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2011/11/12

「立川志らく独演会」(2011/11/11)

11年11月11日、つまり”ピンぞろ”という粋な日に「JTアートホール アフィニス」行われた「J亭落語会秋シリーズ、立川志らく独演会」へ。
次回の冬シリーズに志らくは出ないので、J亭落語会のラスト出演ということになる。
志らくは多い時には月に10回も独演会を演るそうだ。一緒に演ってくれる人がいないからという事らしいが、あまり数多く独演会ばかりしていると有難味が薄れ、やがて鉄拐(てっかい、後述)仙人の二の舞にならないかと余計な心配をしてしまう。今は人気が高いからいいけどね。

私見だが、ほんらい独演会っていうもんは本人から言い出して演るものじゃなかろうか。こういう趣向で独演会を開くので、よければ聴きにきて下さいというのが本当の姿なのでは。
それが昨今は独演会を演らされているというのが実状のような気がする。
予め会が設定されてしまい、噺家自身が「さて今日は何を演るか?」なんていうのは邪道だと私は思う。
この日はそうではなかったと思うけど。

<  番組  >
前座・立川らく兵「千早ふる」
立川志らく「鉄拐」
~仲入り~
立川志らく「紺屋高尾」

らく兵「千早ふる」。下手じゃないが早口で聴き取りにくいのと、表情が硬く陰気な印象を受ける。芸人は愛嬌、男は度胸。

この日の志らく、気合が入っていた。2席ともに良い出来だった。
1席目「鉄拐」。
談志が第一線を引いたいま、このネタは志らくの独壇場といえる。
あらすじは。
中国の豪商、上海屋の番頭が創業祭のだし物として、珍しい芸人を探しに旅に出て仙人境へ迷い込み、襤褸をまとっている老人を見つける。訊けば鉄拐という仙人で、一身分体の術が出来るということで説得し街へ連れ帰る。
口から分身を出す芸は大受けで、寄席に出て人気者になったが、寄席に穴を空けたりして評判が落ち、芸も次第に飽きられる。
別の興行師が仙人を探せと仙境にでかけ、瓢箪の中から馬が出せる張果老という仙人をみつけて連れ帰る。この「瓢箪から駒」の芸はたいそう評判を呼び、すっかり人気が奪われてしまう。
これを妬んだ鉄拐が夜中に忍び込んで、瓢箪の馬を飲んでしまった。馬が出ないので張果老の人気はがた落ちする一方、鉄拐は観客を丸ごと飲みこみ腹の中で馬に乗った鉄拐見せてやる芸を演じて、これが大当たり。
腹の中で喧嘩をしている客がいて、吐き出してみたらこれが・・・。

本来のオチは「李白と陶淵明」だが、この日は張果老にしていた。
李白と陶淵明が大酒のみだったという故事が現在では通用しなくなったからだろう。
落語の中には知識がないと理解できない洒落やサゲが沢山あり、昔の人は博識だったんだろうか。
前に一度志らくの高座を観ているが、その時は時間も短くストーリーを追うだけに終わり、面白みを感じなかった。
この日は時間もタップリとりクスグリが満載。万華鏡のごときクスグリに溢れ、どうやらこのネタはそこが真骨頂であるらしい。
志らくでなくては出来ぬ、魅力ある高座だった。

2席目「紺屋高尾」。
「傾城に誠なしとは誰(た)が云うた」でサゲるこの噺、双子のようなソックリなネタに「幾代餅」がある。細部は少し異なるのだが、最近ではゴチャマゼになってきて、花魁の名前だけが別の同じ噺になりつつある。
恋わずらいを病む紺屋職人・久蔵の病気の相手を訊き出すのは医者か親方の吉兵衛か多いのだが、志らくは親方夫婦にしていた。
職人では相手にしてくれないので野田の醤油問屋の若旦那という触れ込みで、久蔵は返事も羽織の袖を握って「あい、あい」と後ろに頷く稽古をする。志らくは、この返事の形を、後のシーンで紺屋の職人であることを告白する際の「仕掛け」に使った。初めて紺に染まった指を高尾に見せて、あなたに会いたい一心で3年間必死で働いたと告げる。当初は久蔵のウソに怒りを顕わにしてした高尾が、その純真な心情に打たれ、年があけたら女房にしてくれと30両という支度金を久蔵に渡す。
クライマックスでの久蔵の一途な姿を志らくは見事に描き出し、客席の共感を誘っていた。
通常は翌年の3月15日に約束通り高尾が久蔵のもとへ嫁入りする所で終了するが、志らくは後日談を加え、独自のオチを加えていた。ここも不自然さがなく、良いキリだったと思う。

先月から談春、志の輔と立川流の独演会を観てきたが、立川の本流はやはり志らくだという思いを改たにした。

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