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2012/03/29

売春防止法と落語

先日、一之輔の「明烏」でのマクラに苦言を呈したところ、いくつかコメントが寄せられました。レスで書き足りならなかった点を補足します。
落語には廓噺というジャンルがあり沢山の作品が残されています。また三代目三遊亭金馬の著書をみると、かつての落語家の世界ではいわゆる「飲む・打つ・買う」は必修科目だったようで、これが出来ないと仲間外れにされたとあります。
だから売春防止法が出来た時は衝撃的だったんでしょう。
その後、噺家が廓や吉原を題材にしてネタを演るさいに、「いいとこでしたよ、あそこは。それが昭和33年3月31日で無くなっちゃいましてね。親の命日は忘れても、こっちは忘れねぇ。」なんてやってました。

この法律の制定には婦人議員が熱心だったところから「なんとかいう女の代議士が『あんなものは要りません』って言って、それで無くなっちゃた。そりゃ要らないだろう、てめえはババアだから。だけどこっちは要るんだよ。」というのもありました。ただ文楽や志ん生といった一流どこは、こういうマクラを振らなかったと思います。
今ではかつての吉原を経験した噺家が少なくなり、上記のようなマクラを振る人もあまりいなくなった。
そこに若手の一之輔がこのマクラを使ったので、私としては違和感があったという次第。

もちろん事実は、女性議員が言っただけで法律が出来たというような簡単なことではありません。
戦後、GHQの指令により1947年(昭和22年)に公娼制度の廃止の勅令が出されますが、いわゆる赤線地帯(別名を特殊飲食店街といい、吉原、新宿2丁目、玉の井などがあった)は取締まりから除外されていました。
しかし女性たちが道路で客引きをして風紀が乱れるということや、人身売買などの問題がクローズアップされ、最終的には「売春防止法」として、
1956年(昭和31年)5月成立
1957年(昭和32年)4月1日から施行
1年間の猶予期間の後、1958年(昭和33年)4月1日から刑事処分を適用
となったのです。
地方議会から実施の延期を求める決議だとか、赤線業者による自民党へのロビー活動だとか巻き返しの動きもあったのですが、業者と議員との贈収賄事件に発展し、尻つぼみに終わったようです。

ただ「売春防止法」という法律は売春それ自体への罰則は無く、処罰の対象は勧誘、斡旋、利益供与、場所の提供、管理売春、資金提供などに限定されています。
売春を完全に禁止するとなると、色々弊害が大きいのでしょう。
それと客側の買春は処罰の対象にはなりません。やはり男には有利になっているんです。
こうした抜け道があるので、現在も形を変えて売春は行われています。決して「無くなった」わけではない。

落語に出てくる吉原の風情ですが、恐らくは江戸時代から明治頃までではないでしょうか。
関東大震災で一度焼失してしまい、象徴である大門(おおもん)も廃止されています。そして東京大空襲でもう一度焼失してしまいました。
戦後の営業形態は、1階は飲食店やダンスホールにして、2階を本業の場所(貸座敷)としていたようです。
映画や小説での知識しかありませんが、少なくとも落語の世界で描かれているような様子とは全く違います。
仮に「売防法」がなくても、昔の吉原の風情が残されたとは思えません。花柳界ですら衰退しつつあるのですから。
「吉原は遠くなりにけり」です。

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コメント

せめて落語の世界だけでも吉原は残して欲しいと思います。
一之輔や菊六などが、無理のないかたちで廓ばなしを語るにはどうしても年数が必要ですが、今のうちに仕込めるだけ師匠や先輩から吸収して日々磨いていって欲しいものです。

投稿: 小言幸兵衛 | 2012/03/31 10:23

小言幸兵衛様
もう「吉原は無くなっちゃいまして」なんていう枕は不要でしょう、誰もが知っていることですから。
そうかといって、以前に白酒が吉原のソープに行ったエピソードを語っていましたが、あれもどうかと思いました。
要は根多の出来ですね。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/03/31 11:07

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