柳家三三・桂吉弥ふたり会(2011/5/8)
5月8日紀伊国屋サザンシアターで行われた「柳家三三・桂吉弥ふたり会」に出向く。
GW最終日となったこの日は晴天、気温も夏並みにあがり、半袖姿が目につく。
この会は二人が2席ずつ演じるが、うち1席はネタおろしの趣向。
< 番組 >
開口一番・桂鯛蔵「二人ぐせ」(「のめる」)
柳家三三「湯屋番」
○桂吉弥「質屋庫(しちやぐら)」
~中入~
桂吉弥「おごろもち盗人」(「もぐら泥」)
○柳家三三「抜け雀」
(○印は、ネタおろし)
若いうちは上手くなりたくて、一所懸命に稽古する。
ある程度実力が付き人気も出てくると、あちこち出番が増える。
やがて人気が先行し、名前と顔だけで客は喜んでくれるようになり、しだいに芸が荒れてくる。
収入が安定してくるから、努力を怠るようになる。
本人の目が覚めた頃は、すっかりファンから見放され、そのうち世間から忘れ去られる。
落語に限らずどの芸の世界にも起きることで、人気者は常に心しなくてはいけない。
現に私がそう心配している噺家も、二人三人にとどまらない。
この二人に関してはそんな心配はない、か?
吉弥の1席目「質屋庫」。
東京ではかつて圓生が得意としていたが、お馴染みない方に粗筋は。
横町の質屋の三番蔵に毎夜化け物が出るという近所のうわさ。
番頭は否定するが、主人は質草には質入れした人の恨みがこもる場合があると諭し、番頭に見届けるよう命ずる。
番頭が一人ではこわいというので、出入りの頭(かしら)を呼び、二人に蔵の見張りを命ずる。
やがて深夜になると蔵の奥でなにかぴかっと光り、羽織と帯が相撲を取る光景をみて二人とも腰を抜かす。
次に棚に載っている掛け軸がスーっと開き、中から天神様が現れて・・・。
主人が、質草へ恨みがこもる事例を語る場面は人情噺風に、頭が店から酒や漬物を無断で持ち出したことを白状する場面では一転して滑稽噺に、後半は怪談噺風にと、演者の語りの力量が試されるネタだ。
吉弥の高座は、いずれの場面もメリハリをつけてキッチリと演じ、初演としては上出来。
持ちネタとして十分通用するような仕上がりを見せた。
吉弥の2席目「おごろもち盗人」。
東京では「もぐら泥」のタイトルで時々高座に掛けられるが、粗筋は。
盗人が穴を掘ってしのび込もうとして、玄関の付近に小さな穴を掘る。
家の者がなかなか寝ないので、穴から手だけを出して様子をうかがっていると気づかれ、手を縛られてしまう。
地べたにはいつくばって動くことも出来ない泥棒は、通り掛かった人に、がま口に忍ばせてある小刀を取り出してくれるよう頼む。
その人が財布の中をのぞくと5円の金があり・・・。
面白かったし、これはやはり上方ネタだ。
こういう軽いネタも吉弥はキチンと演じ、その姿勢に好感が持てる。
三三の1席目「湯屋番」。
番台に上がった若旦那の一人キチガイぶりが見せ所となるお馴染みのネタだが、三三は軽く流しながら笑いのツボは押さえて、楽しませていた。
ただ二人会に掛けるネタとして、セレクトが適切であったかどうか。
三三の2席目「抜け雀」。
初演だが、明らかに稽古不足。
観客の反応は良かったが、私はかなり不満だった。
先ず言い間違いや言い淀みが散見され、興がそがれる。
独自のクスグリを多用して、笑わせようとする努力は買うが、こういうネタは全体の品格を失わないようにすることが肝要だ。
それと、立場の弱い主人が何か言われると泣くというギャグが使い過ぎで、少々鼻に付く。
他のネタでもやっているので、又かと思ってしまう。
これから段々に仕上げてゆくつもりかも知れないので、今後に期待したい。
新ネタの完成度の高さ、あとの1席の面白さの両方で、今回は吉弥の勝ち。
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