原発事故の「刑事責任」
2001年に起きた兵庫県明石市の花火大会事故で、検察審査会の議決に基づき業務上過失致死傷罪で強制起訴された元明石署副署長榊和晄(さかきかずあき)被告の初公判裁判が1月19日行われた。
この事件では明石署の地域官ら5人に対しては既に有罪判決が確定しているが、元署長は「現場の混雑状況を把握できる立場だったので、警察官を向かわせれば事故を防げた」として刑事責任を追及されている。
2005年4月のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長の山崎正夫被告の判決が、1月11日11日、神戸地裁であった。
山崎前社長は安全対策を統括する鉄道本部長だった当時、事故現場カーブが半径600メートルから304メートルの急曲線に付け替えられた。翌春のダイヤ改定で現場を通る快速電車が増加するなどして事故の危険性が高まったのに、自動列車停止装置(ATS)の整備を部下に指示しなかったとして起訴されたものだ。
判決では「現場カーブで事故が起きる危険性を認識していたとは認められない」と判断し、無罪(求刑禁錮3年)を言い渡した。
事故をめぐっては、山崎前社長の上司だった井手正敬(まさたか)元会長ら3人の歴代社長が検察審査会の議決を受け、同罪で強制起訴されている。
いずれも経営者としての管理責任が問われたものだ。
ひるがえって昨年3月の東電福島第一原発の事故であるが、地震や津波といった自然災害から引き起こされたとはいえ、あれだけの重大事故と住民への被害が拡大した背景には数々の人為ミスや意図的隠蔽が重なったことは明らかであり、人災としての側面が強い。
そうした組織や責任者らに対する刑事責任が追及されないのは一体どうしてなのだろうか。
思い当たるだけの容疑を列記すれば、
・原発プラント設計上のミス
・原発プラント建設時の瑕疵
・プラントの保守点検の過失
・プラント運転の過失
・以上を統括すべき東電経営者の管理責任
・原子力安全・保安院による情報操作と隠蔽
・首相、官房長官、経産相ら政府首脳(いずれも当時)による情報操作と隠蔽
事故に直接的に関与したと思われるだけでも、かなりの数に達する。
事故につながる過失や被害の拡大を引き起こした行為が明確であれば、全て刑事責任を問うべきではなかろうか。
これは二度とあのような事故を起こさぬようにするためにも大事なことだと思う。
この種の事故では、JR西日本や明石警察署のケースと同様に先ず関係者を起訴し、裁判を通して事実を明らかにさせるという方法もあり得る。
もし結果として過失がないことが明確になり無罪となれば国民も納得するだろう。
時間が経てば証拠隠滅の恐れや時効の問題も生じるので、刑事責任の追及は急がれる。
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