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2012/01/15

鈴本演芸場正月二之席・昼(2012/1/13)

前座・三遊亭ございます「子ほめ」
<  番組  >
古今亭菊六「権助提灯」
ストレート松浦「ジャグリング」
古今亭駿菊「寿限無」
柳家三三「加賀の千代」
ぺぺ桜井「ギター漫談」
桂南喬「浮世床」
金原亭馬生「紙入れ」
ダーク広和「奇術」
柳家喜多八「小言念仏」
-仲入り-
ロケット団「漫才」
入船亭扇辰「紋三郎稲荷」
橘家文左衛門「道灌」
林家二楽「紙切り」
古今亭菊之丞「妾馬」

新年の寄席は初席をはずし、顔ぶれが充実している鈴本演芸場正月二之席から参戦。昼夜行く予定で1月13日は昼の部へ。代演も休演もないのが良い。
平日の昼席だったが団体が入っていたとはいえ一杯の入り。客は正直だ。
番組表でお分かりのように、トップの菊六からラストの菊之丞まで殆んどの出演者が得意ネタを披露し、とても充実した中席だった。
ネタをみても独演会や落語会などの演目と変わらない。近ごろの独演会は2席というのが多い。確かに口演時間は長いが、中には無駄なマクラで時間を稼いでいるとしか思えないケースも多く、この日のように本題で15分演じてくれた方がむしろスッキリしてて良いと思えるほどだ。
間延びしたマクラを振られると噺家も客もダレてしまい、肝心のネタに影響するからだ。
例えばこの日の出し物で、
三三「加賀の千代」
馬生「紙入れ」
喜多八「小言念仏」
はいずれも嘗て彼らの独演会で聴いている。
出来はどうかといえば、この日の高座は勝るとも劣らずだったと思う。
落語好きにも色々なタイプがあり、マクラを楽しみにされている向きもあるが、私の場合はネタしか関心がない。
そうなると寄席の方が断然お得感があるわけだ。


芸能評論家らがしばしば、名人上手が顔を揃えていて昔の寄席は良かったなどと書くが、あれは額面通りに受け取れない。
文楽と志ん生と圓生の三人が顔を揃えて実に素晴らしかったなどと書いているのを眼にするが、通常の寄席でこの三人が揃うことって、いったい何回あっただろうか。たまたまそんな僥倖に浴した人は何人いるだろうか。
私が物心ついた頃は、既に文楽も志ん生も名人会やホール落語、ラジオ出演が中心で、なかなか普段の寄席には出て来なくなっていた。
今と違って出演者が事前に分かるわけではないし、休演や代演も事前には知らされなかった。その日寄席に行ってみなければ誰が出るか確認できない。
寄席の数が多いのに噺家の数が少なかったから、いきおい相当にひどいレベルの人まで高座に上がってくる。
だからいつも素晴らしい寄席の高座を観ていたという人は、評論家か席亭や噺家と特別のつながりのある特権階級の人か、余程のコアのファンだったか、そうとしか思えない。
今たしかに名人はいないが、寄席全体としては現在の方が充実していると私は思う。

寸評をいくつか。
先ず菊六「権助提灯」、前にも書いたがこの人はミスがない。きっと稽古熱心なのだろう。そして上手い。もう何年も真打をしているような風格さえ漂う。
未だ女形が少し硬いのが欠点(本妻と妾の演じ分けは不十分)だが、それはおいおい修行を積むとして、旦那と権助の人物像は良く出来ていた。
昼のこの出番は朝太と交互で夜は一之輔と真打昇進予定者がフル回転。これから彼ら3人を全面に押し出そうという意図がありあり。
南喬「浮世床」、これぞ寄席の落語だ。
この日は「夢」編だが、これも演じ手によって細部の演出が異なる。
芝居小屋で出会う女は「年増」というのは共通だが、20代半ばという人もいれば、この日の南喬は32-3と少し年齢を高くしていた。
芝居茶屋の2階で待つのも最初から一人という設定もあれば、南喬ではお付きの女が同席していたが男が現れると入れ替わりに席を外すことにしている。
男が2階で小便をするシーンは入れないケースもあるし、外壁に向かって富士山を描くという演出もあるが、南喬では灰皿にためるという設定。
床屋で男を起こす時も、「半ちゃん一つ食わねえか」と声をかける例が多いが、南喬は「邪魔だから起きろよ」で起こしている。
定番といえるネタだが、女中が二階へ銚子と猪口を運んで来る時の「トントンテチンチロリン、トントントンテチンチロリン・・・」の凝音が正月の席らしい華やいだ気分にさせていた。
食いつきの後の扇辰「紋三郎稲荷」は望外だった。
最初は座興で稲荷になりすました侍が次第に引くに引けなくなっていく表情が巧みで、「上手い!」と声を掛けたくなる。
この1席だけでも、来たかいがあったと思わせてくれた。
トリの菊之丞「妾馬」、古今亭流の演出をベースにして、酔った後の八五郎のセリフでほろりとさせてから陽気に都々逸を唄いあげ、目出度く打ち上げた。
新年の寄席は二之席までが正月、ここでトリを取るというのは特別の意義がある。
鈴本でいえば圓歌、正蔵、小三冶、喬太郎とこの菊之丞の5人となるわけで、大看板の仲間入りをしつつあるということだ。
これも又目出度い。
間に挟まった色物も程よく。

この日観られた方は幸せ。
来られなかった方は残念でした。

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コメント

残念でした^^。
扇辰、よかったでしょう!

投稿: 佐平次 | 2012/01/15 09:53

佐平次さんのブログを見てましたので、マクラから来たなと思いました。
この出番でこのネタをかける扇辰の了見が良いですね。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/01/15 10:04

よだれの出るような席ですね!
なかなかこれだけの顔ぶれ、そしてそれぞれの代表作が並ぶことってないでしょうねぇ。
扇辰はますます磨きがかかってきたと思います。
さん喬が喬太郎のことを厳しく評価するのは、同期の扇辰の成長を意識してのことかもしれません。

投稿: 小言幸兵衛 | 2012/01/15 20:04

小言幸兵衛様
新年早々真に結構な中席でした。
やはりハナの菊六の出来に、全体が引っ張られたのではないかと思っています。
扇辰は益々上手くなりました。
2,3日後には夜の部に行く予定で、こちらも楽しみにしています。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/01/15 21:56

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