オリンパスの「怪」
オリンパス社が揺れている。
オリンパスといえばカメラメーカー大手で、私も同社のカメラを持っている。
その他ICレコーダーや内視鏡では世界的なメーカーでもある。
その会社に何が起きているのだろうか。
ウッドフォード前社長の解任発表からオリンパス株は急落し、13-20日間で株価は47%も下げてしまったのだ。
2011年10月にウッドフォード社長(当時)は、一連の不透明で高額なM&Aにより会社と株主に損害を与えたとして、菊川会長及び森久志副社長の引責辞任を書簡で促した。
しかしその2日後に開かれた取締役会において「独断的な経営を行い他の取締役と乖離が生じた」として、ウッドフォードは社長就任後わずか半年で解任されてしまった。
疑惑の取引は次の二つである。
一つは、2008年に行われたイギリス医療機器企業ジャイラス・グループ買収の際に、ケイマン諸島に登記されていた投資助言会社「AXAMインベストメント」などに対し、ジャイラス買収額(2117億円)の32%に相当する総額687億円もの報酬が支払われていた。
M&Aのコンサル料金は通常1%から5%が相場とされていて、この支払いは明らかに過大だ。
しかもそのAXAM社は、オリンパスからの最後の支払いの3ヶ月後に、ケイマン諸島における金融業登録料未払いにより登録取消しとなっているというのだ。
一体687億円はどこへ渡ったのか、これが第一の奇奇怪怪。
二つめは、2006年から2008年にかけて、アルティス、ヒューマラボおよびニューズシェフの国内3社を総額734億円で買収しながら、2009年3月期決算にて約557億円の減損処理を行なっていたことだ。
いずれもオリンパス本体の事業とは無関係の企業である。
では、その3社というのはどういう企業なのかというと、WSJ日本版によれば次のようだ。
なお業績の数字はいずれも帝国データバンクによる推計。
「ニューズシェフ」は従業員数約30人の電子レンジ調理容器を扱う会社。11年度業績は22億円の赤字で、売上高は6億円。
「ヒューマラボ」は、シイタケ菌などを原料とした健康補助食品を販売しており、”アージュレス”のブランド名でヘアケアやスキンケア用品も販売している。11年度の税引き前損失は16億円、売上高は9億円。
「アルティス」は資源リサイクル事業を手掛ける会社で、設立は05年で、主に医療施設や産業プラントからのプラスチック廃棄物の再生処理を行っている。 損失は7億円、売上高は2億1000万円。
3社の企業規模や業績からみて、どう考えても734億円の買収金額は不釣り合いで、これが第二の奇奇怪怪。
オリンパス社は一連の買収手続は外部会計事務所と監査役会の承認を得て適正なものであると反論しているが、説得力はない。
日本の大手企業では、こうした不透明な取引が行われることはそう珍しいことではなく、通常は闇から闇に葬られている。
今回のオリンパスの件は、たまたま雑誌「月刊FACTA」が記事にとり上げたのと、社長が外国人で日本企業の風習に従わなかったために表沙汰になったのだろう。
近年、日本企業はコーポレートガバナンスに取り組んでいるが、これはあくまで建前だけで、実態はまだまだであることをオリンパス社が示しているようだ。
【10/23追記】
オリンパスに解任されたマイケル・ウッドフォード前社長が20日、産経新聞と単独会見し、同社の企業買収をめぐる不明朗な支出について「組織的な犯罪だ」と告発した。
「同社の菊川剛会長は会社や国を売っているのと同じだ。
こんな不正を見逃していると日本に海外の資本は来なくなる」と疑惑の徹底解明を求めたとされる。
またコンサル料の支払いに関して同前社長は、「買収額の1%だったはずの相談料が、約35%に引き上げられていた。オリンパスの2年分の利益に相当する金額が誰の手に渡ったかはっきりしない。こんなことが世界を代表する企業で許されるのか」と述べ、支払いに問題なしとする菊川会長らは「意図的にウソをついている」と指弾したとある。
不透明な取引だったことは明らかだと思われる。
いずれにしろオリンパス現経営陣の責任は免れないだろう。
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