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2012/03/11

春風亭一之輔独演会(2012/3/10)

3月10日、横浜にぎわい座で行われた「春風亭一之輔独演会」へ。ゲストに三三を迎え一杯の入り。
意外だが一之輔はにぎわい座は初めてだそうで、今までは専ら地下の「のげシャーレ」での公演だった。昇進と共に会場も下から上へ移動というわけだ。
21日からいよいよ真打昇進披露興行が始まるが、今やこの話題は落語界の大きなイベントになりつつある。
定席と国立での50日間の興行とは別に、各地のホールでの興行も計画されていて、そちらには落語協会以外の噺家もゲスト出演する。
既に鈴本と末広亭の出演者は公表されているが協会側からは最高顧問と副会長、後は師匠を始め春風亭(林家)一門のメンバー、つまり彦六の正蔵門下が顔を揃える。注目の会長・小三冶の名はない。
この日も会場で本人が前売りチケットを宣伝していたが、昇進披露パーティも終えて気分は最高に昂ぶっているに違いない。

<  番組  >
前座・春風亭朝呂久「のめる」
春風亭一之輔「あくび指南」
柳家三三「妾馬」
~仲入り~
春風亭一之輔「不動坊」

前座の朝呂久は三田落語会ではレギュラー前座並みの扱いを受けてきたが、回を追うごとに上達していくのが分かった。今秋の二ツ目昇進は順当なところだ。独自のクスグリも入れた落ち着いた高座でセリフの間も良い。
今後は芸人としての見栄えにも気を配って欲しいところだ。

ゲストの三三、軽いネタかと想像していたが「妾馬」をタップリ。自分の会より気合が入っていたように見えた。
路上でお鶴を見初めた殿様の家来が大家を訪ね、娘を奉公に出すよう鶴の母親と兄の八五郎に承諾を求めるという演出が目新しい。八が長屋の月番として井戸の釣瓶の修理をしているという演出も独特だと思う。
この間のヤリトリで、彼らが住む長屋の雰囲気が表現されていた。
八が屋敷を訪ねる場面では、八五郎の傍若無人ぶりと田中三太夫の狼狽えぶりが強調され、面白く仕上がっていた。
ただ八も三太夫も殿様もセリフのリズムが同じで、「らしさ」に欠ける。
殿が赤ん坊を祖母に合わせるという約束をするという演出と共に、やや疑問の残るところだ。

一之輔の1席目「あくび指南」。
何の役にも立たない「あくび」を指南する、それを金を払って稽古に行く男、数ある落語のネタの中でもこれほどバカバカしい噺は他にあるまい。
演出は大きく二つに分かれ、一つは夏の昼下がりの座敷でノンビリと欠伸を教えるという設定で、これぞ倦怠の極み。あまりの退屈さに客席のお客が思わず欠伸をすると、噺家がすかさず「ああ、お客さんは器用だ」で落とす。
もう一つは志ん生に代表される爆笑版で、途中で「濠からつーっと吉原へ上がって・・・」と脱線して指南番を困らせる。
一之輔の演出は後者で、これも近ごろの傾向で欠伸の稽古の目的が稽古所の前で掃除していた美女を目当てという設定で、お目当ての美女が実は指南役の奥方だったという風にしている。
表情や動きもオーバーにして客席を沸かしていたが、私の好みは前者だ。
季節も夏のネタで隅田川に浮かぶ小舟の上に乗った気分にさせてくれる。そういう演出が本来ではなかろうか。

一之輔の2席目「不動坊」。
このネタも上方から移植したもので、いくつか型がある。
一之輔は主人公の吉公が大家に「お滝さんは、あれはおれの女房なんだと、不動坊に貸してあるんだと・・・」と語らせていたので、先代小さんの型を踏襲しているようだ。
端折る所はザックリ端折り、笑わせ所はしっかりと演じて工夫されており良い出来だったと思う。
ただ最近の一之輔の高座ではやたら大声を出すシーンが多いように思う。
時期が時期だけに気負いも当然あるのだろうが、本来の惚けた味を殺しているようにも思えるがどうだろうか。

一連の披露興行を終えた後の一之輔がどう変わるのか、それも多いに楽しみだ。

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コメント

地下の秘密倶楽部“のげシャーレ”から、ついに一之輔が芸能ホールに昇格ですね!
先輩の白酒が歩んだ道でもありますが、これまで地下の会のチケットは、発売後すぐに売り切れでしたから、今後芸能ホールでの会が継続的に開催されるのなら大歓迎です。
チケット争奪戦になるでしょうが、志の輔や談春、志らくの会よりは入手しすいはず^^
にぎわい座の立川三人衆の会は、私には理解できないバブル状態が続いていますからね。
三三は、先輩として結構気合いの入った高座だったと察します。
披露興行の後の一之輔、本当に楽しみです。

小言幸兵衛様
一之輔はむしろ披露興行が終わってからが勝負でしょう。
来年の今頃、現在のような人気を保っているかどうか、芸風がどのように変化しているかどうか、そこを見守りたいと思います。

「あくび指南」をHOME-9さんがおっしゃるようにやるのはさすがの一之輔にもまだ無理でしょう。「不動坊」は聴きましたがちょっとくどすぎるというか、力が入りすぎていたような感じがしました。
結婚を前にして湯に入っての妄想が面白いのですが長すぎた、この噺(に限らず?)は幽霊の失敗のところだけ思いっきり笑わせてくれればいいのだと、まあ、これは私の好みの問題ですが。

佐平次様
今の一之輔に気負うなという方が無理かも知れません。
「不動坊」については時間が押していた関係からか適当にカットしていて、それが良かったと思います。

>最近の一之輔の高座ではやたら大声を出すシーンが多い
いつぞや「大工の嬶が」って、声を張り上げていたのを思い出しました。
また、けっこう笑いが取れていまして。味で勝負するのか、爆笑でいくのか、葛藤があるんでしょうか。

三三「妾馬」は、以前、寄席で前半の部分を聴いたことがありますが、ほのぼの時代劇の一景を見るようでした。

福様
この3年位をみても一之輔の芸風は変化してきています。これからも変わって行くのでしょうが、素材からすると「面白い落語」より「上手い落語」を目指して欲しいと思っています。
三三の高座はご指摘の通りです。

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