« 原発事故の「刑事責任」 | トップページ | 「政党助成金」は直ちに廃止を »

2012/01/22

「十一ぴきのネコ」(2012/1/21)

1月21日、紀伊国屋サザンシアターで公演中の「十一ぴきのネコ」を観劇。
どうも子どもが沢山いると思ったら「子どもとその付添いのためのミュージカル」という副題が付いていた。事前に知っていたら来場しなかったかも。
2008年のこまつ座の「人間合格」以来、井上ひさしの芝居にはまってしまい、これが16作目。こうなったら全部観てやれという気持ちである。
「11ぴきのネコ」は、馬場のぼるが1967年に発表した絵本。11匹のネコたちが食料を求めて旅をするという物語で、1969年に井上ひさしの脚色でNHKにて人形劇として放送。
1971年には、劇団テアトル・エコーでミュージカル「11ぴきのネコ」が初演。
1989年には戯曲に改訂が加えられて、こまつ座で「決定版 十一ぴきのネコ」として上演されている。
今回は初めてミュージカルの演出を手掛ける長塚圭史の判断で、1971年のテアトル・エコー版の脚本を使用している。
本舞台は「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」シリーズの第一回目となる。
・・・という事を芝居が終わってから知った。
昔から予習をやらない性格というのは変わりませんね。
復習はしましたよ。だって「復習するは我にあり」って言うでしょ。

作 :井上ひさし
演出:長塚圭史
音楽:宇野誠一郎、荻野清子(pf)
<  キャスト  >
北村有起哉/天晴れ指導者のにゃん太郎
中村まこと/穏健柔和仏のにゃん次
市川しんぺー/旅回りのにゃん蔵
粟根まこと/徴兵のがれのにゅん四郎
蟹江一平/軍隊嫌いのにゃん吾
福田転球/木天蓼のにゃん六
大堀こういち/逆恨みのにゃん七
木村靖司/猫撫で声のにゃん八
辰巳智秋/猫舌のにゃん九
田鍋謙一郎/紙袋のにゃん十
山内圭哉/猫糞のにゃん十一
勝部演之/鼠殺しのにゃん作老人

物語は、腹を空かした11匹の野良猫が”にゃん作老人”の教えられるまま、大きな湖に棲む大きな魚を求めて旅に出る。
苦難の末ようやく大きな魚を仕とめ、困っている野良猫たち全員に分けようと申し合わせするが、翌朝になったら骨だけになっている。皆がこっそり夜中に食べてしまったのだ。
湖の辺で野良猫たちの共和国をつくることになる。経済成長の結果、誰もが豊かになる。
その反面、かつての連帯感は失われ各自が自分の利益のために行動するようになる。やがて不気味な暗い「翳り」が忍び寄り・・・。

ストーリーを読めば分かるように、これは児童劇ではなく完全に大人の芝居だ。
腹を空かせた猫たちが協力して大きな魚を得るところは終戦後の日本の状態を、共和国以後は日本の高度成長期を示しているし、終幕近くではバブルとその崩壊の時代を暗示しているようだ。
11ぴきの野良猫もそれぞれかつては飼い主がいたのだが、様々な理由で手放され野良化したものだ。
その中で「にゃん四郎」と「にゃん吾」は米軍基地の中で飼われていたが、世話をしていた二人の米兵がベトナムの戦地へ行くのを拒否したため収監され野良猫になった。ベトナム戦争と反戦運動の時代を象徴している。
初演の1971年からは、直前の学生運動の盛り上がりと挫折という時代背景を考えずにはいられない。恐らく井上自身が日本の将来に対して「暗い翳」を感じていたに違いない。
しかし芝居の終幕では悲劇には終わらせず、「にゅあん十一」が主題歌である「十一匹のネコが旅に出た」を歌いながら去って行くというシーンは、どんな時代になっても「どっこい生きてく」庶民のしたたかさに未来を託しているかに見える。

芋上ひさしの初期の作品は中期以後に比べ猥雑でエネルギッシュだ。
作者の思いや思想もストレートで分かり易い。そこが魅力だ。
反面、劇作としての完成度が低く、そのぶん感銘度は薄くなる。
内容を理解するのは子供たちにとって少し難しすぎると思われるし、大人たちはやや物足りなさを感じたのではなかろうか。

出演者では主役の北村有起哉の好演が目立ち、山内圭哉が儲け役で光る。
それより全員が実に生き生きと楽しそうに演じていて、その思いは客席にも十分伝わっていた。
少なくとも劇団四季の「キャッツ」(仄聞だがブロードウェイの舞台とは別物とか)よりは、こちらの方が楽しかった。

公演は東京、山形、大阪で2月12日まで。

|

« 原発事故の「刑事責任」 | トップページ | 「政党助成金」は直ちに廃止を »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/82117/53794810

この記事へのトラックバック一覧です: 「十一ぴきのネコ」(2012/1/21):

« 原発事故の「刑事責任」 | トップページ | 「政党助成金」は直ちに廃止を »