この噺にはこの噺家(あ-え)
これから10回に分けて、落語のネタ別に、この噺にはこの噺家という企画を立てました。
よく「この落語家を聴け」だの「落語CD推薦版」などといったタイトルで書籍が出版されていますが、そんな大それたモノでは一切ありません。
例によって独断と偏見で、エイヤっと書き出したものですから、何の参考にもなりません。
イヤそれは違うだろうとか、もっと別の落語家の方が優れているとか、様々なご意見があるでしょう。
十人いれば気は十色、何せ落語の世界ですから。
表の見方は次の通り。
・対象は東京落語に限定した。
・ネタはアイウエオ順に並べた。今回はその内「あ-う」まで。
・(数字)は代目かを表し、当代及び志ん朝のように特定できる場合は名前だけにした。
・長い噺の場合は、その一部を対象にした。
根 多 |
演 者 |
青菜 |
春風亭小柳枝 |
あくび指南 |
(5)古今亭志ん生 |
明烏 |
(10)金原亭馬生 |
愛宕山 |
(8)桂文楽 |
あたま山 |
|
穴泥 |
(5)柳家小さん |
鮑のし |
(5)古今亭志ん生 |
按摩の炬燵 |
柳家喬太郎 |
家見舞い |
(5)柳家小さん |
幾世餅 |
(10)金原亭馬生 |
居酒屋 |
(3)三遊亭金馬 |
石返し |
(5)柳家小さん |
一眼国 |
(8)林家正蔵 |
一分茶番(権助芝居) |
(3)春風亭柳好 |
井戸の茶碗 |
柳家喬太郎 |
犬の目 |
|
居残り佐平次 |
古今亭志ん朝 |
位牌屋 |
(6)三遊亭圓生 |
今戸の狐 |
古今亭志ん朝 |
今戸焼 |
(9)桂文治 |
芋俵 |
(5)柳家小さん |
浮世床(ノウチ夢) |
(4)三遊亭圓遊 |
浮世根問 |
(3)三遊亭金馬 |
牛ほめ |
|
うどん屋 |
(5)柳家小さん |
鰻の幇間 |
(8)桂文楽 |
馬のす |
(8)桂文楽 |
厩火事 |
古今亭志ん朝 |
これで約10分の1ですが、やはり昭和の名人といわれる文楽、志ん生、圓生、それに金馬、三木助、馬生、小さんに志ん朝、この8人でかなりの部分を占めることになりそうです。
今回のセレクトについて少し補足しますと、「一分茶番(権助芝居)」は近ごろでは前半だけで切るケースが多いのですが、この噺は後半が面白い。芝居シーンが巧みな向島の柳好にしました。
「浮世床(夢)」のように軽いネタは軽い4代目圓遊に、「今戸焼」は先代可楽の十八番ですが、ここでは軽妙な留さんの文治に、「井戸茶」は独自のアレンジを評価し喬太郎に、それぞれしています。
「厩火事」は“帯に短し襷に長し”で迷ったあげく、無難なところで志ん朝です。
「浮世根問」は最近「やかん」に押されて高座に上がることが少ないのが残念ですが、知ったかぶりが追い詰められていく姿はこちらの方が鮮明で、これは先代金馬。
さて皆さんの好みはいかに?
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コメント
ほめ・くさんならではの、素晴らしい企画に拍手!
「あたま山」にスンナリと(8)正蔵の名が入らないところが、「他の誰と悩んでいるのか?」とミステリーで楽しいです。当代で名があるのが喬太郎だけ、というところも、やむなしでしょうね。
この中で、あえて私の好みで主張(?)するのは「鰻の幇間」の(5)志ん生、です。
しかし、文楽も好き、一人に絞るのは難しい。
今後も楽しみにしています。
投稿: 小言幸兵衛 | 2011/06/04 10:01
小言幸兵衛様
早速のコメント有難うございます。
我ながらバカバカしい企画だと呆れているんですが、一度整理をしておこうという自分勝手な代物なのです。
「鰻の幇間」の(5)志ん生も、あるいは志ん朝も結構なのですが、幇間の哀しみが滲み出ているという点で、文楽が優っているように思います。
「あたま山」は上方落語では良いものがあるのですが、東京は今ひとつの感があります。
投稿: home-9(ほめ・く) | 2011/06/04 10:20
>幇間の哀しみが滲み出ているという点
黒門町の師匠をもちろんリアルタイムには存じませんが、ビデオでなら観たことがあります。縫い付けてあった十円札を外して出す仕草など、無念さがよく伝わり、見事だなと思った記憶があります。
投稿: 福 | 2011/06/05 20:20
福様
羽織の襟に十円札を縫い付けていて、それを愚痴をこぼしながら外す場面、これぞ黒門町の絶品といって良いでしょう。
こういう細かな描写が、噺全体のリアリティを高めています。
「愛宕山」もそうですが、幇間の哀しみを演じさせたら、やはり文楽。
投稿: home-9(ほめ・く) | 2011/06/05 23:03