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2011/09/14

#23「白酒ひとり」(2011/9/13)

9月13日、国立演芸場での「白酒ひとり」の会へ。
プログラムに23回とある。
私の印象では、白酒は真打昇進のころは左程注目を浴びていなかったと記憶しているが、ここ2-3年で急激に力をつけ、若手真打のトップクラスの一人となった。
そこには、こうした地道に独演会を続けてきた努力があったのだろう。
同じプログラムに前回のアンケートよりという欄があり、「一之輔さんはいつ真打になれるのでしょうか?」には笑ってしまった。白酒の回答は「小三冶師匠にも分からないことです。」だった。

前座・林家扇「子ほめ」
<  番組  >
桃月庵白酒「粗忽長屋」
桃月庵白酒「今戸の狐」
~仲入り~
桃月庵白酒「らくだ」

マクラで、この時期はドロップアウトした学生の中に落語家を志望する人間が出てきて、志願者が増えるそうだ。
いちど入門さえすれば、師匠をしくじらない限り首になることもなく、ボーっとしていても十数年経てば自動的に真打になれる。定年もない。就活に失敗して往くところもないから噺家でもなろうかなどという、「でも噺家」が出現するというわけだ。
しかし芸人というもは、サラリーマンとは違い適性が求めらえる。努力だけではどうにもならない世界でもある。そこを肝に銘じて、先が見えたら早目に進路変更することだ。ダラダラ続けていると、本人も客も不幸になる。
この日の前座・扇のことを指しているわけではないので、為念。

この会は初だが、こういう独演会は良いですね。
一人だけで約2時間、たっぷり聴ける。全ての独演会をこの形にして欲しい位だ。

1席目「粗忽長屋」
マクラで、10日に一度散髪に行っているとのこと。ああいう頭は意外と手がかかるんだろう。
白酒のこのネタ、3度目だと思うが、毎回少しづつ変えている。
思い込み男と、それに引きずられる熊、客観視する立会人、その視点の切り替えが上手で、今や十八番の一つといえよう。
ただ、熊のセリフのテンポをもう少し落とした方が効果的ではなかろうか。先代・小さんが良い手本だと思うが、その方が逡巡しながら強引に言いくるめられる男の姿が際立つように思う。

2席目「今戸の狐」
マクラで、今年の「彩の国落語大賞」を受賞したことが紹介された。既に国立花形演芸会の大賞も取っているので、2冠である。
もっとも授賞式でのインタビューや、その後の首長との懇談会には話が合わず閉口したと語っていた。国立の時もあまり嬉しそうではなかったが、テレかな。
因みに受賞の弁は、「埼玉県はいい所ですね。お客さんに喜んでいただける高座にしたいといつも思っています。こういう時期だから、お客さんに笑っていただこう、日常生活をもっと元気よくということをより強く感じています。今回の受賞は励みになります。時間を割いて来ていただくお客さんに恥じないようがんばっていきたいです」だが、こちらはリップサービスだったか。
このネタ、ストーリーがやや錯綜しているのと、長い割に笑いを取りにくにせいか、普段の寄席の高座にかかる機会が少ない。
こういうネタこそ、独演会で聴きたい。
志ん生の録音に比べると、噺の前段である前説の部分をカットし、その代りに用語の説明を丁寧にしている。その分、白酒の高座の方が分かり易い。
嫌な噺家として圓楽を登場させるなど独自のクスグリで笑いを誘い、人物の演じ分けも良く出来ていた。
このネタに関しては、志ん朝を偲ばせる出来だったと思う。

3席目「らくだ」
1席目と「死体」で付くという疵はあったが、こちらも独演会らしく最後の火葬場まで演じた。
未だ完全に練れていないせいか、細かな言い間違いや言い落としはあったが、全体的には良く出来ていたと思う。
白酒の演出では、屑屋が月番にラクダの死を告げた後、直ぐに長屋の皆がそれを知ることにしていたが、こちらの方がリアルだろう。誰かが亡くなったとあれば、アッという間に情報は流れた筈だ。特に大家には。
屑屋が大家が謝っているのに気付かず”かんかんのう”を唄い続ける演出もいい。無我夢中ぶりが良く出ている。
因みに”かんかんのう”は明治になって俗謡”梅が枝節”へと変わり大流行。今でも落語家の出囃子に使われている。
見せ所の屑屋が次第に酔う場面では、一度思い出し笑いをした後に、次第に怒り出す。この方が屑屋の変身ぶりが鮮やかに見える。
掛け声をかけながら棺桶をかつぐのも、最後のオチも、独自の演出。
いつも思うのだが、この人は頭が良いんだろう。

一人3席、それもバラエティに富んだネタの選定で大いに楽しめた。
白酒の快進撃はまだまだ続く。

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コメント

屑屋はカンカンノウを歌いながららくだになったのではないでしょうか。
屑屋の中のらくだが目を覚ましてしまった^^?

投稿: 佐平次 | 2011/09/15 10:07

佐平次様
私見は長くなりますので、新記事で。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2011/09/15 19:00

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