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2011/09/19

落語家の「実力」って、なんだろう?

今回は、「落語家の実力」について考えてみたい。
AとBとを比べ、どちらの実力が上かという時に、これが時間や距離を測るスポーツであれば明解だ。しか同じスポーツでも採点競技となると、採点基準が変わると順位に影響する。
人間の知能なら試験の点数(偏差値など)で評価されるのが一般的だが、それだけでは判定出来ない筈だ。
企業に働く人であれば能力評価が行われるが、これも公正に実施されているとは言い難い。
ことほど左様に、実力を評価したり比較したりするのは難しいことなのだ。
噺家の実力の評価でも、同様の問題を抱えている。否やこの世界こそ、評価する人間によって結果が大きく変わる可能性が大なのだ。

以下に、同じ時期に、現役の落語家を評価した二つのケースについて紹介したい。
一つは、「落語あらすじ事典 千字寄席」というサイトで、2008年07月07日付「 落語家の偏差値(以下「千字版」)」という記事だ。
このサイトは「千字寄席」という書籍の著者である、古木優氏と高田裕史氏のお二人によって運営されているもので、相当な「目利き」(落語だから「耳利き」か)である。

【引用開始】
[独断と偏見] 基準は、うまいかへたか、だけ。
70.0 小三治
67.5 雲助  
65.0 さん喬 権太楼 桃太郎
62.5 小柳枝 鯉昇 喜多八 志ん輔 小里ん 
60.0 小朝 川柳 馬桜 志ん五  
57.5 志ん橋 正雀 小満ん 喬太郎      
55.0 円太郎 小さん ぜん馬 竜楽
52.5 昇太 扇遊 菊春  
50.0 歌之介 馬生 市馬 平治 白酒 扇治 正朝   
47.5 玉の輔 たい平  扇辰 三三 兼好 文左衛門 金時
45.0 花緑 彦いち 志の輔 南なん 菊之丞 とん馬 
42.5 志らく 一琴 白鳥 談春 
40.0 三平 幸丸 楽輔   
37.5 歌武蔵 談笑  
35.0 正蔵
32.5 愛楽
30.0 
【引用終り】
以上56名

もう一つは、「週刊文春」(1月1日・8日新年特大号)に掲載された堀井憲一郎氏の「東都落語家2008ランキング」(以下「ホリケン版」)である。
こちらも落語関係の本を著している「目利き」だ。
選ぶ基準は「お笑い好きだけど、あまり落語を知らない人に見せたい落語家」のようで、ベスト150が載っているが、「千字版」と比較するためにベスト56をみてみよう。

【引用開始】
0 立川談志
1 柳家小三治
2 立川志の輔
3 春風亭小朝
4 柳家権太楼
5 春風亭昇太
6 立川談春
7 立川志らく
8 柳家喬太郎
9 柳家さん喬
10 柳亭市馬
11 柳家喜多八
12 林家たい平
13 柳家花緑
14 三遊亭白鳥
15 五街道雲助
16 古今亭志ん輔
17 三遊亭小遊三
18 古今亭菊之丞
19 三遊亭歌武蔵
20 三遊亭遊雀
21 林家正蔵
22 柳家三三
23 昔昔亭桃太郎
24 春風亭一朝
25 瀧川鯉昇
26 春風亭小柳枝
27 立川談笑
28 三遊亭歌之介
29 橘家文左衛門
30 林家彦いち
31 春風亭百栄
32 三遊亭圓丈
33 桃月庵白酒
34 入船亭扇辰
35 三遊亭兼好
36 入船亭扇遊
37 橘家圓太郎
38 春風亭正朝
39 桂歌春
40 むかし家今松
41 春風亭柳橋
42 三遊亭笑遊
43 古今亭志ん五
44 柳家蝠丸
45 柳家小満ん
46 川柳川柳
47 林家三平
48 古今亭寿輔
49 立川生志
50 桂歌丸
51 春風亭勢朝
52 林家正雀
53 柳家はん冶
54 林家木久扇
55 三遊亭圓歌
56 橘家圓蔵
【引用終り】

「千字版」「ホリケン版」で評価基準の違いがあっても、いくつか共通点がある。
先ず、古典落語が中心で、新作の人は少数だ。その結果「落語協会」所属の噺家が大勢を占めている。
小三冶のトップは共通だ。
「ホリケン版」の1位から16位までの顔ぶれは「千字版」と共通であり、先ずはこの辺りのメンバーが今の落語界の中心であるといえよう。
しかし両者の違いもある。
先ず目に付くのは、後者の17位に小遊三がランクされているが、前者には「笑点」の旧メンバーからは誰ひとり選ばれていないことだ。
立川流の扱いも大きな違いだ。
前者では55.0ぜん馬がランクされている以外は、志の輔以下全て平均値より下に格付けされているが、後者では談春、志らくと共にトップ10入りしている。反面、ぜん馬の名がない。
同じ55.0に圓楽一門から竜楽が入っているが、これも後者には名がない。
察するに、「ホリケン版」の方は人気をかなり重視しているのだろう。
落語は大衆芸能である以上、人気、つまり集客力も実力のうちという考え方も成り立つわけだ。

選定基準にしても「千字版」で、60.0小朝、川柳、馬桜と並んでいるのは奇異に映るし、扇遊や市馬より小さんの方がランクが高いのには、首をかしげる人も多いだろう。
正蔵より三平が上に至っては、一体どういう基準なのか、疑問を感じてしまう。

もし私が56人を選ぶとしたら、この両者とも違う結果になるだろう。
100人の人が選べば、結果は100通りになる。異論が出るのは止むをえまい。

噺家の実力とは、一口でいえば話芸に優れ、それが観客に支持されている、ということになるだろう。
しかし計量化や数値化できる性質のものではなく、どうしても評価者の主観が加わるのは避けられない。
今回の落語協会が公表した真打昇進については、大方の落語ファンから歓迎されているようだが、これから先、誰からも支持されるような制度を続けていくのは容易なことではない。 

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コメント

100人100色のベスト、それが落語の面白さかもしれませんね。私は千字寄席の方に近いです。
小満んはどちらからも低いですね、このヤロ!

投稿: 佐平次 | 2011/09/20 10:45

佐平次様
私も千字寄席に近いです。
処で、著書の「千字寄席」は実際には上記二人の共著ですが、出版の際に「監修:志の輔」と入れさせられたそうです。
それなのに志の輔に対して結構厳しい評価をしているので、比較的公平なのかなと思います。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2011/09/20 11:50

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