春団治の芸に酔う「#32上方落語会」(2011/2/11)
2月11日に横浜にぎわい座で行われた第32回上方落語会へ。
暦の上では春の時期、大師匠を始めとして名前が春に因んでいる噺家を集めての会という趣向か。
落語は聴くものではなく観るものだというのが私の意見だが、上方落語は特にそういえる。ライブでないと面白さは分からない。
お目当てはもちろん春団治。
< 番組 >
桂咲之輔「鷺捕り」
桂壱之輔「善哉公社」
桂梅團治「鬼の面」
~仲入り~
笑福亭笑子「パペット落語・化物屋敷」
桂春團治「野崎詣り」
先ずはトリの春団治、御とし間もなく82才。
ライブで初めて観たのだが、上方落語の重鎮らしい佇まいと上品な色気。若いころはよほど祇園辺りで修行してこられたのだろう。そうでなけりゃ、あれだけの色気は出て来ない。
噺は大阪から野崎詣りに出かけた二人が船に乗り、土手を行く人に口喧嘩を売ると言う他愛ない筋書。演者の話芸だけで聴かせるネタで、こういうのが上方ではトリ根多なんだろう。
春団治のひとつひとつの所作が実に綺麗だ。例えば日傘をさして歩く姿など観ていて惚れ惚れする。小便をする仕草さえ粋なのだ。
初夏の野崎の風景が浮かんでくる。ふと、人形浄瑠璃「新版歌祭文 野崎村」を思いだした。そういえば春団治の出囃子も「野崎」だ。
そして何より会話の軽妙洒脱さ、それほど面白い事を喋っているわけではないのに、客席は笑いの渦。
久々に名人芸を見られたという満足感で一杯になり、この1席だけで来た甲斐があった。
梅團治「鬼の面」、マクラで語っていたようにお店噺というジャンルが落語にはあるが、ほとんどが男の噺で女が主人公のネタというのは少ない。
お店の子守りっこをしている少女が、母恋しさに顔がそっくりなオカメの面を箱に入れて毎晩話しかけていると、それに気付いた主人が悪戯気を起こし、オカメの面を般若と入れ替えてしまう。そうとは知らない少女は顔の形相が変わったのは母親が病気で苦しんでいるのだと思い込み、店を飛び出して実家に戻ってしまう。勘違いが分かって父親が娘を伴って店に戻り、店の主人は平謝り。
父娘が途中で拾った(詳細は略)200両も手に入れるおまけもついて目出度し目出度しの物語。
大阪の大店の情景や、面を売る店の主人の優しさや親子の間の情が表情たっぷりに描かれ、心地よい高座だった。
他に咲之輔「鷺捕り」、壱之輔「善哉公社」の若手二人も勢いのある高座を見せてくれた。特に壱之輔は芸がしっかりしている。東京の一之輔と張り合って欲しい。
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コメント
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拙ブログに書いたような事情でチケットを無駄にしました。実に悔しい!
投稿: 佐平次 | 2012/02/12 11:51
佐平次さんの分まで楽しんできました。
当方もそういう訳で、しばらくブログを休む予定です。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/02/12 12:54