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2011/12/04

「市馬・白酒二人会」(2011/12/3)

12月3日、IMAホールで行われた「市馬・白酒二人会」へ。
この小屋は初めて。光が丘という立地は少し不便だが駅から近くていい。主催もIMAホール。

<  番組  >
前座・柳亭市助「道灌」
桃月庵白酒「替わり目」
柳亭市馬「富久」
~仲入り~
柳亭市馬「粗忽の釘」
桃月庵白酒「幾代餅」

市馬と白酒の二人会、当然トリは市馬と思っていたが白酒だったのは後の仕事の都合らしい。
それなのに仲入り前に市馬が「富久」というトリ根多をかけたことで、白酒は一層やりにくそうだった。2席目のマクラでそれを喋っていたら高座に市馬が登場し会釈していた。すかさず白酒が「なんだ、急ぐんじゃなかったの」と切り返した。
格の違う二人会というのは気を遣うものなんだろう。

柳亭市馬という人は、ついこの間まで中堅の一人と思っていたらアレヨアレヨという間に大看板の仲間入りしてしまった、そういう印象を受ける。
古典落語を丁寧に語ることと出来不出来がなく、いつもガッカリさせることのない高座を見せてくれるのが特徴だ。
反面、飛びぬけて優れた面も見当たらない。持ちネタは多いが、さて代表作となると首を傾げてしまう。
それはご本人も自覚しているだろう。
「唄入り」にしたのは喉が良いという長所を活かすためもあるが、それより自身の高座に「付加価値」をつけたかったのではなかろうか。言い換えればセールスポイントを。
一口にいうと「唄入り本寸法」。

市馬の1席目「富久」、本来は一席目にかける演目ではないことは冒頭に記した通り。
ここでも市馬の長所短所が現れていた。
良かった点は演出が丁寧であること。マクラで大神宮様のお札配りの説明をして、オチの解説をしてくれた。最初の幇間の久蔵と長屋の住人との会話も、久蔵が置かれた立場を分かり易く伝えていた。
欠点は、先ず久蔵が幇間(タイコモチ)に見えなかったこと。このネタの勘所は一にも二にも久蔵という人物の造形にかかっている。座敷のシーンも何もなくて、いかに久蔵を幇間に見せるかがこの演目の成否を決めるのだが、ここが市馬は失格。
もう一つはメリハリに欠けていたこと。旦那の家に火事見舞いに駆けつける場面はもっと緊迫感が欲しい。最後に神棚から当り籤を取り出す場面でも、文楽や志ん生の高座では必ず大きな拍手が沸いたものだ。
そのため全体としては平板に流れてしまった。

市馬の2席目「粗忽の釘」、得意ネタの一つで、いかにも気分良さそうな高座だった。4人の登場人物の造形もしっかりとしていて、粗忽の男が隣家に上がり込み、夫婦の馴れ初めを語る場面は品を落とさず、良い出来だった。

白酒の1席目「替わり目」。
マクラは談志の死去で、「良いニュースなんだか、悪いニュースなんだか」で始まる。大阪で仕事している時に聞き、ニュースをみたら「大物落語家も涙」というタイトルで、出てきたのがヨネスケと三平。「大物じゃないし、落語家でもない」に場内は爆笑。
談志の死に対する落語家のスタンスとしては白酒が正解。大して深い縁があったとも思えない落語家が泣いたり吼えたりという近ごろの傾向はどうも頂けない。
主人公の男は泥酔状態という設定で、酔いっぷりが豪快。散々女房に当たり散らした後に、「お前がなくては生きていけない」と手を合わせる落差が笑いを誘う。
珍しく最後のオチまで。後で市馬が「上り坂の芸」と評していたが、その通り。
陽気で勢いのある芸風で客席を巻き込んでしまう白酒の高座はとても魅力的だ。

白酒の2席目「幾代餅」、古今亭の伝統なぞはどこかに吹っ飛ばしてしまい、派手で陽気な爆笑バージョンに変えてしまった。
しかし細部には神経が行き届いており、例えば「替わり目」の女房は亭主に文句を言いながらも色気は失わず、対してこちらの女房は鉄火風なスタイルだ。
幾代もいかにも太夫職らしい品と風格があり、粗くみえながら押える所は押えているから物語のモチーフが保たれている。
(見かけによらず)この人は頭が良い人だなぁと思う。

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コメント

市馬がマクラなど地をしゃべるときに顔を左右に振るのが気になりだすと、、。

いらっしゃったんですね。
なるほど、市馬は自分の芸を知っているからこそ“唄”なんですね。腑に落ちます。
白酒は、相当頭がいいと思います。それは学歴的なことではなく、落語家としてのクレバーさ、としてですが。
見かけとは違う繊細さで演出も考えているとも思います。
三三とは違う持ち味で、この二人が若手では頭が一つ二つ抜けているように思います。

佐平次様
ああ、言われてみると確かにありますね。
閑話休題。
副会長という職が、落語家・市馬にとって良かったかどうか、疑問に思います。

小言幸兵衛様
結局、市馬の富久は幸兵衛さん流に表現すれば、「ニンじゃない」ということに尽きるんでしょうか。意欲は買いますけど。
今の若手を「三白」時代って名づけようかと思ってるんです。一之輔と兼好を加えると「三白一兼」時代になります。

最近、他の席で白酒を聴きました。声量とフレーズの長さがほどがよく、何よりも本人がその噺を楽しく演じていることが人気の秘密だなと思いました。

>大して深い縁があったとも思えない落語家が
これもやはり言っていました。
往年の「談志ひとり会」は左談次が代演することが多かったとか。
通ったということは白酒も談志ファンだったんですかね~?

福様
白酒という人は心情を語ったり本音を吐いたりすることがないので、談志についてどう思っているのか良く分かりません。
雲助一門会で「実はお互い仲が良くない」なんて平気で言う人間ですから。
「楽しく演じている」というより「楽しそうに演じている」のではないでしょうか。
そうした「自身や他人との距離感」も白酒の魅力の一つだと思います。

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