橋下徹は「ミニ東條」
太平洋戦争の開始間もない昭和17年4月に、米国は初めて日本本土爆撃を敢行する。
真珠湾以来、勝利に湧いていた日本に冷水を浴びせ、本土空襲などは絶対にあり得ないと断言してきた東條英機首相は面目丸つぶれになる。
4月30日に総選挙を控え危機感をいだいた東條は、「聖戦完遂」のためと称して翼賛政治体制協議会推薦候補の応援に奔走する。
翼賛会の推薦条件には、「日本は神国なりとの絶対的信念を把握している人」とある。
推薦候補への手厚い支援と、非推薦候補に対する露骨な選挙干渉の結果、推薦候補の実に8割が当選する。
しかし東條はこの結果に満足せず、翼賛会の幹部を動かして各政党を解散させ、翼賛政治会を作る。同時に会に加わらない議員は、議会活動が出来なくした。
この結果、非推薦で当選した議員の大半も翼賛政治会に結集することになり、この会に参加しなかった無所属議員は8名だけとなる。
元々、閣僚をはじめ主要なポストは東條の息のかかった人物や側近で固めていたから、行政は思いのまま。
そして議会はいうと、東條英機が提案する議案を承認するためだけの機関と化した。
昭和史の一断面を読むうちに、ふと頭に浮かんだのは大阪府の橋下徹知事の言動だ。
府知事自ら政党「大阪維新の会」(別名:橋下新党)を作りあげ代表におさまる。
橋下の応援のもと、大阪府下の自治体選挙で「維新の会」候補の当選が相次ぎ、大阪府、大阪市、堺市の3議長を会が独占した。
2011年6月4日、大阪府議会の定数を109から88に削減する条例案が成立した。
その結果、予算が削減される反面、一票の格差が約2.2倍から2.88倍に拡大し、1人区が増加し大政党(つまり大阪では「維新の会))に有利な選挙制度になっている。
橋下徹知事、今年11月27日に行われる大阪市長選に立候補するとの意向で、後任の府知事には息のかかった候補を据える予定のようだ。
「大阪維新の会」が大阪市長選に向け市内で開いた会合で橋下は、「マニフェストを実現してくれる職員でないと困る」と指摘し、維新の会の公約に反対する市職員を選別、選挙後に役職を外す意向を明らかにした。
今や大阪の自治体から、橋下徹の意に従わない人間は全て追放するかのような勢いである。
2011年6月29日に行われた政治資金パーティーで橋下は、大阪府知事・大阪市長のダブル選挙に関して、「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」「大阪は日本の副首都を目指す。 そのために今、絶対にやらなければいけないのは、大阪都をつくることだ」「権力を全部引きはがして新しい権力機構をつくる。これが都構想の意義だ」と述べた。
さらに「今の日本の政治で一番重要なのは独裁。独裁と言われるぐらいの力だ」と語っている。
今どき独裁政治の賛美とは、恐れ入った政治感覚だ。
橋下知事の意向は今や自治体の立法、行政や選挙制度、教育制度への介入にも及んでいる。
「聖戦完遂」を「大阪都構想」に、「翼賛政治会」を「大阪維新の会」にそれぞれ置き換えれば、その手法は戦中の東條英機を連想させる。
もちろん国と自治体では性格も権力も異なる。
だから、ミニ「東條英機」。
果たして11月に大阪府民と市民はどのような審判を下すのだろうか、注目される。
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