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2011/06/12

#7大手町落語会(2011/6/11)

前夜からの雨がようやく上がった6月11日午後、日経ホールで行われた「第7回大手町落語会」へ。
珍しく開演前に前座を上げたが、これは良かった。
早く着いた人には時間つぶし、遅く来た人は前座を聴かなくてすむ。

前座・柳家おじさん「子ほめ」
<  番組  >
春風亭一之輔「粗忽の釘」
桃月庵白酒「化物使い」
柳家権太楼「青菜」
~仲入り~
春風亭一朝「大工調べ(序)」

一之輔「粗忽の釘」、マクラで、自分についての紹介で「謙虚さを併せ持つ」と書かれているのを咎め、芸人が謙虚というのはどうなんだろうと言っていたが、その通り。褒め言葉になっていない。
マクラでこんな事をいう二ツ目もこわい。
この女房は亭主を大声で怒鳴るわ、亭主の失敗を眺めて楽しんでいるわと、一段と怖ろしい女として描かれている。これじゃ亭主も委縮して、ついつい失敗を重ねるというもの。
とても良く出来ていて面白かったが、夫婦が行水を使う場面の演出が過剰で、全体へのバランスを崩してる。
一之輔ほどの腕前なら、ここは飽くまで正攻法で押して欲しかった。

白酒「化物使い」、こちらもプログラムで、「素直に笑えるブラックジョーク」という表現がおかしいと指摘。この日のプログラムは恰好のマクラの材料を与えていたようだ。
「化物使い」だが、本寸法で上出来だった。
志ん朝の高座を彷彿とさせるというと褒め過ぎになるだろうか。
先ず吉田の隠居と奉公人の杢助の人物像がクッキリとしている。
杢助は愚鈍な田舎者なんかではなく、大きな人物として描かれている。
後半でノッペラボウの女が隠居から布団を敷けと言われ、身の危険を感じて逃げ出す演出もいい。
この隠居が恐らくは妻に先立たれ、一人暮らしを余儀なくされ、淋しい思いをしていたであろうことが思い起こされる。
ここ数年で聴いた「化物使い」では、白酒がベスト。

権太楼「青菜」、マクラで大震災への募金活動の経過が紹介されていた。先日の立川流落語会で志らくが、落語協会の募金活動を散々こき下ろしていたのとは対照的。
さてネタに入って、権太楼の「植木屋さん」の第一声で会場からどよめきが。ここのところ権太楼が、寄席や落語会で頻繁に「青菜」を掛けているようで、それへの反応だと思われる。
しかし、結論からいうとこの「青菜」は感心しないし、権太楼には合わないと思う。
このネタの勘所は、前半の主人と植木屋が縁側で会話する場面でいかに「涼感」が出せるかだ。
ここの主人は風流人であり、ユッタリとした風格が求められる。権太楼の描く主人にはそれが足りない。だから「涼感」に欠けてしまう。
権太楼の欠点は、描く人物像に幅がないことだ。
そういう意味で後半は権太楼の得意の世界であり、面白かったし、暑苦しさも十分表現されていた。

一朝「大工調べ」、最後に一朝が「大工調べの序でございます。」と言ったとき、一瞬会場から「エッ」という短い反応があった。
無理もない。中入り後が1席なのだから、誰しもが長講を予想していただろう。
時間の関係だったのかも知れないが、いってみれば肩すかしを食わされたような感じだった。
このネタの肝心要はいうまでもなく、棟梁の「啖呵」にある。
胸のすくような啖呵を息もつかせず一気に切れるかどうかで、全てが決まる。
一朝の啖呵は残念ながら、少々息をつかせてしまった。
志ん朝や5代目柳朝の「大工調べ」が懐かしい。

今回は、前半の若手二人が収穫だった。

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コメント

前座の扱い、権太楼の“限界”、ともに同感です。
先日職人三人ということで「青菜」「厩火事」「占い八百屋」を一編に聴きましたが、どれも似た夫婦でした。
しかし爆笑できたからそれで良しとします。
青菜の涼感は小三治がいいです。

佐平次様
権太楼の演出では、主人が少し前かがみに座り、団扇で風を送っていましたが、ここの主人はそんな格好はしない。
「〇〇でござんしてね」という言葉使いも不自然です。
主人と植木屋が同じリズムで喋ったんではいけないんです。
「奥や」の手の叩き方もおかしい。あれじゃまるで大相撲の柏手(かしわで)みたい。
次の間に奥様が控えているのだから、ポンポンと軽く打つだけで良いんです。
小三冶の「青菜」は未見ですので、一度観たいですね。

いらっしゃったんですね。白酒は、ますます大きくなっている印象ですね。今後が本当に楽しみです。一之輔のこのネタは引越し前からの内容を横浜にぎわい座で聞いていました。たしかに、クスグリに若さの行き過ぎはありますが、全体的な出来は良いですよね。権ちゃんは元気な高座が久しぶりだったので、それで良しとさせてください。ご指摘の通り前半と後半で言うなら、後半ですね。上方では枝雀のこの噺が好きなのですが、権ちゃんは結構枝雀を意識しているような気がします。一朝、通しを期待しますよね。全体的に良い会だったと思います。

私もおりましたが、権太楼師の限界は同感です。小三治師の青菜の前半の清涼感、氷を食べる場面はたまりませんよ。
末広亭下席であたれば良いのですけど。
一朝師はマクラで「細工は隆々・・・」と言っていたので、ラストまでだと思いましたが、途中で終わってしまい残念です。

小言幸兵衛様
「並み」の噺家ならこれで十分でしょうが、何せ方や大看板の権太楼、此方将来の落語界を背負うであろう一之輔なので、ついつい厳しいことを言ってしまいました。
一之輔「粗忽の釘」について言えば、もう十分面白いのに、過剰な「受け」を狙っていたような気がします。
権太楼「青菜」は、何を観客に伝えたかったのでしょうか。そこが分からない。
「笑わせてなんぼ」という上方落語と、「噺を聴かせる」東京落語とは基本的な違いがあります。
そこをはき違えないように精進して欲しいと思うのです。

愛読者様
私の個人的な趣味から言わせてもらえば、氷を頬張る場面は不要です。
第一、鯉の洗いの下に敷いた氷なぞ、生臭くて口に入れられません。試してみれば分かります。
そんな動作がなくても、主人と植木屋との会話を通して、十分涼感は伝わります。
一朝のマクラ「細工は隆々・・・」は、なんだったんでしょうね。
何かアクシデントでもあったのかと思わせるような終り方でした。

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