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2011/11/10

「炎の人」(2011/11/9)

Honoonohitomainhp11月9日、「天王洲 銀河劇場」で上演中の「炎の人」を観劇。
平日の昼間にもかかららず一杯の入り。
席は後方だったが通路際だったため舞台全体が見えた。前の席のお客の頭が無いとストレスを全く感じぜずにすむ。快適!

作: 三好十郎
演出:栗山民也
<  キャスト  >
市村正親/ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ
益岡徹/ゴーギャン
富田靖子/ゴッホの恋人:シィヌ、ラシェル
原康義/ゴッホの師:モーヴ 
さとうこうじ/ロートレック 
渚あき/モリゾ 
斉藤直樹/ベルナール 
荒木健太朗/学生 
野口俊丞/デニス 
保可南/ハンナ
中嶋しゅう/郵便配達夫ルーラン 
大鷹明良/画材商タンギイ 
銀粉蝶/その妻
今井朋彦/ゴッホの弟:テオドール 

あらすじは。
ベルギーの炭鉱町で宣教師を志したゴッホだったが、炭鉱夫たちの困窮に同情するあまり労働争議にまでかかわり職を追われる。
放浪の果てに生きる道を絵画に求めオランダに移り住む。酒場で知り合った貧しい娼婦シィヌをモデルに絵の修業を始めるが、結婚を口に出して従兄でゴッホの絵画の師でもあるモーヴからは絶縁され、シィヌにも去られる。
生活の糧を失ったゴッホにとって唯一の理解者は実弟テオドールで、これ以後画商店の給料の半額を生涯にわたりゴッホに送金し続ける。
テオドールの助言で花の都パリに向かい、そこで出会った若い印象派の画家たちから新しい刺激を受ける。なかでもゴーギャンの才能には強い憧れを持ち、またゴーギャンもゴッホの才能を認めるが、それ以外の周囲はゴッホの独自の技法と世界を理解できない。
憑かれたように絵を描き続けるうちに、ヴィンセントの精神と肉体はすり減っていった。
やがてパリの喧噪を逃れ、南仏アルルで芸術家のコミュニティ作りを目指すが、参加したのはゴーギャンただ一人だけ。
ゴーガンとの共同生活が始まる。美しい田園風景と親しい友人となった郵便夫ルーランや酒場の踊り子ラシェルに癒されるゴッホ。才能が一気に開花し、この時期に数々の傑作が生みだされる。
しかしゴッホとゴーギャン二人の天才のぶつかり合いは、次第にゴッホの狂気を招くようになり、ついに・・・。

三好十郎のこの骨太の作品は1951年に書かれ、その年に劇団民藝により新橋演舞場で初演される。劇場をチケットを求める観客が二重三重に囲み、10万人を超える大ヒットとなったことが記録されている。
当時の日本は米軍占領下にあり、1949年からの労働運動の盛り上がり、一連の黒い霧事件、レッドパージ、そして1950年の朝鮮戦争の開始と、社会が騒然としていた時代だった。
「炎の人」の幕開けがいきなり炭鉱労働者のストライキから始まる辺りは、当時の世相の反映を感じさせる。
ゴッホと言う人はあまりに純粋無垢で、常に周囲から疎まれ孤立していく。
それだからこそ彼は自分の信念だけを貫くことができたともいえよう。
次第に神経をすり減らし狂気の発作を繰り返して、遂には尊敬していたゴーギャンまで失うことになり、絶望の果てに自ら命を絶つ。
ゴッホは画家の中では多作で、およそ800枚の絵を描いたと言われる。しかし生前に売れたのはたった1枚、それも数千円の金額だったとか。
1890年、37歳でこの世を去るのだが、それから僅か100年経つか経たぬうちに数十億円の値段がつけられる。
生前は誰からも見向きもされなかったゴッホとその作品、それは一体なぜなんだろうと、作者は終幕で問いかけるのだ。
ゴッホの人生を支え唯一の理解者だった弟テオも、兄を後を追うように翌年死んでいく。
ただその夫人ヨーがゴッホ展を開くなどの努力が実を結び、世間から評価されるようになっていくのが、せめてもの救いである。

出演者では、やはり主役の市村正親の演技が抜群だ。まるでゴッホが憑りついたような迫真の舞台に圧倒された。かつて滝沢修の当たり役だったゴッホだが、今やこの人でなければと思わせる。
弟テオを演じた今井朋彦は、ひたむきさが感じられた。
ゴッホの恋人二役を演じた富田靖子はキュートでコケティッシュで、ひたすら愛らしい。
画材商タンギイ役の大鷹明良と郵便夫ルーラン役の中嶋しゅうがそれぞれ渋い演技を見せ、ロートレック役のさとうこうじの怪演と共に印象に残った。

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コメント

滝沢修、懐かしいです。
もっと見ておけばよかった。
これも見てないのですよ。

佐平次様
私も滝沢修のゴッホは観ていなくて、それで今回の観劇となりました。
やはり印象に残るのは「セールスマンの死」でしょうか。

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