「市馬・白酒・兼好 三人会」(2011/9/24)
9月24日の二軒目は、横浜にぎわい座で行われた「市馬・白酒・兼好 三人会」へ。
「喬太郎・談笑二人会」がハネテから、有楽町から桜木町に移動、時間はピッタリで開演に間に合う。
この顔ぶれでも、満席にはならなかった。
「三人の殿様」という企画で、はて、どんな殿様ネタが出てくるのか。
< 番組 >
出演者による「鼎談」
前座・柳亭市也「のめる」
三遊亭兼好「目黒のさんま」
~仲入り~
桃月庵白酒「井戸の茶碗」
柳亭市馬「松曳き」
冒頭は出演者3人による「鼎談」で、司会は白酒でこれが意外に下手だったのはご愛嬌。
それぞれにとって殿様は誰かという質問に、兼好は5代目圓楽、白酒はビートたけし、そして市馬は往年の時代劇大スター・市川右太衛門と答えていた。
興津要が作った「三日月党」の殿が市川右太衛門で、その振る舞いは殿様そのものだった由。因みに家老が師匠・小さんだったとか。
市馬はサービスで「三日月党」の歌を披露したが、この人は一度は高座で唄わないと気が済まぬようだ。
兼好「目黒のさんま」、このあと仲入りとなったが、出演者たちは白酒の後で仲入りという認識でいたらしい。そりゃそうだろう、仲入り前と分かっていれば、このネタは選ばなかった筈だ。
主催者(アクセス/夢空間)の手抜かりだ。
「夢空間」という会社は、出演者と会場をおさえれば、後はチケットを売るだけと考えているフシがある。
当日のプログラム1枚作る気もないこういう会社が、落語会を主催する大手というのも実に困ったものだ。
軽妙にバカ殿ぶりを演じ面白く聴かせていたが、最近の兼好をみていると小さくまとまって来ているような印象を受けるのだ。
以前から、白酒・三三・兼好・一之輔を「若手四天王」と勝手に名づけ注目してきたのだが、兼好が一歩遅れをとってきたような気がしてならない。
白酒「井戸の茶碗」、先ず演出上の工夫があった。
屑屋の清兵衛が千代田卜斎の茶碗を高木佐太夫宅に届ける際に、卜斎の娘を伴っていくという設定にしている。ここで佐太夫と娘が顔を合わせているのだ。
だから卜斎が娘を嫁にと言いだしたとき、既に二人は互いに憎からず思っていたので話がまとまったという分けだ。
オリジナルでは娘の意思は無視されている。この当時の婚礼は親が一方的に決めていたので、これが現実だった。しかし今のお客には、白酒の演出の方が受け入れ易いのではなかろうか。
なにせ、NHKの大河ドラマがホームドラマになってしまった今日この頃。
登場人物の造形もしっかりとしていてテンポも良く、上々の高座だった。
市馬「松曳き」、師匠・小さんの粗忽ぶりのエピソードをマクラにふって本題へ。
小さんの演出をそのまま受け継いだ、本寸法の高座。
ただ白酒の「松曳き」を聴いてしまうと、どうも他が物足りなく感じる。
どうせなら殿様が出て来る他の演目、例えば「妾馬」辺りが聴きたかったというのは贅沢だろうか。
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コメント
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人気が出てきて失うものを怖くなったというにはまだ早いですね、潜在能力の問題ですかね、兼好さん。
投稿: 佐平次 | 2011/09/26 10:00
佐平次様
私見ですが兼好をみていると、笑いを取りたい気持ちが強すぎて、芸を小さくしているように見えます。
芸人としての資質は十分だと思うので、自己の将来像を描いて磨いていけば、もっともっと上手くなる人だと思っています。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2011/09/26 10:24
なかなかお忙しい土曜日だったのですね。しかも、何とも贅沢な顔ぶれ!
兼好へのご考察は頷けます。寄席への出演がなく他流試合の量が少ないことが原因の一つのような気がします。
複数の噺家さんと出る落語会もあるにはありますが、やはり寄席でいろんな噺家さんの高座を見ることや、お客さんの反応を感じることなども、噺家の成長には必要なのではないでしょうか。そういった危機感を持っているからこそ、少し焦りのようなものが芸を大きくさせないような気がしますが、それを乗り越えるだけの器でもあると思います。今は彼が大成するために不可欠な“もがき”の時間なのかなぁ、と思っています。
投稿: 小言幸兵衛 | 2011/09/26 19:02
小言幸兵衛様
ロクに日にちを確かめずにチケットを取るので、こういう結果を招いてしまったというわけです。
前の会で、喬太郎が寄席でのネタの選び方を説明したら、談笑が我々にはそうした経験が無いからなと言って感心していました。
やはり寄席に出ない噺家はハンディを背負っているんだなと、その時感じました。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2011/09/26 22:37