーの人たちとして描いていること。
ゲッペルスにしても、「風と共に去りぬ」が最高だと考える映画好きの面白いオジサンだ。
夫人は大のケストナーファン。
ゲーリングは陽気なヤク中男。
ヒムラーは虫も殺せぬ男として設定されている。
これらはある程度リアリティがあって、実際にある強制収容所長はペット好きで、愛犬が雨に濡れたといって涙を流すような人物であったことが記録されている。
そうしたフツーの人たちが、あのような狂気に走ったわけで、だから余計に恐ろしいのだ。
第四は、舞台の3分の2位まではコメディタッチで進行するが、後半は一転してシリアスな展開となる。
当初はリベラルな感じを与えていたゲッペルス夫人が、終り頃のシーンでは「あの人、ユダヤ人の割にはいい人だったわよね。」と言うのだが、この一言に作者の思いが込められていると思う。
第五は、この芝居の表の主人公はゲッペルスだが、裏の主人公はその従僕・フリッツだ。
フリッツはこの舞台の狂言回しであると同時に、テーマの提出者でもある。
第六は、舞台には登場しないが、「あのお方」ヒトラーこそ、この物語に真の主人公である。

上演時間が3時間に及ぶ長編だが、間然とすることなく、笑いの中に緊張感が溢れる舞台だった。
三谷の脚本は「笑の大学」もそうだが、「ファシズムは笑顔でやってくる」を一つのテーマとしているかに見える。
今の商業演劇の世界に、こうしたテーマを持った芝居を上演する、三谷幸喜のその姿勢そのものに先ず敬意を表したい。

出演者はいずれも芸達者で、主演の小日向文世と冷酷な長官を演じた段田安則、いずれもハマリ役。
フリッツを演じた小林隆の抑制した演技が光り、そのため最終シーンでの怒りの爆発が効いている。
他に風間杜夫が軽妙な演技で沸かす。

公演は5月1日まで。

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