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2012/03/26

「一之輔真打昇進披露興行」鈴本・中日(2012/3/25)

3月21日より鈴本演芸場下席をかわきりに「春風亭一之輔真打昇進披露興行」が始まったが、その25日に出向く。土日は前売り完売とのことで満員の盛況。
一之輔の真打昇進については2年前頃より落語ファンの中から熱望する声が上がっていたが、落語協会は1年の空白をおいて、いきなり一人昇進させた。実にニクイ演出だ。
今回の抜擢人事については賛否もあるようだが、一之輔にその実力が備わっていることは大方が認めるところだろう。
芸人は芸が優れていることは勿論だが、人気稼業である以上やはりスター性が求められる。過去に抜擢され評判となった志ん朝、小朝はいずれもスター性も備わっていたし、一之輔についてもそうした面が評価されたことは想像に難くない。

<  番組  >
三遊亭金兵衛「牛ほめ」
春風亭勢朝「落語家親子の物語」
林家正楽「紙切り」
春風亭正朝「浮世床(本)」
鈴々舎馬風「漫談」
ロケット団「漫才」
柳亭市馬「蝦蟇の油」
三遊亭圓歌「漫談」
春風亭一朝「岸柳島」
~仲入り~
「真打昇進披露口上」(下手から)たい平・市馬・一之輔・一朝・馬風・圓歌
鏡味仙三郎社中「太神楽」
林家たい平「粗忽の釘」
柳家小菊「粋曲」
春風亭一之輔「明烏」

高座はいつもと違って華やかで、背景にはお祝いの後ろ幕が下がり、上手には贈答の菰樽が積まれる。
お祝いムード一杯の高座は正月興行に似て、各出演者らは短い時間で軽く演じて下りてゆく。
それでも正朝「浮世床」、たい平「粗忽の釘」は短縮版ながら楽しませてくれ、師匠の一朝が「岸柳島」で前半を締めていた。
「真打昇進披露口上」はたい平が司会したのだが、いきなり「襲名披露興行」と切り出し訂正する一幕も。
お祝いの口上になると馬風が存在感を示す。声がよく通るというのがいい、人間何か取り柄があるものだ。
珍しく口上の舞台で、たい平が打ち上げ花火を口まねで、市馬が相撲甚句をそれぞれ披露した。
一朝が入門当時の一之輔が無口で大人しかったと思い出を語っていた。しかし寄席への情熱は私以上だったと言っていたが、あながちお世辞だけではないんだろう。

いよいよ大歓声の中で一之輔が登場、演目は「明烏」。
見た目は全く平常、この人の神経の太さには感心させられる。またそうでなけりゃ、連続50日間の披露興行がもたないだろうけど。
一之輔の「明烏」は初めてだったが、全体としては意外にオーソドックス。
独自の演出としては、主役の源兵衛と太助について、特に太助のワルぶりを際立たせていた。時次郎は父親からいわれるままに「あなた方は町内の札付きで、悪の根源」と喋ってしまうが、後から太助に「俺は傷ついたんだぞ」言わせていた。
太助は「吉原の法」を説く時には凄みを利かせ、翌日時次郎が浦里と懇ろになったと知って怒り、持っていた甘納豆を投げつけ階段を駆け下りて行ってしまう。
源兵衛と太助の役割分担をクッキリとさせる演出法だった。
宴席で泣いている時次郎をオバサンが強引に連れだす場面では、志ん朝以来、時次郎が「二宮金次郎という人は・・・」と説教する演出がとられているが、一之輔はここを「ナイチンゲールという人は・・・」で演っていた。確かに相手は女だから、金次郎よりナイチンゲールの方が相応しいかも知れない。
ひとつだけ苦言を呈したいのが、マクラで”売春禁止法で女性代議士が「あんなもの要りません」と言ったけど、本人はババアだから要らないだろうが男は要る”と語った箇所。
こういうのは年配の噺家が言う分には構わないが、若手が言うのには抵抗がある。
一之輔のファンには年配のご婦人も多く、ババア呼ばわりは不快な思いをさせないとも限らない。
市馬が諭していたように、女性には注意が必要だ。

一之輔の「明烏」、まだまだ発展途上とみた。
これからまた何度も聴く機会があるだろうが、どう変えていくのか楽しみではある。

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コメント

一之輔のブログを見ると、初日から「粗忽の釘」「百川」(円太郎に習ったようです)、「茶の湯」「藪入り」と続いて「明烏」だったようですね。
ブログを読んでも(文章は少ないですが)、結構楽しんでますよ、この男は.

私の予想では、この後に「鈴ケ森」「初天神」「代脈」「不動坊」「五人廻し」あたりが続くのではないかと思っています。
たぶん、はずれるでしょうけど^^

投稿: 小言幸兵衛 | 2012/03/26 22:31

小言幸兵衛様
先日の昇進披露記者会見で小三冶が推薦理由の一つとして挙げたのが、一之輔が「客を呑んでかかっている」です。勿論いい意味で。相当な度胸の持ち主であるのは確かです。
50日間でいくつのネタを出すのかも興味が持たれますね。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/03/27 09:30

ババア発言、たしかに違和感があります。
マクラなどのギャグは現代感覚でもいいのだと思いますね。

投稿: 佐平次 | 2012/03/27 11:35

佐平次様
昔の吉原を知っている人間なら許せるかも知れませんが、若い人が言うこっちゃないと思います。
それに売春防止法はババアだけで決めたわけじゃないですし。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/03/27 11:57

ほめ・く様
いつも楽しみに読ませて貰ってます。
ババア発言なんてあったのですか。客に気を使って欲しいと言うお気持ちはわかりますが、一之輔さんは稀に見る器を持った男。小さくまとまってほしくありません。思い付いたことを確信犯的にぶちかましながら突き進んで貰いたいと思っています。
突然訪ねてきてすみませんでした。

投稿: 与太郎 | 2012/03/27 17:03

与太郎様
このマクラは一之輔のオリジナルではなく、昔から、特に昭和33年の赤線廃止後に、吉原のネタを演る時に噺家がしばしばマクラに使っていたものです。ただ記憶としては一流の落語家は言ってなかったと思います。
今では赤線を経験した人も減ってきて、このマクラも最近はあまり聴かれなくなりました。寄席に女性客が増えたという事情もあるんでしょう。
若い一之輔がこんなマクラを振ったのは意外に感じましたし、私としては感心出来なかったというわけです。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/03/28 08:47

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