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2011/08/14

鈴本夏まつり「吉例夏夜噺 さん喬・権太楼」(2011/8/13)

お暑い盛りでございます。
恒例の鈴本演芸場8月中席夜の部・お盆興行は「吉例夏夜噺 さん喬・権太楼」、ここ十数年にもなるか、欠かさず来ている。その8月13日の回へ。
10日間前売り完売は結構なことだが、10年以前はこれも恒例だった浅草演芸ホール昼席で志ん朝のトリ、そして「住吉踊り」を観てから地下鉄で上野へ出て、ここ鈴本夜席にギリギリ間に合った。
その当時は前売りも指定も無かったから、運が良けりゃ最前列に座れたんですよ。
どうです、ウラヤマシイでしょ。
落語ブームだなんだって言うけど、アタシらにとっちゃぁ何も良いことは有りませんね。

<  番組  >
・柳家喬之助「寄合酒」
いつ観ても変わらない、ってぇコトは進歩がないというコト。
こういうネタはテンポが大事。モタモタ喋っているからサッパリ面白くない。
・三増紋之助「曲独楽」
この7月に亡くなった師匠・紋也もそうだったが、一昔前の曲芸師というのはほとんど喋らず、静かに芸を披露していた。
寄席の色物という役割を心得ていたんだろう。
好みによるだろうが、そういう芸に江戸の「粋」を感じるのだが。
・春風亭正朝「悋気の火の玉」
決して不出来とは言えないのだが、今ひとつ感心しない。
ご存知、黒門町の十八番で、このネタもテンポとリズムが大切。
文楽は一気呵成に口演時間はマクラを含めて12分、そういうネタなのだ。
12分のとこを仮に15分かけようとすると、そのぶん間延びしてしまう。
・ホームラン「漫才」
若手の勢いのある漫才もいいが、こういう年季の入ったコンビの芸はやはり一段上だ。
芸の奥行きが違う。
・桂藤兵衛「金釣り」
地味ながら安定感があり、寄席にはなくてはならぬ噺家の一人。
出だしは「鷺捕り」かと思ったが、珍しい「金釣り」(多分このタイトルでいいと思うけど)。
釣り竿の先に硬貨を付けて、札束を釣ろうという奇想天外な発想が愉快。
・柳家喬太郎「夫婦に乾杯」
今日は新作だろうと思っていたら、予想通り。
ただ自作ではなく、昇太の作品らしい。
ストーリーは、会社で新商品のネーミングについてアイディアを出し合っている内に、一人の社員が家で妻と会話しているのはオカシイと周囲から指摘される。ふつう夫婦は家では会話しないんだと諭される。
自宅へ戻ると、やはり仲が良い間柄なので、ついつい会話が弾んでしまう。
そこで夫の方は、いきなり妻に無理難題を言い立て、反目状態に・・・。
まあ筋書はそれほど面白いもんじゃないが、喬太郎の語り、特に夫婦の会話にリアリティがあり、話芸の力だけで面白く聴かせてくれた。
さすがである。
・柳家小菊「粋曲」
三味線を片手に高座を下がっていく姿を見るだけで、グッとくる。いつ見ても色っぽい。
チキショー、吉川潮め!
芸の抽斗が多く、レベルも高い。
これだけの音曲師、果たして後継者は育つだろうか。
・入船亭扇遊「一目上り」
この日は特別興行ということで前座が出なかったが、仲入り前で扇遊が前座噺を演じてくれた。グッド・チョイス。
やはり扇遊が演じると、「一目上り」ってこんなに面白かったっけという具合になる。

-仲入り-
・林家正楽「紙切り」
「なでしこジャパン」のリクエストで切った澤穂希が上出来。
・柳家さん喬「肝つぶし」
これが聴きたくて、今日を選んだ。
ストーリーは。
民が恋患いになった。
民の兄貴分という男が、相手は誰かと訊くと、夢で見た女だという。
医者に診せると、亥の年亥の月亥の日に生まれた者の生き肝を呑ませれば助かると言う。
兄貴分とその妹というのが、子供の頃に両親を亡くしたのを、民の父親が引き取って育ててくれたのだ。恩返しを誓ったものの、その父親は既に他界している。
兄貴が家に帰ると、ちょうど妹のお花が遊びに来ていた。
世間話をしているうちに、このお花が亥の年月のそろった女だったことが分かる。
民の父親への恩義のためには民を助けたい。しかし生き胆を得るためには妹を殺さねばならぬ。
悩んだ末に、兄は遂に包丁を持ち出し・・・。
さん喬の演出は、恩人への恩義と肉親への愛情との間で板挟みになる男の苦悩を鮮やかに描く。
お花の無邪気な振る舞いが、兄の苦悩を一層増幅させ、観ている者の心を打つ。
期待通りの会心の一席。
・鏡味仙三郎社中「太神楽曲芸」
・柳家権太楼「鰻の幇間」
野幇間の一八が客をつかまえて鰻をご馳走になるまでの歓喜と、客に逃げられ料金まで支払う羽目になるときの落胆、権太楼は独自のクスグリを入れ込んで実に楽しい一席に仕上げた。
歯ごたえのある蒲焼を食う所作や、杯が片方は酒屋の三河屋だがもう片方は金子葬儀社(我が家の近所に実在しているから可笑しかった)だったり、床の間の掛け軸がヨシオ君の書初めだったり、それぞれが秀逸。
ヨシオ君は二階の座敷でメンコまでして、大活躍だった。

「吉例」の名に恥じない熱演が揃い、充実した8月中席だった。

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