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2011/06/13

「鯉のあらい」と「氷」

落語「青菜」で、涼感を醸し出すために、鯉の洗(あら)いの下に敷かれている氷を頬張るという演出が行われていて、私はこれに対して異論をはさんでいます。
この点について、少し補足したいと思います。

先ず「あらい」の意味ですが、通常の刺身と異なり、鯉の身をそぎ切りにしたものを水で洗うことから、この名が付けらえています。
ではなぜ鯉は刺身にせず「あらい」にするかというと、一つは川魚独特の生臭さがあるためです。水で洗って、臭みを除くのです。
次に、氷水で冷やすことにより身を引き締めて、食感を良くするためです。植木屋さんが「歯ごたえがあって美味しい」と言っているには、このためです。
もう一つは、川魚に付着している寄生虫を殺すため、一度お湯に浸してから冷水で洗うことがあります。
夏によく用いられる調理法なので、氷の上に置いて出します。飲食店ではザラメと言われる細かな氷の上に、鯉のあらいを並べて出すことが多い。
さらに生臭さを消すために、酢味噌につけて頂きます。

夏場の氷ですが、今は冷蔵庫で簡単にできますが、昔は夏になると氷屋が売りにきて、それを各家庭で買ったもんです。
アイスボックスと呼ばれる箱の中に入れ、夏場の食品保存に使いました。
あるいはアイスピックを用いて「ぶっかき氷」に砕き、適当な大きさのものをそのまま頬張ったり、水を入れて氷水にして飲んだりしました。
ぶっかき氷は大きさも形も不揃いです。
「青菜」の氷も「ぶっかき氷」だっと思います。
ザラメじゃ、頬張れませんし。

「青菜」ではそうした氷を使ったでしょうから、そのままでは「あらい」は上に乗せられません。
おそらく氷の上に布巾を敷いて、その上に鯉の洗いを並べたものと推測されます。
植木屋は布巾をめくって下にある氷を取りだし、頬張ったのでしょうか。
いずれにしろ、生臭い魚の下に敷かれた氷を口に入れるような事はしませんね。
なぜこうした演出にしたのかと想像するに、この噺の前半はこれといった面白い場面がなく、笑いを取るために入れた。
あるいは、このシーンを入れることにより涼感を増すと考え、こうした演出を行ったのでしょう。

鯉のあらいと氷をめぐる一席、お粗末さまでした。

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コメント

たしかに、「鯉のあらい」を乗せた氷を食べるシーンは、最初は誰の演出かは知りませんが不自然ですね。
私が好きな音源は三代目の柳好ですが、そんなことはしていない。柳好の噺では「鯉のあらい」の後は「そうめん」ですが、これが結構好きです。洋芥子のクスグリがいい。
小柳枝のこの噺はまだ聞いていないので、ぜひどこかで巡り会いたいと思います。

小言幸兵衛様
もしかして、演じ手も観客も鯉のあらいを食したことが無いのではと思い、この記事を書きました。
今では都会に住んでいると、なかなか口にすることが出来なくなりました。
「青菜」では涼感を演出する小道具として、鯉のあらいは欠かせません。
ついでに「柳影」も決して高級な酒ではありませんが、これまた冷やして飲む夏の風物詩です。
鯉のあらいと冷酒、そして青菜の3点セットで十分涼感は演出されているので、敢えて氷を頬張る場面は蛇足であると思います。

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