劇団大阪40周年記念公演「楽園終着駅」(2011/11/19)
劇団大阪が今年で創立40周年をむかえ、その記念行動の一環として「楽園終着駅」と「そして、あなたに逢えた」の連続公演を、ドーンセンター7Fホールで行った。
11月19日に両方を観劇、先ずは前者の舞台の感想を書いてみる。
創立が1971年というから70年安保の翌年、沖縄返還の前年であり、もう遥か昔のような気がする。世紀をまたいで激動の時代を過ごしてきたわけだが、新劇というジャンルのアマチュア劇団にとっては冬の時代だったろう。
とりわけこの間に強まった経済優先、効率優先という価値観の中で、文化に対する予算が大幅に「仕分け」され、多くの文化芸能団体が窮地に追い込まれている。
その中で40年続けてきたこと自体、賞賛に値しよう。
私の乏しい経験ではあるが、演劇をやろうなどいう人たちは概して理屈っぽく、また自己顕示欲の強い個性的な人間が多い。
そうした人たちを一つの組織にまとめていくのは、並大抵のことではない。
劇団員の多くは人生の半分以上を劇団と共に過ごしことになる。
敬意を表すると同時に、これからの発展を願ってやまない。
【楽園終着駅】
作/近石綏子
演出/熊本一
ストーリーは。
夫に先立たれ、この老人ホームに入所してきた鈴木ふみ(梁礼子)。
そこにはデモの好きな自治会長の広岡耕太郎(神津晴朗)、元建設業の荒木源造(清原正次)、三味線弾きの市村千太郎(松井克義)、その親友で岡山出身の野本与平(徳田昭男)、元呉服商の旦那である増岡信男(又川邦水)、その愛人のマダム村田豊子(芳野真知子)、新しい愛人となった良家の夫人・藤井紫(小林芳子)、威勢のいい元豆腐屋・関根虎松(齋藤誠)、精神に異常をきたしている日高ハル(吉田千恵)、彼女を看護する夫・日高孝彦(杉本進)らが、それぞれ元の人生をひきずりながら生活している。
趣味の会や各種サークル活動がある一方、いがみ合いや喧嘩も絶えない。老いたりといえども男女の愛憎もある。ハルの異常な言動も周囲を苛立たせている。
孤独な源造が規則を破って犬を飼っていたことから他の人たちとの争いが起き、怒った源造はホームを出て行くが・・・。
この芝居の初演は1979年で、劇団東演によって上演されたとある。
戦前、戦中、終戦後の極めて困難な時代を生き抜き、終の棲家を老人ホームでむかえた人たちへ、作者は温かい眼差しがそそいでいる。
ただ高齢化社会をむかえ多くの家庭で老人介護が現実的課題となった今日、この演劇を通して観客に何を訴えたかったのか、必ずしも明確とはいえない。
劇作としてはとても良く出来ていたと感じる反面、何か表面をサラッと撫ぜていったような印象を受けてしまった。
演技陣では源造役の清原正次を始め劇団員らが達者なところを見せていたが、劇団の[シニア演劇大学]出身者の演技にバラツキが目立った。8代続いた東京の呉服商の旦那に訛りがあったりするのは興がそがれる。
大きな舞台での上演では、それなりの演技レベルが求められると思う。
厳しいことも書いてきたが、2時間40分を越える長丁場の舞台、泣き笑いを繰り返しながら楽しませて貰った。
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