「一之輔、隔月こっそり横浜の会」(2011/11/23)
”#6ハマのすけえん「一之輔、隔月こっそり横浜の会」”が11月23日、横浜にぎわい座・小ホールで行われた。
今や時の人となった感がある一之輔、「こっそり」どころか前売りは秒速で完売したようだ。
< 番組 >
前座・立川小春「三方一両損」
春風亭一之輔「茶の湯」
春風亭一之輔「尻餅」
~仲入り~
春風亭一之輔「子は鎹」
前座に出た小春、今日は「道灌」と書いておいて下さいといいながら「三方一両損」。
並の前座なら許されない所だが、小春だし、談志の死去が伝えられた日の高座でもあるし、客席も温かく迎えていた。
未だ練れていないせいかいくつか言い間違いはあったが、啖呵は颯爽としていて良い出来だったと思う。
甲高い声の男の子が喋っているような外観(女に見えない?)も得しているような気がする。
一之輔の1席目「茶の湯」。
恒例の普段着による挨拶で真打昇進が発表された後のプレッシャーが語られ、その続きが1席目のマクラになっていた。
想像だが落語家の世界なんていうものは、他人が出世したり賞賛を浴びたりするのを喜ぶ同業者は、師匠や弟子を除けば、多分いないのではなかろうか。
とりわけ抜擢昇進となれば、飛び越された人やその一門の噺家にとり面白かろう筈はない。
恐らく「針のムシロ」にいる気分だろうし、高座に上がっている時が一番心が休まるというのは本音だと思う。
この先数か月そういう思いをするとなれば気が遠くなるだろうが、これもまた試練。乗り越えたあかつきには更に一回り大きくなった一之輔を見ることが出来よう。
11月初めの九州沖縄巡業で、ロケット団だけが女子学生に人気があったと、これは白酒と同じことを言っていた。よほど面白くなかったと見える。やはり人気というのは気になるのか。
AKB48の握手の集いで、誰も握手しにこないメンバーの気持ちってぇのもこんな感じだろうか。
さて「茶の湯」だが、2,3年前に聴いた時とは全く別物になっていて、クスグリ満載の爆笑版に変えていた。
前に聴いたときは確かにあまり面白くなかったし、それは本人も気づいていたろう。
古典をその通りに演っても受けない。それなら思い切ってデフォルメしてやろう、そう決意したのだろうか。
私は試行錯誤のプロセスとして評価したい。
一之輔の2席目「尻餅」。年末になると時に寄席にかかるネタで、貧乏人が見栄をはって、お上さんの尻を引っ叩いて暮の餅つきを演出するというもの。
家庭で餅つきをするという習慣はとうに無くなっているご時世、ピンと来ない演目になってしまった。
少し間違えるとバレ噺になりかねないネタだが、一之輔はリズミカルに演じ上手に仕上げていた。
一之輔の3席目「子は鎹」、お馴染み「子別れ・下」である。
これも「鎹(かすがい)」だの「げんのう」だのという言葉の説明が必要になる時代になってしまった。若い人はオチの内容が分かるだろうか。
行きががりで妻子と別れ今はすっかり真面目な職人になった熊、道すがらでたまたま出会った子どもが縁で、再びよりを戻すという噺。
熊が過去を反省しながらなお虚勢をはっているという演出もあるが、一之輔は心から改心してひたすら妻子に詫びるという解釈のようだ。
この熊の姿は「子別れ」を通しで演るときは違和感がもたれるだろうが、独立したネタとして演じる場合は不自然さを感じない。
夫婦、親子の情感に溢れた、心温まる一席となった。
さてこれから半年後、一年後に一之輔はどんな姿を見せてくれるのか、楽しみである。
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