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2011/10/14

小沢一郎の「罪」とは何か

小沢一郎というと「政治と金」が問題視されるが、保守の政治家であれば多かれ少なかれ誰もがやっていることで、小沢の専売特許ではない。
建設業界でいえば、公共土木工事入札業者に推薦してやる見返りに、そして実際に入札し受注する度に、議員に金が渡る仕組みだ。
だから実態は収賄だが、これを本格的に取り締まれば国会から保守政治家の大半がいなくなってしまう。それを避けるために「政治資金規正法」がつくられた。
この法律は贈収賄の隠れ蓑だ。
「政治資金規正法」は不正な金集めを行う議員たちを守るための法律であって、これに違反さえしなければクリーンだなんてことは到底あり得ない。

では小沢一郎の最大の罪とは何かというと、それは議会制民主主義を形骸化したことにある。
半世紀をこえる自民党の長期政権のなかで「政治と金」の問題は常態化し、それが時に大きな社会問題として世論を沸騰させ、政権をゆさぶるという状況がくり返されてきた。
このままでは、いずれ政権交代は避けられない。
こうした危機感をもった小沢は、自民党の内部にいては改革が出来ないと判断し、外へ飛び出して別の政党をつくる。
彼が考えた「改革」(実際は「改悪」)案は、次のとおりだ。
1.自民党に代わる政党をつくり二大政党制にする。但し新たな政党は国の基本政策を変えないことを要件とする。早くいえば自民党を二つつくるということ。これなら政権交代しても心配はいらない。
2.少数政党を切り捨て、大政党に有利な「小選挙区制」を導入する。本音を隠すために、選挙区を小さくし同じ党から複数の候補者を立てなくすれば選挙費用は少なくなるという屁理屈をこねた。
3.不正な金集めのスキャンダルが起きないよう、政党の活動費を税金から出させる。これが「政党助成金(政党交付金)制度」である。この法律によって今後は不正な献金はなくなり、クリーンな政治が実現すると説いた。

この小沢一郎の「政治改革」案に、当時のマスコミはこぞって飛びついた。この案を絶賛し、反対する人たちを改革に背を向ける「守旧派」として攻撃した。
マスコミはあげて熱病におかされたように、「政治改革」キャンペーンをくり広げた。
たび重なる政治家の金銭スキャンダルに飽き飽きしていた国民の多くは、このマスコミに踊らされ小沢の「改革」案を支持してしまった。「浅はか」というしかない。
マスコミが小沢を目の敵のようにしていると主張する向きもあるが、過去の経緯をみれば決してそうではない。
その当時、小沢はマスコミの力を最大限に利用していたのだ。

かくして1994年に、小沢一郎が主導した一連の改革案が成立してしまう。
小沢の目論見どおりに少数政党は淘汰された。
議会制民主主義の基本は、国民の意思が忠実に議会に反映されることにある。
政党支持率と院の構成が著しく隔たる今の選挙制度は、民主国家にふさわしくない。
先ず最大野党だった社会党が事実上消滅し、その他の少数党は大政党との選挙協力なしには当選できなくなった。こうなると寄生虫とかわらない。
小選挙区に有利な世襲議員が増え、まるで昔の藩主みたいになった。
比例区があるから救済されるという意見もあるが、自治体を基礎とする選挙区から選ばれないと、政党活動はどうしても衰えてしまう。そこが小沢の狙いでもあった。
二大政党になり政権交代はできたが、どちらへ転んでも変わり映えしない政党が二つ出来てしまった。
野田首相と谷垣総裁との間に政策上の相違はない。
だから近ごろの国会論戦では政策論議はほとんどされず、悪口雑言の応酬と言葉の揚げ足とりだけに終始している始末だ。
政党活動費を税金から負担させる「政党助成金」は、共産主義国家でさえ行われなかった天下の悪法である。国が費用を出すのであれば、政党の国営化だ。
この制度は民主主義にとって自殺行為にひとしい。
政党は政策を訴え、国民の意見や要望を議会に反映させながら、党員や支持者から浄財を集めることを基本にすべきなのだ。
今の制度は、こうした草の根の政党活動を後退させ、ますます足腰を弱める結果となる。政党政治の危機である。
約束だった企業献金は廃止どころか依然として続けており、交付金とのダブルインカムでますます金まみれになってしまった。

小沢一郎の政治資金法違反の件は司法の場で明らかにされる。
しかし小沢の最大の罪である「議会制民主主義の形骸化」は裁判では片付かない。
公正な選挙制度への移行と政党助成金制度の廃止を進めることこそが、小沢一郎の罪を清算することになる。
(文中敬称略)

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