「女の人さし指」(2011/11/29昼)
11月29日昼、新国立劇場 中劇場で行われた「女の人さし指」を観劇。
目的はただひとつ、ナマ若尾文子を見る、それだけ。
そろそろ見ておいた方が良いかなという俳優をここ数年少しずつ見てきて、今回もそのシリーズということになる。
覚悟はしていたが観客の95%は女性、それも年配のご婦人だ。
当然、芝居の作りもその層に合わせたものだろうと、それも覚悟の上。
作:向田邦子
脚本:清水曙美
演出:石井ふく子
< 主なキャスト >
若尾文子/おでん屋『次郎』の経営者:柿沢砂子
熊谷真実/その妹、スーパー社長夫人:米倉信子
三田村邦彦/『次郎』の常連、新聞記者:殿村良介
長山藍子/その妻:殿村みつ子
松村雄基/『次郎』の常連、制作会社長:折口誠
ストーリーは。
おでん屋のカウンターの脇に、ぽつんと置かれた金魚鉢。新聞記者退職後に父が営んでいたおでん屋「次郎」。今は娘の砂子が店を開けていた。
客はママである砂子の美貌につられて来る男ばかり。
その中でも折口誠はご執心で、いずれ結婚を申し込もうとしている様子。
妻がいながら砂子に惚れ、離婚してでも砂子と一緒になりたいと願う殿村良介、砂子も彼には淡い恋心を抱いている。
そこに夫が多額の借財を作ったということで家を飛び出した砂子の妹・信子が、店を手伝うことになる。
そんなある日、殿村の妻・みつ子が『次郎』に現れ、砂子と話し合いに・・・。
キャスティングをみただけで物語と結末が予想できる、そういうストーリーだ。
向田邦子の原作は読んでないが、こんなユルイ小説だったのだろうか。
要は、東芝日曜劇場の演劇版と思ってもらえば分かり易い。
舞台設定も登場人物にもリアリティが無く、これではせっかくの豪華キャストが泣く。作品としては失敗作だと思う。
若尾文子は実に美しい。
亡くなった作家・井上ひさしが仙台で学生だった頃、市内に若尾文子という大変な美人女学生がいるということが鳴り響いていたそうだ。
井上は彼女をモデルに「青葉繁れる」という小説まで書いている、それほど美しかったのだ。
それが見られただけでも元が取れたかな。
長山藍子が舞台出身だけに、さすがに演技が上手い。今回の出演者の中では飛びぬけていた。色香もある。
芝居では悪妻という設定になっていたが、十分に良妻だ。あんな奥さんがありながら、分かれて別の女と一緒になろうなどという男の気が知れない。
熊谷真実を含め、女優陣の演技が光っていた芝居だった。
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