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2012/03/15

雲助一門「双蝶々・通し」(2012/3/14)

3月14日、日本橋劇場で行われた「五街道四門三月双蝶々初夜」へ。歌舞伎風のタイトルをつけているが要は雲助一門による人情噺「双蝶々・通し」公演。
この演目は三遊亭圓生による録音がよく知られている。
全編2時間近い長講となるため、通常は「下・雪の子別れ」のみが高座にかかることが多い。
最近では雲助や弟子の馬石による通し口演が行われていたようだが、一門4名によるリレー口演は初の試みだろう。
オリジナルは圓朝作とされる。
なお歌舞伎に「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわのにっき)」という芝居があるが全く別物。ただタイトルの「双蝶々」は芝居と同様で、長兵衛と倅・長吉の二人の「長」から名付けたもの。

<  番組  >
桃月庵白酒「長屋」
蜃気楼龍玉「定吉殺し」
五街道雲助「権九郎殺しー芝居掛ー」
~仲入り~
隅田川馬石「雪の子別れ」

ストーリーは。
棒手振り八百屋の長兵衛の倅・長吉は、小さいころから手に負えない悪。
継母のお光に小遣いをせびり、断られると大暴れ。酔って帰ってきた長兵衛には母親から虐められていると告げ口し、お光を殴らせる。
仲裁に入った大家が、長吉が普段から盗みをはたらいていると告げる。事実を知った父親は長吉を真っ当な人間にするため黒米問屋・山崎屋に奉公に出す。

奉公先で改心したかに見えた長吉だったが、十八のとき悪友と組んで盗みを働いているところを、不審に思って付けてきた番頭の権九郎に目撃されてしまう。
店に戻った番頭は長吉に盗みを白状させるが、主人には内緒にする代わりに、花魁を見受けする金五十両を主人の部屋から盗み出せと強要される。
まんまと金を盗み出すが小僧の定吉に見咎まれてしまい、その場で定吉を絞殺する。

約束の場所で長吉は番頭と出会うが、むざむざ金を渡すのが惜しくなり番頭を殺して奥州へ逐電する。

長兵衛夫婦は倅の悪事を知り、世間に顔向けが出来ないと長屋を転々とし、本所の裏長屋に越したころには、長兵衛は腰が立たない病になる。
貞女のお光はお百度詣りと偽って内緒で袖乞いをし、ようやく食い繋ぐ日々。
寒風吹きすさぶ中で袖を引いていると、一人の若い男が身の上を気の毒がり三両恵んでくれる。
眼と眼を合せると、それが別れた長吉。今は石巻で魚屋を営んでいるが、一目父親に会いたくて江戸へ出てきていたのだ。
長吉はお光に連れられ父を見舞う。長吉は長年の親不孝を詫びて五十両という金を渡すが、長兵衛はそれよりきっぱりと悪事から足を洗えと諭す。
お互い言い争いになるが、長兵衛は最後は長吉をゆるし、涙ながらに今生の別れを告げる。
雪の降る中、長屋を去った長吉だったが、吾妻橋の手前で追手に取り囲まれ御用となる。

改めて4人並ぶと、やはり白酒だけが異質であることが実感される。語り口からして師匠の芸風とは大きく異なる。
普段は上手さの光る白酒だが、こうした人情噺になるとむしろ馬石や龍玉より劣る感じさえする。
そういう意味ではトップバッターに起用したのは当りだった。
得手不得手は誰にでもある。滑稽噺と人情噺両方が上手いというのは落語家として理想だろうが、実際には数少ない。近年では圓生が第一人者、現役では雲助ぐらいではなかろうか。

龍玉の高座は、番頭が長吉の悪事をあばきながら、引き換えに盗みを強要するシーンに迫力がある。着実に力を付けてきているのが分かる。
長吉が小僧を手拭いで絞め殺す場面は、ゾクッと鳥肌が立った。
この人が一番師匠の芸風を継いでいるような気がする。

雲助は芝居仕立てで、番頭・権九郎殺しのシーンのみ演じた。
自ら振り付けたと思われる所作は息を呑むほど凄惨で、正に雲助の独壇場。
最後は鮮やかに六方を踏んで花道を駆け抜ける。お見事。

トリの馬石、最後を締めくくるに相応しい好演。
長吉が芯からのワルではなく、境遇のせいで悪事に走ったという人物設定に説得力がある。
長兵衛と長吉父子が最後まで意地を張りあいながら、お互いの身を案じつつ今生の別れを告げざるを得ない場面は涙を誘う。
母親のお光を含め人物像が鮮やかで、「雪の子別れ」として出色のでき。

全体を通して、雲助一門の芸の水準を示す好企画といえる。
二階席に空席が見られたのが残念と思われるほど、充実の会だった。

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コメント

おやまあ、いらしてたんですね。
4人の個性が活きた、配役がよかったですね。

「こいつぁ春から縁起がいいうぇ」と言いたくなるような好企画でした。
私は二階席だったので花道が見えにくかったのが残念ですが。

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