「桂文珍・大東京独演会」vol.4(2011/6/21夜)
毎年恒例となった「桂文珍・大東京独演会」の第4回が、6月20-22日の3日間、国立劇場小劇場で行われている。その中日21日の夜の部に出向く。
今回は“大好評リクエスト寄席!ネタのオートクチュール”と題して、観客のリクエストによってその日の演目を決めるという趣向。
開演前にリクエスト用紙が配られ、各自が好きな演目を記して投票したので、てっきりその投票結果でネタを決めると思っていたら、さにあらず。
開演後の冒頭、文珍が出てきて大きな演目一覧表を出して、会場の中で希望を募ってネタを決めていた。
それも前日と当日の昼に高座にかけたネタは除くということで、希望どうりというわけでもない。
それはそれで良いのだが、であれば事前のリクエスト投票は一体なんだったのか、首を傾げてしまう。
どうも主催者の意図がよく分からない。
かくして決まったこの日の番組は、下記の通り。
< 番組 >
桂文珍「代書屋」
内海英華「女道楽」
桂文珍「胴乱の幸助」
~仲入り~
桂文珍「算段の平兵衛」
文珍1席目「代書屋」、最初にリクエストがあったネタだが、これを希望した人の意図が分からない。文珍には不向きだと思う。
はたして出来は良くなかった。代書屋と客のセリフのリズムが同じ様ではダメなのだ。
それに昼席で「地獄八景」(ウラヤマシイ!)を演じて疲れた後、夜席で3席演るのだから、どこかで力を抜かねばならないのだろう。
調子が上がらぬまま終わってしまった。
2席目「胴乱の幸助」、こちらは自家薬篭中のネタといって良い。
特に後半の義太夫の稽古場から後の場面が良く出来ていた。
通りかかった稽古屋から聞こえる浄瑠璃『桂川連理柵』(別名『お半長』)の「帯屋の段」が本物の話と勘違いする幸助、戸惑う師匠。このトンチンカンなやり取りの「間」の取り方が巧みで、京都に行くと言い張る幸助に「面白そうだから行かせましょう」のセリフも利いている。
幸助に押しかけられて質問責めにあい、戸惑う帯屋の番頭の表情も良かった。
文珍は得意の義太夫を一節唸るサービスも入れ込んで、気分良さそうに演じていた。
このネタ、現役ではこの人がベストだろう
3席目「算段の平兵衛」、マクラで二号さんのことを東京で「妾(めかけ)」、大阪では「てかけ」というのは知っていたが、「小半(こなから)」というのは初めてきいた。一升の半分が五合、その半分の意味なので二合半。「二号はん」となるそうだ。勉強になった。
このネタは古典には珍しくミステリー風でもありブラックユーモア風でもある。しかも悪人が主人公であって、その悪が成功するという結末も独特だ。
庄屋が死んだと思い込む人たちの戸惑い、自分が犯人なのに金でその算段を引き受ける平兵衛との会話が見どころ。
お花に色気が欠けるため庄屋と酒を酌み交わすシーンに情緒がない欠点はあるものの、それ以外は周囲の慌てぶりと平兵衛の小悪党ぶりの対比が巧みに描かれ、見応えのある1席となっていた。
結末のオチも上手く工夫されていて、後味の良いものに変えていた。
上方落語界は、今や文珍の時代に入ったのだろうか。
他に日本でただ一人の「女道楽」、内海英華が音曲で華を添える。
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