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2012/03/19

鈴本演芸場3月中席・昼(2012/3/18)

柳家権太楼が芸術選奨文部科学大臣賞受賞を受賞した。目出度いことえはあるが、
その贈賞理由の中に「多くの演者が挑み続ける「芝浜」では、“権太楼の芝浜”とまで言われる境地を切り開いた。」とあるのが気に入らない。
「権太楼の芝浜」って、初めてきいた。そりゃ暮になれば毎年のように権太楼も「芝浜」をかけるが、そういう評価が定着しているとは寡聞にして耳にしたことがない。
権太楼の最大の功績はそうした特定の演目ではなく、とりわけ今回の落語ブームが始まる以前の時期に寄席を支えてきたことだと思う。
つい数年前まで、定席に権太楼の名前が無い日はなかったと思えるほどの活躍だった。口演は年間で600席を超えていたと本人が語っていたが、驚異的な数だ。しかも手抜きをしない。常に全力投球だ。
その努力とサービス精神こそが、権太楼の授賞理由ではなかろうか。

3月18日、鈴本演芸場中席昼の部へ。顔づけが良いのと日曜日とあってか一杯の入り。

前座・春風亭朝呂久「やかん」
<  番組  >
柳家さん弥「熊の皮」
ダーク広和「奇術」
柳家さん喬「そば清」
五明樓玉の輔「?」
ホームラン「漫才」
鈴々舎馬風「漫談」
柳家喜多八「いかけ屋」
ストレート松浦「ジャグリング」
五街道雲助「粗忽の釘」
-仲入り-
ぺぺ桜井「ギター漫談」
桃月庵白酒「替り目」
宝井琴調「寛永三馬術より愛宕の誉れ」
林家正楽「紙切り」
橘家圓太郎「火焔太鼓」

落語の師弟というのは他の古典芸能と異なり、芸の継承を伴わない。中には弟子に稽古をつけないことで定評があるような師匠もいるわけで、こうなると単なる形式上の師弟関係ということになる。
この日のトリ圓太郎と玉の輔は共に春風亭小朝の弟子だが、この二人が兄弟弟子だというのは想像もつかないだろう。
圓太郎の方は体育会系アウトドア派で、芸風も筋肉系だ。「火焔太鼓」の道具屋の女房はまるで女子レスラーみたいで、何かといえば亭主を脅す。まあ木下博勝医師とジャガー横田夫妻みたいな感じかな。
処が太鼓が300両で売れた途端に、亭主と女房の力関係が逆転する。今まで散々コケにしてきたのに、「ホントにお前さんは商売が上手だよ」と相成る。
小僧が太鼓を叩くときに分かったのだが、あの太鼓は11歳の少年の背丈位ある大きな太鼓だったんだ。そうすると風呂敷に包んで背負うのは無理があるかも知れない。
熱演で面白かったが、あまりに筋肉系で志ん生以来の軽妙洒脱さに欠けるような気がした。

弟弟子の玉の輔、いつ聴いても同じマクラ。もう理事になっているんだから、いい加減「我々若手が・・・」は止めたらどうか。嫌味に聞こえる。
タイトルが分からない新作を掛けていたが、印象が薄い。
二つ目当時は将来が期待されたが、どうも真打になった辺りからパッとしなくなったように思う。芸に甘えがあるのだろうか。

朝呂久「やかん」、さん弥「熊の皮」共に良い出来だった。

さん喬「そば清」は持ち時間をオーバーしたのでは。こういう浅い時に上がって、こういうネタを掛ける、さすがはさん喬だ。
前に聞いたことがあるが、寄席の持ち時間というのは12分とか15分とかだいたい決まっているものだが、人によって長短があるらしい。
短い方は先代の小せんが代表的で7分、長い方はさん喬で20分、立前座はこうした個性を計りながら進行を考えていくのだそうだ。

喜多八「いかけ屋」が聴けたのは嬉しい。二代目桂小南が得意としていたが、あまり演る人がいなかったように思う。こうした珍しいネタを演じてくれるのがいかにも喜多八らしい。

雲助「粗忽の釘」、粗忽な亭主が隣の家に上がり込み、女房との馴れ初めを語るところが聴かせどこ。雲助のは女が台所で茶碗を洗っていると、男が背後から八ツ口に手を入れてコチョコチョっとくすぐる、「腋の下はやめて、くすぐったいから。そこは腋の下じゃない!」とは実に色っぽい。
そうか、着物の八ツ口っていうのは、そういう為にあったのか。新発見。

代演で白酒が出てきて、近くの若い客が大喜びしていた。
鈴本は上手から高座に上がってくるので、席は空いている限り下手の端と決めている。出番を控えた芸人の姿が見えるからだ。
この日の白酒をみていたら、掌に人という字を書いて飲む格好を三度繰り返していた。普段の高座姿からすれば意外な感じがした。
こういうのも寄席の楽しみのひとつ。

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コメント

権太楼の贈賞理由の「芝浜」への疑問、まったく同感です。
その芸はもちろんですが、寄席へのこだわり、手抜きなし、サービス精神、そういった点こそ評価されるべきです。
あくまで落語ネタのOne of Themである「芝浜」を、特別なネタとして祭り上げるような贈賞理由の“蛇足”には、「本当に権太楼を知っている人が書いたのかなぁ?」と思っていました。

小言幸兵衛様
TVで受賞のニュースを聴いた妻から「権太楼の芝浜って言われているだって?」と言われ返事に困りました。どうしてもあの部分が一人歩きしてしまうんです。
水を差す気持ちは毛頭ありませんが、そこは違うと一言、というわけです。

本人は「代書屋で」と言い「そりゃないよね、代書屋はもらう方でなく書く方だから」と言ってましたが。
去年聴いた芝浜の出来があまりよくなかった(私には)だけにちょっと面白くないですね。

佐平次様
権太楼の本領はやはり滑稽噺でしょう。それも柳のお家芸というよりは、上方から持ってきた「代書屋」「幽霊の辻」「不動坊」などの演目が優れているように思います。
少なくとも「芝浜」じゃないですね。

白酒のげんかつぎは、普段の大胆な高座からするとたしかに意外です。ミスター長嶋が実は細心の人物だというようなものでしょうか?

福様
ご本人はけっこう神経質な性格だと思いますよ。高座でも時に繊細な面を覗かせていますし。

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