若旦那、別れるなら今だ!
あの結婚は失敗だった。口にこそ出さないが、皆そう思ってる。
世間には嫁さんを非難する者もいるが、それは違うね。あの人は賢い人だし人柄だって悪くない。ただ家風に合わなかったんだ。若旦那に見込まれてしまい、あの頃は親父さんの商売の都合もあって断り切れなかったんだろうけどね。
何しろあの「家」は古風で、伝統と格式をやたら重んじる家柄だ。それに大旦那の存在が全てであって、家族、親戚から奉公人にいたる全員が大旦那に奉仕するという特別の「家」だ。そこんところを呑み込んでおかないと、あそこの嫁は務まらない。
そこに男顔負けの外回りをこなすような人が嫁に入ったんだから、元々無理があった。いうなれば水と油。だから心の病ってやつに罹かっちまった。
あの病気は環境を変えなきゃ治らないんだってね。いくら医者よ薬よとやったって、ちっとも良くなりゃしない。あの「家」を出なけりゃ永久に治らないと、アタシは思うね。
このままいけば本人はもちろん、あの「家」全体が不幸になる。
ここいらで若旦那も思いきって見切りをつけて、嫁さんと別れるしかないんじゃないかな。
そりゃ辛いだろうけど、「家」を守るためには仕方ないんじゃない。だって普通の家とは違うんだから、そこんとこの分別はつけなくっちゃあ。
近ごろ心配なのは大旦那が病気で時々休むことだ。だいぶ高齢ということもあり、いつまでもバリバリと仕事を続けるわけにもいかなくなる。
これは宿命だから仕方がないけど、いずれ若旦那が大旦那の仕事を受け継がなきゃならない時期がくる。そうなった時は、今の嫁さんじゃもたんぞ。
代替わりしてから別れる切れるは、いよいよ不可能になってくる。
だから大きなお世話かも知れないが、別れるなら今だ。
若旦那だって、今からならやり直しがきく。
その方がお互いに幸せになる。
世間体とかなんとか、昔と違って今どきは、親類も周囲も得心してくれると思うよ。
どこかの婆さんが、長男を勘当して次男を跡に直せなどと喚いているようだが、それじゃこれからのあの「家」の秩序が保てないだろう。
家系に男の子が少ないので、将来は「女主人」のことも頭に入れておきたいと番頭が言い出しているらしい。
それも時代の流れかも知れない。
ただここで考えておかなくちゃいけないのは、あの「家」に嫁のきて、婿のなりてがいなけりゃあ、いずれ家系は絶えてしまうってことだ。
そりゃ誰でもよけりゃ相手はいるだろうが、そうはいかない。
あれだけの格式のある「家」だ。相手もそれ相応の家柄から貰うことになる。
そうした良家の息子や娘たちはふだん自由で良い暮らしをしているわけだから、好き好んであの「家」に入りたいと思うだろうか。
嫁に来たい婿に入りたいという若い男女が、門前市をなすような状況をこさえていくにはどうしたら良いか、そこを考えておかないと、どんなにいい制度を作っても絵に描いた餅になっちまうと思うよ。
色々言いにくいことも言ってきたけど、気を悪くしないでね。
これでも本気で心配してるんだから。
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