原発と警察
東電などによると「天下り」公務員OBは、2011年8月末で51人だった。
このうち顧問は3人で、国土交通省出身が2人、警察庁1人となっている。4月末までは経産省出身の石田徹・元資源エネルギー庁長官が顧問として在籍していたが、4月に原発事故を受けて辞任していた。
嘱託48人の内訳は、都道府県警出身31人、海上保安庁7人、地方自治体5人、林野庁2人、気象庁2人、消防庁1人。電力業界所管の経産省からはゼロという。
意外にも監督官庁である経産省の天下りはゼロだったのに対し、警察関係が計32人で全体の6割以上を占め、突出していたのだ。
ではなぜ東電はこれほどの警察OBを受け入れていたのか、それには理由がある。
どこの大手企業でも必ずといって良いほど警察OBがいる。
その役割はおよそ次の四つだ。
1.警察を通して個人情報の入手
2.事件や事故のもみ消し
3.交通事故処理
4.株主総会対策
日本の労働組合の大半は労使協調路線だが、時として会社の方針に反対する人も出てくる。
会社側としてはそれが個人的なものなのか、それとも組織的な動きなのかによって対処の仕方が変えねばならない。
そこで警察OBが個人情報を調べる。先ず日本共産党の党員やシンパであるかどうか、他の左翼組織に入っていないかどうかを把握する。
組織に関与していたことが分かると、該当の人物に昇進や給与で差別をしたり、無理な配置転換を行ったり、時には適当な理由をつけて解雇したりする。
こうした個人情報は警察でしか分からず、いわば警察OBの飯のタネなのだ。
思想信条による差別も、警察が保有する個人情報を漏えいすることも明らかに違法だが、公然と行われていることはご承知の通り。
年配の方なら、かつて大きな労働争議に警察が介入していたことをご存知だろう。労働運動への弾圧も警察の仕事の一つなのだ。
会社には事件や事故は付き物だ。なかには世間に知られたくないことも多い。
日本のマスコミは事件や事故に対しては、警察発表を鵜呑みにして報道する。そこで企業の警察OBが、公表しないよう警察に依頼する。
世間的には公表されなければ無いに等しくなるわけで、企業としては好都合なのだ。
交通事故処理については説明の必要がないだろう。
私の兄が昔、ある役所の総務部長をしていたが、所轄の警察署で署長が異動すると、その度に宴席を設け接待していたと言っていた。こうしておくと所員が交通事故を起こした時、好意的に措置してくれるのだそうだ。
株主総会についても面白いことがある。総会屋が今年はどことどこの会社に行くというような情報が毎年流れてきていた。
警察OBというのは企業にとって実に有難い存在のだ。
ここまでくれば、なぜ東電に沢山の警察OBが天下りしていたかお分かりだろう。
各地で起きた原発反対運動を抑えるためには、彼らの力が不可欠だった。
地域住民ひとりひとりの個人情報を把握することなど、警察の協力抜きにはできない。
反対派と目されると小さな交通違反まで見逃さず摘発される。警官が頻繁に戸別訪問で回ってくる。そうして反対運動から脱落させる。
もちろん原発とその周辺で起きた事件や事故に対しても、適切な処理がなされたであろうことは想像に難くない。
天下り警察OBこそ、原発推進の陰の功労者なのだ。
そうしてこれからも、その力を存分に発揮し続けることだろう。
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国会の原発事故調査委員会が機動隊や公安を担当する警察庁の警備局長経験者をよべるかどうかで真相究明の本気度がわかるとおもいます。
投稿: Piichan | 2012/03/18 16:14
Piichan様
残念ながら、事故調が警察幹部から聴取することは先ず有り得ないでしょう。
警察の権力はアンタッチャブルですから。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/03/19 10:58