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2011/05/15

#7ワザオギ落語会@国立演芸場(2011/5/14)

5月14日は国立演芸場で行われた第7回ワザオギ落語会へ。
オフィス・エムズ主催なので、いつもながら丁寧なプログラムが配布されるのが嬉しい。
年に一度開かれていて、実力者が顔を揃えたこの日の会も満席。

・春風亭一之輔「徳ちゃん」
前置きで、これは大正時代の噺家の話といっていたが、調べてみると大正時代に朝寝坊志らくという落語家がいて、その本名が中村徳太郎。このネタのモデルなのだそうだ。
だからタイトルが「徳ちゃん」とは、また随分と安易な。
しかも「徳ちゃん」はこのネタの中で一度もセリフをしゃべらないと来ているんだから、変わっている。
ネタとしてはお世辞にも上品とはいえないが、近ごろ風格さえ漂わせている一之輔の手にかかると、ギリギリの所で野卑にならない。
最下層の売春宿の描写もよく出ていて、上出来だっといえる。

・三遊亭兼好「小言幸兵衛」
結論からいうと、今まで観た兼好の高座では今回がいちばん不出来。
稽古不足なのか、ニンではないのか、はたまた「徳ちゃん」が影響したのか、とにかくリズムが悪いのだ。
そうなると観客の反応も悪くなり、空気を察した演者の焦りが生まれ、ますますリズムを崩すという悪循環。
大家は麻布古川に済む家主なのだから、もっと風格が要る。
豆腐屋を9人の子持ちにしたのも、無理があった。
次回高座にかけるときは、よほど練らないといけない。

・昔昔亭桃太郎「勘定板」
2月に階段から落ちて怪我をして以来、メガネをかけることにしたそうだ。
娘さんから石原裕次郎に似ているといわれたそうで、ご満悦の態。
いくつかの小咄をマクラに、これも近ごろ珍しいネタへ。
「徳ちゃん」と下ネタでつく感もあったが、オリジナルにかなり手を入れて、爆笑モノにした手腕はさすが。
こちらは改作に成功していた。

~仲入り~
・入船亭扇辰「阿武松(おうのまつ)」
座布団に座るとき、首を小さく左右に振る姿が、師匠ソックリになってきた。
この会は初出演というのは意外。というか、入船亭として初なのだ。
扇辰は二ツ目当時から高座に品があったし、噺は上手かった。
ただ愛嬌に欠けるというか、面白さで今ひとつの感があったのだが、ここ1,2年でガラリと印象が変わった気がする。
この日のネタでも、じっくりと聴かせながら、それでいて面白い。

・柳亭市馬「首提灯」
久々にトリの市馬に出あう。
「胴斬り」がマクラだったので、2席聴けたようで得した気分だった。
さすが剣道3段の腕前だけあって、刀の斬り方がキレイだ。
それとこのネタは、頭の大きい面長の人でないと感じが出ないが、そういう意味でも市馬にピッタリだ。
ここの所、やや不満の高座が続いた市馬だが、この日の高座は十分満足のいく出来だった。
貫録の一席。

次回は来年5月になるが、今から楽しみだ。

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コメント

私もおりました。
兼好さん、今まで聴いた中で最悪のできでした。
麻布在住の大家が訛っていたのが私の中で一番のマイナスでした。

愛読者様
そうなんです、会津訛りの麻布の大家って、どう見ても変です。
せっかくのDVD収録なのに、なぜあのネタを選らんだのか、理解できないですね。

一之輔のことを書きたくて、「一之輔 徳ちゃん」でグーグル検索したら、トップで表示され、ネタの解説、たいへん参考になりました。兼好評はおっしゃる通りで、1番目と2番目で、出番が逆ではないか、すなわちどちらが真打ちなのかと思った次第です。甘い円楽一門で入門10年で真打ちになった兼好ですが、今年入門13年目でこの出来に対して、今年入門10年目の一之輔なら、もっとまともに出来るはずです。ひとつ救いがあるなら、マクラの出演者評に笑えたこと。以前のワザオギ会でも同様に秀逸な先輩評を聴けました。

言志館様
兼好の高座について厳しいことを書きましたが、この「小言幸兵衛」がとても難しい演目であることを割り引かなければいけないでしょう。この出来だけで決めつけるのは、気の毒な気がします。
何といっても極付けである圓生の名演がありますが、これに追随する噺家が見当たらない。
あの志ん朝でさえ、このネタに関しては遠く及ばなかった。
特に芝居仕立ての心中シーンは、これからも圓生を乗り越えられる人はなかなか出現しないでしょう。
一之輔に関しては才能というしかない。
志願すれば誰でも落語家になれますが、その中で才能のある人は一握りです。
これからどこまで大きくなるのか、楽しみです。

至言ふたつ。
1)これからも圓生を乗り越えられる人はなかなか出現しないでしょう。
 落語研究会の圓生DVD24枚のうち、だぶって収録されたのが、この噺と「唐茄子屋政談」でした。それほどの十八番ということで、当方はその新しい方、1977年を実際に聴き、それが脳髄の奥まで染みこんで兼好を受け付けなかったと感じ入った次第です。因みに、「唐茄子屋」の新しい方と、「小言」の古い収録の71年8月31日のちょうど8年後、最後の研究会となった「がまの油」も聴けました。常連席を徹夜で並んで買ったおかげで、生涯の宝となりました。付け加えると、山藤画伯の筆による圓生の落語切手も「小言」でした。
2)志願すれば誰でも落語家になれますが、その中で才能のある人は一握りです。これからどこまで大きくなるのか、楽しみです。
 「五人廻し」、「百川」を一之輔さんは十分に咀嚼して、圓生を乗り越えようとしていました(いずれも横浜にぎわい座)。実は、このワザオギの会の開演まで間があったので、半蔵門線「永田町」国立劇場出口前にあるコーヒーショップに入ったのですが、一之輔さんがキャスター付バックを持って当方の通路隔てた真ん前に座られ、コーヒーをすすられながら、大学ノートを広げて、ネタを熱心にさらっておられました。こうした勉強熱心が今の充実を作っていると感じいった次第です。「才能のある人は一握り」なので、鈴本も、池袋も、いつも同じ顔。 

言志館様
過分なお褒めの言葉、恐縮です。
貴コメントですが、後日エントリーに引用させて頂くたく、ご了承願います。

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