入船亭扇橋一門会(2011/9/19)
9月19日鈴本中席に行く予定だったが急きょ変更して、「なかの芸能小劇場」で開かれた「入船亭扇橋一門会」へ。
会場から歩いて数分の所に、ボクの生家があった。かつてここで生まれ、戦時中の疎開をのぞき、小学2年までずっと暮らした場所だ。今でも時々夢に出てくる。
およそ60年ぶりに訪れてみたが、昔の我が家はとうに無く、今は不動産会社の小さなビルが建てられていた。
近所を歩いてみたら、ガラス店が当時のままあった。隣は幼馴染の家で釣具屋だったが、今は改築してスポーツ用品店になっていた。近くの蕎麦屋は昔のままだった。
半世紀を遥かにこえているのに、意外と憶えているものだ。
会場は思ったより小さく、落語会にはうってつけ。
師匠・扇橋は今年80才になり、体調がすぐれないということで今回は出演しなかった。
< 番組 >
前座・入船亭辰じん「金明竹」
入船亭遊一「真田小僧」
入船亭扇辰「千早ふる」
入船亭扇遊「三井の大黒」
~仲入り~
入船亭扇里「開帳の雪隠」
入船亭扇冶「らくだ」
辰じん「金明竹」、高座をみるのは3度目となるが、上手い前座だ。セリフの「間」の取り方が良く、これは天性だろう。
将来は扇遊や扇辰クラスの真打になるものと期待される。
遊一「真田小僧」、後輩に真打昇進を抜かれ、心中穏やかではいられないと察せられる。
印象としては、前座の出来が良かったせいか、今ひとつ精彩に欠けていた。
このネタであれば、もっと練られていなければならない。父親の受けのセリフで「冗談じゃねえ」を多用していたが、こういう一つ一つの言葉の吟味が求められる位置に来ている。
もっとアグレッシブな姿勢が必要ではなかろうか。
扇辰「千早ふる」、扇辰のこのネタに関しては言うことなし。
飄々とした佇まいは師匠譲りだが、加えて「艶」が出てきた。そこに大師匠・三木助の面影を感じる。
扇遊「三井の大黒」、こちらも三木助譲りの高座。
周囲にいるイナセな江戸の大工の中で、一人ヌーボーとしていながら風格のある甚五郎、その人物像を鮮やかに描いていた。
惣領弟子、貫録の一席。
扇里「開帳の雪隠」、マクラ小咄集かと思ったら、一応このタイトルのようだ。
「大黒」と「らくだ」に挟まれ、膝代りにこのネタを選んだのだろうか。
2010年の昇進ということは、最も若手の真打だ。妙に枯れた印象で、もっとギラギラした所があっても良いと思うのだが。
扇冶「らくだ」、師匠ではなく、馬桜から教わったネタとのこと。
前半がやや平板だったが、カンカンノウ辺りからアクセルが入り、見せ場である屑屋の酒乱シーンから最後の焼き場のオチまで、一気呵成。
扇冶はスケールの大きさを感じさせる噺家だが、愛嬌に欠ける。
もっとバカになれたら、一皮剥けるように思う。
終演後に会場出口で、扇遊が一人一人に挨拶していたが、高座も客席もあたたかい雰囲気に包まれた一門会だった。
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コメント
御大、ダイジョブかなあ。
扇辰はまだ大きくなるんじゃないでしょうか。
投稿: 佐平次 | 2011/09/20 10:47
佐平次様
師匠は今、体調を崩し療養中との報告でした。高齢なので心配です。
扇辰はこれからもっともっと大きくなるでしょう。
雲助一門と扇橋一門が顔を合わせると、お互い支流同志だなと言い合っているとか。
でも本流を脅かす存在になるかも知れません。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2011/09/20 11:56