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2012/01/04

新春は「一之輔・菊六」(2012/1/3昼)

正月3日、博品館劇場で行われた”rukugo オルタナティブ vol.11 「若武者はしる」”昼の部へ。
今年真打に昇進する一之輔と菊六という「時の人」2人が出演するお目出度い会だった。
正月の三日に二ツ目の会が銀座で開かれるなぞ一昔前なら想像もつかなかった。世の中変わってきた。
「あたしの誕生日だってぇのに、どうして落語になんか行くの。」と、すがる女房を振り払い、「とめねえぇでくれ、これが落語道の渡世なんでござんす。」(音羽屋!)と出かける。
タイトルの若武者ウンヌンは、ネタ出し(*印)の演目が侍に因んでいるからとか。
客席には今日のゲストである和田正人ファンと思しき一団がいて、チョット違った雰囲気。

<  番組  >
古今亭菊六「高砂や」
和田正人「棒鱈」
春風亭一之輔「三方一両損」*
~仲入り~
春風亭一之輔「初天神」
古今亭菊六「夢金」*
座談~出演者全員

一列目の上手裾にいたので出番から良く見える。
いかにも真面目そうな表情の菊六が登場してくる。羽織より袈裟が似合いそうな雰囲気で噺家というより求道者を思わせる。
2席を聴いたが動作が丁寧なのと、非常に完成度が高いのが特長だ。
例えばもう一人の一之輔やいま人気の白酒の高座では、必ずいくつかミスがあるが、菊六にはそうしたミスは一切ない。
喋りも人物の造形もしっかりとしており、そのため1席目「高砂や」も本来は軽い噺なのだが、菊六が演ると重々しく感じる。
そこは落語家として利点にもなるが、時には欠点にもなるのではなかろうか。
サラクチでしかもトリを控えていたのだから、もう少し軽く演じても良かったように思う。
2席目「夢金」は良い出来だった。動作が丁寧なだけではなく動きがキレイなのだ。
船頭の舟の漕ぎ方もそうだし、頬被りを外すシーンでは先ず悴んだ指を息で温め、一本一本指を開かせてゆき震える手でぎこちなく頬被りを取る。この所作でどれほどひどい雪と寒さの大川だったかが頭に浮かんでくる。
船頭が侍に酒手をねだる場面では、菊六の端正な顔が卑しく変わっている。
サゲもあっさりとしていて良かった。
この人の高座の品は、後から一之輔が学習院出身で自宅は自由が丘、海老蔵とは友達だとからかっていたが、そういう育ちの良さから来るのだろうか。
あるいは圓菊一門は概して品が良いのでその伝統からか。
玄人受けする噺家だと思う。

対する一之輔、雑草のような生命力と生活の知恵、その両方を備えているから「鬼に金棒」、向かうとこ敵なしの快進撃といった風情。
1席目の「三方一両損」では、胸のすくような啖呵を聴かせる。こういう啖呵が切れるというのは落語家として大事な資質だ。
例えば名人と言われる文楽や圓生といえども、なかなか胸のすくような啖呵というわけにはいかない。近年では代表的なのは先代・柳朝、志ん朝、談志といった辺りになるが、いずれも後世に名を残す人たちだ。
2席目「初天神」はエンジン全開で、父親に食い物をねだる子ども傍若無人ぶりがすごい。父親を指さして「助けて、人攫いです」と周囲に叫ぶ。「違い違う、これは俺の子だ」というと、「知らない人です」と泣きだす。これじゃあ買わないわけにはいかない。そこで飴屋が「いい腕してるねぇ」と一言、これが効く。
今日は七分で未だこんなもんじゃないと語っていたが、この人の後はやりにくいだろう。
「天才型」の一之輔vs.「努力型」の菊六の対決、さてこれからどうなるか、お楽しみ。

ゲストの和田正人「棒鱈」、素人芸としては良く出来ていた。きっと演技も上手いんだろう。
ただこうした落語会で俳優に落語を演らせるという企画はどうも感心できない。
正月でもあり、挟むなら音曲など色物だろう。
何を目的としているのかよく分からぬ「座談」は蛇足。

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コメント

ふたりの芸だけを聴きに行きたいです。
柳朝の啖呵、言い立て、いいですねえ。

投稿: 佐平次 | 2012/01/04 11:16

佐平次様
後で一之輔が、今日はアウェイだったけど受けて良かったと言ってました。俳優目当てに来た客が落語の面白さが分かったとしたら、それはそれで効果があったということでしょうが、コチトラにはどうも・・・。
柳朝、結構でしたね。「大工調べ」なんざぁ天下一品でした。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/01/04 17:13

>玄人受けする噺家だと思う。
まったくですね~。
遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。
菊六の「やかん」「やかんなめ」(二部卒業でもなかろうに)で大笑いしてしまいます。
頭髪の青々とした様子といい、一休さん(アニメ)のうん十年後という感じで・・・
とにかく楽しみな存在です。

投稿: 福 | 2012/01/09 21:21

福様
こちらこそ宜しくお願いします。
菊六、近頃では珍しいくらい緻密な高座で好感が持てます。
全生時代の圓楽に似ている(風貌は別として)のかなと思いました。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/01/10 07:38

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