このサッカー少年には罪がない
小さな事件ではあるが、これは見逃すことができない。
新聞記事によれば、2004年2月、愛媛県内の公立小学校の校庭でサッカーゴールに向けてフリーキックの練習中、当時小学校5年生だった少年が蹴ったボールが門扉を越えて道路へ転がり出た。
そこへバイクに乗った87才の男性が通りかかり、ボールを避けようとして転倒し足を骨折。その後に認知症の症状が出るようになり、翌年7月に食べ物が誤って気管に入ることなどで起きる誤嚥(ごえん)性肺炎で死亡した。
このバイク事故をめぐり、ボールを蹴った少年に過失責任があるかが問われた訴訟の判決が6月27日大阪地裁であった。
田中敦裁判長は「ボールが道路に出て事故が起こる危険性を予想できた」として過失を認定。少年の両親に対し、男性の遺族ら5人へ計約1500万円を支払うよう命じた。
少年側は「ボールをゴールに向けて普通に蹴っただけで、違法性はない」と主張したが、判決は「蹴り方によっては道路に出ることを予測できた」と指摘。「少年は未成年で法的な責任への認識はなく、両親に賠償責任がある」と判断した。そのうえでバイクの転倒と死亡との因果関係について「入院などで生活が一変した」と認定。一方で、脳の持病の影響もあったとして、請求額の約5千万円に対して賠償額は約1500万円と算出したものだ。
老人が骨折し寝たきりになったり認知症を発症するケースは多く、それが原因で肺炎を引き起こし死亡することもあるので、バイク事故との因果関係は認められるだろう。
しかし、果たしてこの少年に過失責任が問えるのだろうか。
少年は小学校の校庭でサッカーのフリーキックの練習をしていたのだ。
判決で言っている「蹴り方によっては道路に出ることを予測できた」というのは、大人の目線だ。
もしそうした危険性があったのなら、先ず学校側がゴールの周辺をネットで囲うなどの安全対策を講ずるべきだったのだ。
そうした施策がなかったとしたら、学校側でさえ予測できなかったことが子どもに予測できる筈はない。
法的責任ウンヌンをいうなら、むしろ学校側の管理責任を問うべきだった。
家族が支払うとはいえ1500万円の賠償金は、少年に一生の十字架を課すこととなろう。
場合によっては少年の将来を左右しかねない厳しい判決となったが、蹴ったボールが道路に転がった位で、これほどの罰を与える必要があったのだろうか。そんな大きな罪だったのだろうか。
こんな判決が罷り通るようであれば、全国の親御さんたちはいつもビクビクしていなければならぬ。
新聞報道で読む限りでは、私は少年に違法性はないと思う。
不当判決だと思われるので、少年側の控訴を期待したい。
【追記】(7/3)
この事件に関して2ちゃんねるなど一部のサイトで、事故が原因で亡くなられた方やその遺族を揶揄する書き込みが見られる。
いつもの事ながら、自らの精神の荒廃と頽廃を披瀝する行為であることに気付かないのであろうか。
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